兵庫の食材はなぜおいしい?
世界に誇る名食材の宝庫、兵庫県。 兵庫テロワール旅を楽しむ上で知っておくべきテーマ、「ひょうごの“食”がなぜ豊かに成長したのか」 神戸新聞で長く取材したきた辻本さんに教えていただきました!
多彩な風土を生かし
生産者と消費者で磨き上げてきた
兵庫県は、瀬戸内海と日本海に面し、雪と雨をもたらす中国山地、淡路島など多彩な風土に恵まれています。兵庫県には世界的に見ても高いレベルの食材、食文化がたくさんある。それは、多彩な風土を生かす生産者と、古くからつながりのある京阪神の消費者とで磨き、育まれてきたものなんです。
形質を変えずに守られてきた
兵庫県を代表する食材とは
たとえば、兵庫県で生まれた酒米の王者、「山田錦」。戦前からの品種ですが、今も全国の多くの有名な蔵が使っています。なぜかというと、群を抜いてお酒が造りやすい。特に精米がしやすく、発酵を進めやすいんです。お米としては病気に弱い、背丈が高くて作りにくい、と言われながらも酒蔵が期待する形質を県の研究者が守り、農家が求められる米を生産し続けてきた。受け継いできた形質を守るという点では、神戸ビーフの素牛である但馬牛と似ていて……。
鎌倉時代の書物にも登場する但馬牛は、今も優れた特徴が受け継がれています。小柄なので体格を大きくすべきとの声もありますが、ずっと形質も血統も守ってきた。それと世界での圧倒的なブランド力には、明治時代以降に神戸港に訪れた世界の船乗りたちの口コミから生まれた神戸ビーフの伝説が源にあるのも知ってほしいことです。
地域で大切に種を採り続けてきた在来種も兵庫県にはいろいろあります。その中でも丹波篠山特産の丹波黒はまさに黒豆の頂点。すごいのは、数十年もかけて人の手によって大きい粒だけを選んできた結果としての品質だということ。”丹波篠山産”であることを加工品や黒豆を使ったメニューにまで銘打つような消費者に向けた努力があって、今日のブランドが築かれました。
技術力が磨かれて品質は向上、
成長し続けた
海産物に関しても、兵庫県は特別。特に淡路と明石は魚介の扱い方が日本一だと思います。明石港には大きな生簀があって、生きたまま競りにかけている。これは全国的にも稀少です。魚にストレスを掛けず、できるだけ最高の状態で味わってもらうことが徹底されている。京都、大阪、神戸の大消費地とのつながりのなかで、技術力が磨かれ食文化が形成されたことも重要です。
当たり前にあったわけではなく、
だれかが始め、育まれ、続いてきた
兵庫五国の食材には、風土の個性だけでなく、人の思いが“質”に反映されてきたことが分かります。昔から当たり前にあったわけではなく、だれかが始め、受け継がれてきた。そんな食というものの神髄が詰まったストーリーを、兵庫県の豊かな“食”や“ルーツ”を知る旅=ひょうごテロワール旅を通してたくさん感じてもらいたいと思っています。