◇「兵庫テロワールlab.」テロワール研究員レポート
食や文化を味わい楽しみ、それらが生まれたルーツや背景を探り、受け継いできた人の想いや技術に触れる。大地の恵みを堪能する“兵庫テロワール旅”の情報を、現地で体感した「テロワール研究員」の視点でお届けします。
全国でも希少な木桶仕込みの天然醸造を貫く「足立醸造」
有機大豆&有機小麦を使った有機醤油は世界がターゲット
今ではとても希少な“木桶”を使った伝統製法で、国産のオーガニック(有機)醤油を造っている蔵元が多可町にあります。
創業から130年超を数える「足立醸造」です。
「足立醸造」がある多可町は、兵庫県のほぼ真ん中に位置し、清流・杉原川が流れ山に囲まれた自然豊かな地域です。
四代目の次女で広報担当の足立公さんに案内して頂いた蔵には、背丈よりはるかに大きい桶が整然と並んでいます。
《足立さん談》『これらの木桶がウチの宝です。古いものは100年以上使い込まれています。木肌に醸造に欠かせない乳酸菌や酵母菌などの微生物が住みついていて、この微生物の力によって、ウチの蔵ならではの風味が生まれるんですよ』。
江戸時代まで、醤油や味噌などの発酵調味料はすべて木桶を用い、自然の力で製造されていました。
しかし、手入れが手間な木桶は次第に金属やプラスチック製タンクに置き換わり、製造期間を短縮するため発酵促進剤や酵素などの添加物が登場し、現在では、木桶を使った天然醸造による醤油生産量は全体の1%以下なのだそうです。
《足立さん談》『ウチは創業以来、春夏秋冬の四季の気候の中で、自然のままに造り上げる天然醸造にこだわっています。そこで欠かせないのが木桶です。杉や竹で造られた木桶は発酵に欠かせない微生物が働きやすい環境で、空気を通し湿度も調節してくれるので、「究極の発酵容器」といわれているんです』。
添加物などを加えず自然の力で造り上げる天然醸造の醤油造り。
仕込みは、大豆を選び、洗うところから始まるそうです。
次は、洗いあげた大豆を蒸し、小麦を焼き、種麹を混ぜ込んで塩水と一緒に桶に入れる「製麹(せいきく)」という工程。足立醸造ではすべてを自社で手掛けています。
できた麹と塩水を木桶に仕込んだものが「もろみ」。もろみにボコボコと泡が立つのが発酵の始まりの合図。そこから数か月間、職人さんたちは一日に何度も桶の中をかき混ぜて酸素を入れ、もろみの状態を見極めながら発酵を促します。
熟成が完了したらもろみを搾り、火入れをして醤油が完成。
自然の力で熟成させるため、発酵が始まってから仕上がりまで約1年半という長い時間がかかるのだそうです。
▲「国産有機醬油」は濃口と淡口の2種類。写真は900ml各1,642円(税込)
製法に加え、足立醸造では原料にもこだわり、現在、仕込むもろみの約8割が国産の有機大豆と有機小麦を使った国産オーガニック醬油だそうです。
《足立さん談》『四代目である父が、有機JAS認証を取得し、2002年にはじめて「国産有機醤油」を発売しました。その時からずっと一番大事にしているのが「農家さんの顔が見える原材料選び」。足立醸造ではオーガニックの大豆や小麦だけでなく原材料のほとんどを契約農家さんから購入しています。おいしいだけでなく安全で安心な商品を作るために、五代目の兄も度々生産地に足を運んでいます』。
有機原材料のみを用い、木桶で仕込んだ足立醸造のオーガニック醤油は海外で反響を呼び、和食ブームを追い風にEU各国やアメリカへの輸出量が年々増加。
2022年には、世界基準の食品安全システム「FSSC22000」を取得した国際水準の「オーガニック醤油醸成蔵」も建造。新しい蔵に導入されたのは、容量6,000Lの吉野杉の木桶20本で、巨大な桶が並ぶ様はまさに壮観です。
足立醸造の国産オーガニック醤油は、「いつもの料理を格上げしてくれる」雰囲気があります。多可町のみなさんは大切な方へのおみやげにするとっておきのお醤油です。ふるさと納税にも出品していて一度試すとやっぱりこの醤油がいいとおっしゃる方が多いとか。私が以前勤めていた職場の方におすすめしたところリピートしてくれています!
敷地内にある直売所では、看板商品の「国産有機醤油」をはじめ、さまざまなサイズの醤油や醤油を使ったオリジナル商品が購入できます。「国産有機醬油」を使ったせんべいや豆乳アイスは観光客に大人気だそう。
足立醸造では味噌づくりもしていて、天然醸造の「国産有機味噌」も購入できます。
直売所で年5回開催される『蔵まつり』と題したマルシェは、町内外から大勢が集まる人気イベント。醤油と味噌が特売価格で購入できて、近郊の人気店のブースも多数登場します。イベント期間中は蔵見学も開催しており、2022年に建てた新蔵の見学もできます。
足立醸造の有機醤油を使った、お酒とも相性抜群の「しょうゆケーキ」
足立醸造から車で5分ほどの場所にある洋菓子店『ナチュール』の「しょうゆケーキ」もおすすめです。
カマンベールチーズを練り込んだパウンドケーキで、足立醸造の醤油のほのかな塩味がアクセントになっています。甘さ控えめでお酒にもよく合いますよ。
オーナーの今中さんは多可町をこよなく愛する方で、他にも多可町産の素材を使った洋菓子をたくさん開発されています。
写真は「しょうゆケーキ」も入った「おすすめギフトセット」2,500円(税込)。
「五つ星ひょうご」認定の多可町産熟成黒ニンニクを使った「ケイクショコラ」と多可町産山田錦の「酒かすケイク」など、多可町産の素材にこだわった10種類の焼き菓子をおみやげにいかがですか。
DATA:
◇ 足立醸造
兵庫県多可郡多可町加美区西脇112
Tel:0795-35-0031
無休 ※年末年始のみ休業
営業時間:9:00~17:30
http://www.adachi-jozo.co.jp/
◇ ナチュール
兵庫県多可郡多可町中区天田195-2
Tel:0795-32-3955
営業時間:10:00~18:00
定休日:月曜・火曜
https://nature2008.net/
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掲載日:令和6年6月14日 グルメ