◇「兵庫テロワールlab.」テロワール研究員レポート
食や文化を味わい楽しみ、それらが生まれたルーツや背景を探り、受け継いできた人の想いや技術に触れる。大地の恵みを堪能する“兵庫テロワール旅”の情報を、現地で体感した「テロワール研究員」の視点でお届けします。
漁師から料理人まで町をあげて鮮度にこだわり抜いたシロイカの姿造り「活イカ」
イカの刺身とは全く違うコリッコリ食感と甘みで、塩やスダチでイカが?
香住ガニや松葉ガニなどカニの町として有名な香美町。
漁師町ならではのとびっきり美味しいものが、実は夏にもあるんです。
それが、「活(かつ)イカ」!
獲れたての“活け”のシロイカなので、産地でしか味わえないとっておきです。
新鮮さ極まるピチピチの美味しさをご紹介します。
兵庫県北部、日本海に面する香美町は、香住漁港や柴山漁港があり、上質な松葉ガニが獲れることで知られています。
そんな漁師町で、夏の名物として人気急上昇中なのが、シロイカ(ケンサキイカ)の活け造り「活(かつ)イカ」。
イカ漁が行われる6月~8月にだけ味わえる香美町の新定番グルメです。活イカ料理が人気の『潮風香る民宿 せきのや』代表・関崇志さんにお話を伺いました。
《関さん談》『香美町では以前から夏のイカ漁が盛んでしたが、「活イカ」の提供をはじめたのは2002年。
イカは非常にデリケートな生き物で、網の中で他の魚に触れたり、水槽の壁に当たったりするだけで弱って死んでしまうので、生きたまま水揚げするのはすごく難しいんです。でも町おこしの目玉になるのではないかと、町ぐるみで試行錯誤しました』。
そのため、生きたまま提供するには、漁師から仲買人、配達人や料理人まで町全体での努力が必要だったそう。
《関さん談》『まず、香美町の活イカ漁は、網漁ではなく一匹ずつ釣り上げる一本釣り。さらに漁船の水槽は、生息環境に近くなるように海水が循環されています。イカにストレスを与えないように、漁師さんの操船技術も重要になります』。
▲ 温度管理された水槽
生息環境が変わるとどんどん弱ってしまうため、活イカ漁の漁師さんは仲買人との取引ギリギリまで漁場に留まり、鮮度保持に努めるのだとか。さらに港に着いてからも、細心の注意が払われます。
《関さん談》『シロイカは水温15℃前後のところに生息しているので、人間が素手で触ってしまうと体温で火傷して死んでしまうので、カゴなどを使ってそっと水槽に移されます。
仲買人から宿や店へも、同じように刺激を与えないよう慎重に丁寧に運ばれます。
それだけ大切に扱っても、水揚げから長くて3日間しか生きられないので、町ぐるみの連携でやっと、シロイカの活け造りが実現したんです』。
それでも、時化や不漁などで手に入らない日もあるため、地元でも活イカは希少です。
新鮮な活イカを町ぐるみでPRするため、香美町には「活イカくん」というゆるキャラもいます(笑)
イカの刺身とは全く違う、コリッコリの食感
塩で食べるのが旨い!
関さんの営む『潮風香る民宿 せきのや』では、お客さんが席について食べるタイミングを見計らい、内臓を傷つけないように素早く調理。まだイカが動いている状態でテーブルに届けられます。
《関さん談》『姿造りはまだ足が動いているので皆さんびっくりされます。ほとんどのお客さんが撮影に夢中になられますが、早めに食べて頂きたいです(笑)』。
肝心の味ですが、お刺身のイカとは全く違うんです。
食感がコリッコリなんです!
お刺身のイカとは違って色も透明です。
《関さん談》『そうですね、活イカはねっとり感がないので、普段食べているお刺身のイカとは全く違う食感と味わいだと思います。噛みしめていくと、鮮度の良いイカならではの甘みが出てくる感じ。
ウチでは、塩で食べてもらうのが定番で、甘みがグッと引き立つんです。スダチなどを搾って食べるのも美味しいです。
うちの宿では、残った身やゲソは、天ぷらやガーリックソテーをしてお出しして、活イカを丸ごと堪能して頂いています』。
漁火を眺めながら夜の浜辺を散歩
香美町に泊まるなら、活イカの食事を楽しんだ後は、海岸線からイカ釣り船の「漁火」を眺めるのがおすすめ。
魚をおびき寄せるための「漁火」が、夜の海を照らす光景はとても幻想的です。素敵な旅の思い出になると思いますよ。
日帰り旅でもOK
ランチで味わえるお店も!
香美町では現在、24軒の宿と、3軒の食事処で活イカが提供されています。
活イカ料理はすべて事前予約制ですが、ランチでも味わるお店があるので、日帰り旅でも活イカが楽しめます。
例えば、JR山陰本線・香住駅から徒歩8分の場所に、水産会社が営む海産物の直売所『にしともかに市場』があります。こちらの中にある、新鮮な海の幸が自慢のお食事処『かに八代 れんが亭』では、手軽に活イカが味わえます。
丸ごと一匹使った「活イカ御膳」5280円(税込)は、胴はお造りに、下足と耳は陶板焼きに。イカの天ぷらも並び、まさにイカづくし!
直売所「にしともかに市場」では新鮮な海の幸のほか、お土産にぴったりな加工品も豊富に揃っています。
旬の魚介がたっぷり堪能できる「海鮮丼ランチフェア」も開催中
香美町では6月15日~8月末まで「香住漁師の海鮮丼ランチフェア」も開催されています。
シロイカをはじめ、アゴ(トビウオ)やアジ、スズキといった魚、サザエなどの貝類と、夏が旬の魚介をたっぷり使った海鮮丼が登場。
漁師町ならではの新鮮な魚介ががっつり味わえる香美町へ、夏旅はいかがでしょうか。
※活イカは、漁や仕入れにより内容が変わったり、提供できない場合があります。
DATA:
◇ 潮風香る民宿 せきのや
兵庫県美方郡香美町香住区矢田59-2
TEL:0796-36-3782
https://www.sekinoya.com/
◇ かに八代 れんが亭
兵庫県美方郡香美町香住区香住1452
営業時間:11:00~14:00
不定休
tel:0796-36-1341
https://nfoods.co.jp/rengatei/
※記事中の価格はすべて税込みです。
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掲載日:令和5年6月30日 体験 グルメ