◇「兵庫テロワールlab.」テロワール研究員レポート
食や文化を味わい楽しみ、それらが生まれたルーツや背景を探り、受け継いできた人の想いや技術に触れる。大地の恵みを堪能する“兵庫テロワール旅”の情報を、現地で体感した「テロワール研究員」の視点でお届けします。
神戸ビーフや松阪牛など有名ブランド黒毛和牛の99%が「但馬牛(うし)」にルーツを持つ。「但馬牛(うし)」は和牛界の元祖です!
神戸ビーフや松阪牛といった世界の食通を唸らせるブランド和牛の始まりはほとんどが、実は「但馬牛(うし)」だということをご存知でしょうか?
日本を代表する但馬地域の特産品、「但馬牛(ぎゅう)」。
その長い歴史と美味しさの秘密をレポートします。
「但馬」というのは「但馬国」という旧国名の一つで、豊岡市、香美町、新温泉町、養父市、朝来市を合わせた兵庫の北部を指しています。兵庫県の面積の約4分の1を占め、実は東京都の面積に匹敵するほどの広大な地域なんです。
そして、険しい山々に囲まれた自然豊かな「但馬」で、古くからその血統を守りながら大切に育てられてきたのが「但馬牛(うし)」です。
ちなみに、飼育中は「たじまうし」、お肉になると「たじまぎゅう」と呼びます。
一定のランク以上の「但馬牛」が、「神戸ビーフ」になる
但馬は広いので、但馬牛(うし)の畜産農家をはじめ、但馬牛(ぎゅう)の精肉店やレストランがたくさんあります。
今回は、香美町村岡にある畜産農家「美方ファーム」の牧場長・今後敏成さんに「但馬牛」について教えて頂きました。
「混同されがちですが、「神戸ビーフ」も、「但馬牛(ぎゅう)」です。但馬牛が霜降りの状態などでランク付けされ、一定のランク以上の但馬牛が、神戸ビーフと名乗ることができます。
ただ、神戸ビーフの基準を満たすものすべてが神戸ビーフになるわけではなく、当社が生産する約95%は神戸ビーフの基準を満たしていますが、但馬牛として販売しています。但馬牛の認知度を上げることが目標なんです」。
ランクの高い但馬牛がすべて神戸ビーフになるわけではなく、但馬牛はランクの幅が広く、但馬牛(ぎゅう)の中に神戸ビーフが含まれるということ。
「和牛にとって遺伝子は肉質や肉量を決めるのに重要な要素なんです。そして但馬牛(うし)の遺伝子は非常に優秀なんです。
特選松阪牛などの最高クラスのものは大抵、但馬で買い付けた子牛を各地で育てたものなので、元々は但馬牛(うし)。さらに宮崎牛や佐賀牛なども昔、但馬牛の種付けをするなどして品種改良をしたものなので、但馬牛の遺伝子が入っています。
実は、日本の黒毛和種の99.99%が、但馬牛の遺伝子が入っているんですよ」。
私でも知っている有名な和牛ブランドが全部、「但馬牛」のおかげで出来上がったものだと聞いてびっくり!
但馬牛って、和牛界の元祖なんですね。
但馬牛は、但馬牛同士でしか交配しない純血種
「日本各地から買い求められて、但馬牛は色んな名前のブランド肉になっています。
でも、但馬牛(うし)は、兵庫県内で生まれた但馬牛同士でしか絶対に交配しません。純血種です」。
但馬地方の北部、小高い山の上にある美方ファームでは、現在約300頭の但馬牛が飼育されています。
「但馬牛は肉質がとても良いんですが、小型で取れる肉量が少ないんです。例えば、宮崎牛などの一般的な黒毛和種の仕上がり体重が平均800~900kgなのに対し、但馬牛は700kg前後しかありません。繊細な牛ですので、飼育環境や飼料にも細心の注意が必要になります。
つまり、ものすごく手間とコストがかかります」。
「但馬牛(ぎゅう)」はその希少性、丁寧な飼育が必要なことから、価格などではなく味で勝負することになります。
但馬牛は、遺伝的な性質で、筋繊維が非常に細かくて肉の味が非常に良く、しなやかな筋肉が良質な脂肪を留まらせています。このサシが絶妙で、とろけるような味わいが特長。
そして、味を良くするためには、飼育期間を長くする必要があるんです。長く飼うほど、牛肉の口溶けや舌触り、風味などに影響するモノ不飽和脂肪酸などが増加し、味に深みのある肉になるから。
だからさらに、手間とコストが増えます。
でも、「但馬牛」には、それだけの価値があると思っています。まだ食べたことがない人にも、本物の但馬牛を食べてもらえたら、それがわかってもらえると思うんですよね」。
「但馬牛(ぎゅう)」として販売できるのは、神戸肉流通推進協議会の基準をクリアしたものだけ
今後さんは、生まれ育った但馬地方で職探しをする際、働き続けられること、地元の活性化にも役立てる仕事であることが希望だったのだとか。そして、但馬牛に将来性を感じて牧場に就職。
「近年、「但馬牛(ぎゅう)」として販売できるのは、「神戸肉流通推進協議会」が定める厳格な格付けの基準をクリアしたものだけになりました。
業界として、消費者に安心して購入して頂けるシステムも整いつつあります。
今までバラバラだった但馬牛の肉質が斉一化されることになるので、しばらく時間はかかると思いますが、「但馬牛」の美味しさがもっと認知されるようになるはずです。ウチの牧場では、ここで生まれた子牛を、抗生物質は一切使わずに肥育しています。全体の底上げができれば、質への徹底したこだわりがもっと評価されると期待しています」。
種付けから出荷まで自社一貫生産の美方ファームの但馬牛は、香美町村岡の道の駅そばにある「美方ファーム直売店」のほか、朝来市の「道の駅 但馬のまほろば」でも購入できます。
「神戸肉流通推進協議会」のサイト(https://kobe-niku.jp)では、但馬牛(ぎゅう)、神戸ビーフの指定登録店となっている小売店や飲食店を調べることができます。レストランや小売店に掲示されている「個体識別番号」を入力すれば、但馬牛・神戸ビーフに認定されているかどうかも確認できます。
但馬牛に触れて学べる「但馬牧場公園」
但馬牛(うし)のことを知りたい人は、兵庫県立但馬牧場公園内の「但馬牛博物館」を訪ねてみてください。
等身大の但馬牛の模型、歴史などを紹介するパネル展示のほか、但馬牛と一つ屋根の下で暮らした昔の農家もまるごと再現されています。入場無料なので気軽に立ち寄れますよ。
兵庫県立但馬牧場公園は総面積36.2haもあります。リフトに乗って上がれる山頂展望台へと続く草原は、夏は但馬牛の放牧場、冬はスキー場になります。
園内には畜産エリアもあって、「展示牛舎」では、但馬牛を見て、触れることもできますよ。
また、園内にある「レストラン ふるさと」では、手軽な値段で但馬牛料理が頂けます。店内は席数も多くて広々。
食券制のセルフサービスのお店なので、気軽に入れます。
一番人気は写真の「但馬牛の御重」で、サラダとお味噌汁付きで1,720円(税込)。
すき焼き風の甘辛いタレが絡んだお肉は、脂身の甘みがあってとってもやわらかい!自社栽培のお米も美味しい。食べ応えのあるボリューム感です。
自社牧場で一貫生産した但馬牛(ぎゅう)が自慢のレストラン
但馬地方には、但馬牛が食べられるお店がたくさんありますが、今回は但馬牧場公園近くの地元民に人気のお店を紹介します。
「但馬牛レストラン はまだ」です。ステーキと焼肉のお店で、神戸肉流通推進協議会認定店。湯村温泉から車で5分ほどの場所にあるので、温泉旅行の際に立ち寄るのもおススメです。
こちらのお店のお肉は、自社牧場で繁殖・肥育した上質な但馬牛をほどよく熟成させたもの。庶民的な雰囲気ですが、味は本格的です。
但馬牛のステーキは4,000円程度~、焼き肉セットは1人前3,300円~。
地元の人には平日限定のランチメニュー(11:30~14:00)が特に人気で、私も今日は「カルビ定食」1,760円を頂きました。「とろける~」って思わず声を上げてしまう美味しさです。
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但馬地方では、ステーキや焼肉だけでなく、他にも様々な但馬牛料理が楽しめます。
但馬牛グルメめぐりも楽しいと思うので、機会があればまたレポートしたいと思います!
DATA:
◇ 美方但馬牛 直売店
兵庫県美方郡香美町村岡区大糠26-1
TEL:0796-98-1522
営業日:毎週金土日月
営業時間:10:00~17:30
https://www.zentanbus.co.jp/mikata-farm/
◇ 兵庫県立但馬牧場公園(公園管理事務所)
兵庫県美方郡新温泉町丹土1033
Tel:0796-92-2641(公園管理事務所)
https://www.tajimabokujyo.jp/
◇ レストラン ふるさと(但馬牧場公園内)
TEL:0796-92-1005
開園時間:9:00〜17:00
休園日:毎週木曜(祝日の場合は翌金曜)
http://www.bokujyo.com/furusato.html
◇ 但馬牛レストラン はまだ
兵庫県美方郡新温泉町春来1436-3
TEL:0796-92-2233
営業時間:12:00〜15:00、16:30〜21:00(LO.20:30)
定休日:第1・3木曜
https://www.tajimagyuryourihamada.com/
※記事中の価格はすべて税込みです。
【兵庫テロワール旅 関連情報】
兵庫ならではのテロワールを体験できる“おすすめツアー”をご紹介
「風船に乗って飛んでみたい!」という夢が叶う体験。大自然に囲まれ、季節ごとに様々な景色を見せる神鍋高原で、バスケットに揺られて浮かぶ上空30mより鳥と同じ目線で360度の大パノラマを眺められます。気球の立ち上げ準備では、1000℃以上・7mもの火柱を放つ迫力あるバーナーの熱と音を体験いただけます。実際に、見て・触って・中に入って・バスケットに揺られ間近で知る気球の大きさをお楽しみください。
【HYOGO!ナビ WEBサイト 関連ページ】
◇ 但馬エリアのスポット情報はこちら
掲載日:令和4年8月12日
2023年03月18日 12:26 PM
ここは、牛を見れて、神戸ビーフも食べられるとこですか?
2023年03月20日 09:51 AM
モンタージ レイリー様、コメントありがとうございます。
兵庫県立但馬牧場公園では、但馬牛を見て触れることが出来ます。また小動物(ヒツジ、ヤギ、ウサギ)と触れ合うことも出来ます。
食事に関しては、神戸ビーフのルーツである但馬牛を食すことができます。
恐れ入りますが、詳しくは兵庫県立但馬牧場公園のホームページ(https://www.tajimabokujyo.jp/)をご覧ください。
宜しくお願いいたします。