兵庫の食材はなぜおいしい?
世界に誇る名食材の宝庫、兵庫県。 兵庫テロワール旅を楽しむ上で知っておくべきテーマ、「ひょうごの“食”がなぜ豊かに成長したのか」 神戸新聞で長く取材したきた辻本さんに教えていただきました!
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多彩な風土を生かし
生産者と消費者で磨き上げてきた
兵庫県は、瀬戸内海と日本海に面し、雪と雨をもたらす中国山地、淡路島など多彩な風土に恵まれています。兵庫県には世界的に見ても高いレベルの食材、食文化がたくさんある。それは、多彩な風土を生かす生産者と、古くからつながりのある京阪神の消費者とで磨き、育まれてきたものなんです。
形質を変えずに守られてきた
兵庫県を代表する食材とは
- 日本酒界に革命を起こした山田錦
- 戦前に兵庫県で開発された酒米、山田錦。全国で約1,200ある蔵元の中で約550が兵庫の山田錦を使用するなど、生まれてから80年経った今でも、酒米の王者として君臨し続けています。 中でも北播磨地域で栽培される山田錦が最高峰とされており、全国新酒鑑評会では上位を占め、田植え時期には「白鹿」「八海山」「勝山」など銘酒の幟旗が立つ田園風景が広がります。
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- 播磨
たとえば、兵庫県で生まれた酒米の王者、「山田錦」。戦前からの品種ですが、今も全国の多くの有名な蔵が使っています。なぜかというと、群を抜いてお酒が造りやすい。特に精米がしやすく、発酵を進めやすいんです。お米としては病気に弱い、背丈が高くて作りにくい、と言われながらも酒蔵が期待する形質を県の研究者が守り、農家が求められる米を生産し続けてきた。受け継いできた形質を守るという点では、神戸ビーフの素牛である但馬牛と似ていて……。
- 黒毛和牛は但馬牛からはじまった
- 神戸ビーフ、松阪牛、近江牛など日本が世界に誇る黒毛和牛。実はその99.9%が1939年に香美町小代地区で生まれた一頭の但馬牛「田尻号」の子孫といいます。山と谷に囲まれた小代では1200年前から純血の但馬牛を育む「閉鎖育種」で優れた血統をつくり上げてきました。霜降りが細やかで、甘くてやわらかな肉質は有名ブランドの素牛にふさわしい品格です。
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- 但馬
鎌倉時代の書物にも登場する但馬牛は、今も優れた特徴が受け継がれています。小柄なので体格を大きくすべきとの声もありますが、ずっと形質も血統も守ってきた。それと世界での圧倒的なブランド力には、明治時代以降に神戸港に訪れた世界の船乗りたちの口コミから生まれた神戸ビーフの伝説が源にあるのも知ってほしいことです。
- 手撰びで良品を選別、丹波黒大豆
- もちもちとした食感、極上の甘みと旨みで黒豆の最高品種と名高い「丹波黒」。名産地である丹波篠山は昼夜の寒暖差が大きく、早朝に特有の「丹波霧」が立ち込めることで畑が潤い、上質の黒豆が育つといいます。自然と人の手で育まれてきた「黒豆の頂点」は大粒の宝石のような輝きを放っています。
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- 丹波
地域で大切に種を採り続けてきた在来種も兵庫県にはいろいろあります。その中でも丹波篠山特産の丹波黒はまさに黒豆の頂点。すごいのは、数十年もかけて人の手によって大きい粒だけを選んできた結果としての品質だということ。”丹波篠山産”であることを加工品や黒豆を使ったメニューにまで銘打つような消費者に向けた努力があって、今日のブランドが築かれました。
技術力が磨かれて品質は向上、
成長し続けた
- 激しい潮流で鍛えたボディの明石鯛
- 栄養豊富な明石海峡で激しい潮流にもまれて身が引き締まり、脂ののりも抜群な明石鯛。例えるなら「美食家のスポーツマン」。明石港に水揚げされた鯛は、巨大な生簀で半日泳がせることでストレスフリーに。「明石浦〆」と呼ばれる独自の神経締めを施して、市場や料理店へ運ばれるので新鮮そのもの。恵まれた好漁場と職人技が「日本一」のおいしさの秘密です。
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- 播磨
海産物に関しても、兵庫県は特別。特に淡路と明石は魚介の扱い方が日本一だと思います。明石港には大きな生簀があって、生きたまま競りにかけている。これは全国的にも稀少です。魚にストレスを掛けず、できるだけ最高の状態で味わってもらうことが徹底されている。京都、大阪、神戸の大消費地とのつながりのなかで、技術力が磨かれ食文化が形成されたことも重要です。
- 延縄漁の極上べっぴんハモ
- 淡路島のハモは小顔に見えるほど身がふっくらとした「べっぴんハモ」。沼島(ぬしま)沖のやわらかな海底で育ち、それを伝統の延縄漁で丁寧に一匹ずつ釣り上げるため姿の良さで知られます。ハモは「梅雨の水を飲んで旨くなる」という夏の風物詩。同じ時期に収穫期を迎える特産物の玉ネギと合わせるハモすきが定番料理。さらに脂がのってくる秋の「落ち鱧」も絶品です。
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- 淡路
- 日本海で最速解禁、香住ガニ
- 日本海の幸といえば、11月~3月の松葉がに。それよりもひと足はやく解禁され、9月~5月の長い漁期で楽しめるのが、関西では香住漁港だけで水揚げされる紅ズワイガニ(香住ガニ)。松葉がにより1,000mも深い海底の栄養豊かな海洋深層水で育ち、締まった身とみずみずしい甘味が自慢。ゆでガニやカニ刺し、丸ごとのっけたカニ丼などで楽しめます。
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- 但馬
当たり前にあったわけではなく、
だれかが始め、育まれ、続いてきた
- コウノトリ育む米 コウノトリを支えるために生まれた米
- 特別天然記念物コウノトリ最後の生息地である豊岡市は、冬も田に水を張り、エサとなる生き物を育む農業を促しています。プロジェクトで生まれた「コウノトリ育む米」はみずみずしい甘みと粘りの良さが好評です。
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- 但馬
兵庫五国の食材には、風土の個性だけでなく、人の思いが“質”に反映されてきたことが分かります。昔から当たり前にあったわけではなく、だれかが始め、受け継がれてきた。そんな食というものの神髄が詰まったストーリーを、兵庫県の豊かな“食”や“ルーツ”を知る旅=ひょうごテロワール旅を通してたくさん感じてもらいたいと思っています。
- 丹波大納言小豆 「煮ても割れない」丹波が誇る高級品
- 丹波で栽培される小豆は、古来より味の良さで知られ、幕府にも献上されていた高級品種。大粒で甘く豊かな風味を持ち、鮮やかな濃赤色の俵型が特徴。さらに「煮ても割れない」のが大きな魅力。そのおいしさから高級和菓子の原材料にと老舗がこぞって取り入れています。
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- 丹波
- 清酒 伊丹で生まれ灘五郷で発展した清酒
- 清酒の手法は、濁り酒が主流だった時代に初めて伊丹で発見されたと言われています。その後、西郷・御影郷・魚崎郷・西宮郷・今津郷の5つの地域からなる日本を代表する酒どころ“灘五郷”にて発展し、清酒は全国で人気を博しました。宮水と呼ばれる中硬水を活かして造られた灘五郷の日本酒は、力強い味わいと香りが特徴。色々な銘柄をぜひ飲み比べてみてください。
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- 摂津
- 神戸洋菓子 新旧集う神戸ブランド
- 開港から西洋の食文化を柔軟に受け入れてきた神戸。現在も有名な洋菓子店や、「神戸風月堂」[ユーハイム」など人気ブランドの本店が神戸・阪神間に集結するとともに、洋菓子に合うコーヒーや紅茶の店も充実しています。
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- 摂津
- 丹波栗 濃厚な風味で贈答用でも人気
- 丹波地方で栽培される和栗は、粒が大きくまろやかで濃厚な甘みを持っています。その歴史は古く、「古事記」や「万葉集」にも記されていたといい、朝廷や幕府にも献上されていたことから、今も贈答用として高い人気を誇ります。各店舗が栗を使って工夫を凝らした和菓子や洋菓子を、毎年大勢の方が求めに訪れます。
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- 丹波