◇「兵庫テロワールlab.」テロワール研究員レポート
食や文化を味わい楽しみ、それらが生まれたルーツや背景を探り、受け継いできた人の想いや技術に触れる。大地の恵みを堪能する“兵庫テロワール旅”の情報を、現地で体感した「テロワール研究員」の視点でお届けします。
全麺協のそば打ち「段位認定会」会場でもある「永沢寺そば道場」
本格的なそば打ち体験後、打ち立てそばが食べられて、2名で5,000円!
「大みそかに年越しそばを食べる」という人、多いですよね。自分でそばを打つという方もおられるのではないでしょうか。
三田市には、西日本で最も歴史あるそば道場、「永沢寺そば道場」があります。
1989年に誕生し、初めての人向けの体験に加え、本格的な技能習得コースもあるそば打ち道場。全麺協の「段位認定会」会場でもあり、毎年11月には「素人そば打ち名人関西大会」も行われているんです。
一から自分で作業をして、使う道具もプロ仕様。
「永沢寺そば道場」の本気のそば打ち体験をレポートします。
教えて下さるのは、道場長の和田良三さん。
▲ 永沢寺そば道場
道場は、三田市の北、永沢寺という地域にあります。「永澤寺」というお寺の向かいに位置しているのですが、お寺の読み方は「ようたくじ」、地名は「えいたくじ」です。
▲ 永澤寺
標高550m程の山の中にあるので、市街地より気温が低いです。
高地に位置し、昼夜の温度差が大きい気候が栽培に適していたことから、永沢寺地区では、古くからそばが栽培されていたのだとか。
《和田さん談》『1370年頃に創建された永澤寺は修行寺として知られ、全国から僧が集っていたそうです。昔は地区全体が寺領だったので、寺でそばを栽培し、修行僧たちはそばを食べて修行に励んでいたと伝えられています。時代の流れと共に修行僧は減っていきましたが、私が子供の頃はまだ大勢の修行僧の姿を見かけました』。
寺領が村になり、米栽培が主流に。しかし、昭和の減反政策により、三田市では、米に代わってそばの作付面積が少しずつ増加。そこで和田さんは、永沢寺のそばの歴史を復活させるべく、そば道場を開いたのだとか。
現在、そばは三田市の特産品になっています。
《和田さん談》『ここはとても小さな集落なので、大した量のそば粉は栽培できません。当時、西日本にはそば打ち体験ができる施設はなかったので、三田市のそば粉を使って体験ができる施設があれば地元の名物になるのではないかと思ったんですよ』。
そして32年前、「永沢寺そば道場」を開設。
その数年後に、全麺協が、そば打ち技能の修練度などを認定するアマチュア向けの「段位認定制度」をスタートし、「永沢寺そば道場」は段位認定会会場にも認定されたそうです。
▲ 全麺協 素人そば打ち段位認定会(上記2枚)
《和田さん談》『体験でそば打ちにハマって、もっと上手になりたいという人も多くて、習得コースを作りました。全麺協の段位が、初段から六段まであるので、段位を目標に通われる人も多いです。20年前から毎年11月に「素人そば打ち名人関西大会」も開いていて、全国から腕に自信のあるアマチュアが集うんですよ』。
和田さんは、全麺協の師範として認定されています。こちらでそば打ちを学び、そば屋を開業した人も幾人かいるのだとか。
体験の手順について簡単に説明を受けた後、いよいよ、そば打ちの開始です。
使用するそば粉は、11月から収穫が開始された三田市産の「新そば」。
《和田さん談》『うちの道場で使用するのは、石臼で挽いた、自家製粉の三田市産そば粉です。この辺りは兵庫県でも気温が低く、昼夜の寒暖差が大きい地域なので、良いそば粉が育ちます。中でも、毎年11月に収穫が始まる新そばは、すごく香りがいいですよ』。
まずは、そば粉を振るい、つなぎの小麦粉を入れ、ミネラル豊富な井戸水を2回に分けて加えながら混ぜ合わせていきます。
新そばの粉は淡い緑色。
混ぜ始めると瞬時に、香ばしい香りが立ち上ります。お腹が空く匂いです(笑)
《和田さん談》『そば打ちで一番難しいのが、水加減。その時の湿度や気温によって水の量を調整するんですが、小さじ一杯の差で仕上がりが大きく変わります。段位認定会や大会で、失敗する原因もほとんどが水加減ですから』。
次は、練りの工程。一つにまとめて前方へ転がすように、粉っぽさがなくなるまで練ります。さらに、今度は片手で塊を外側から内側に巻き込みながら練ります。そば粉に水を行きわたらせて、粘りを出していく感じ。
この作業をしっかりやると、コシのあるそばに仕上がるのだそう。
練りあがった塊は、円錐状にした後、円形にのばします。打棒を使って、円形をさらにのばして正方形に。
次は、綿棒を使って平らにのばしていきます。全体が2㎜の厚みになるまでのばすのですが、均等な厚みにするのはかなり難しいです。
「筋がいいよ」と和田さんに褒めてもらいながら、
実は私、こちらでそば打ち体験をするのは2度目。初めての時よりはスムーズにできているような気が(笑)
打ち粉を振りかけた生地を折り畳み、いよいよクライマックスの切る作業。
打ち粉には、そばの実の中心部分で作る花粉を使用。これもまた本格的です。
《和田さん談》『切る時に大事なのは正しい姿勢。利き足を後ろに少し引き、斜めに構えて腰をまな板に当てて固定します。そして、腕の力ではなくて、包丁の重みを利用して切っていきます。
あと、厚みが2mmなので、幅も2mmになるように切っていく。揃っている方が、見た目がキレイだし、茹でる時に均一の火が通るので』。
和田さんの見本を見ているととても簡単そうですが、包丁は重いし、2mm幅に揃えるなんて、至難の業です(笑)
《和田さん談》『切る作業は実はそば打ちの中で一番簡単な作業。慣れたら目を瞑っててもできます』。
そば打ちの工程は、約1時間で終了。
私は2度目の体験ですが、もっと通って一人で打てるようになりたいと本気で思っています!
打ったそばは、敷地内にある「食事処 水無月亭」で茹でてもらい、打ち立てがすぐ賞味できます。
出汁が効いたそばつゆが美味しくて、大根やネギなどの薬味もたっぷり。
写真のそばは、体験2名分なので、5人前。
「ほとんどが、2人で5人前をペロッと食べていかれますよ(笑)」と和田さん。
私も「すごい量ですね」と言いつつ、撮影担当の同行者と2人であっという間に完食(笑) 新そばの芳醇な香りと爽やかな味、のど越しもとっても良くて、箸が止まらない美味しさですよ。
「食事処 水無月亭」では、体験しなくても、そばが頂けます。
もちろん、自家製粉の挽きたての三田市産そば粉を使った、打ち立てのそば。
写真は、「天ざるそば」1,400円(税込)。温かいそばもあります。
自宅でそば打ちをしたい人のために、そば粉の販売もしています。
三田産新そばは400g:600円、1kg:1,500円(税込)。
毎年12月30日・31日に行われる「年越しそば打ち会」も大人気で、今年の残り枠も数名。
そば打ち体験は年内休まず受け付けているそうなので、年越しそばを自分で打ってみたい!という人は、挑戦してみてはいかがでしょうか。
和田さんはとてもやさしくて、指導も丁寧で分かりやすいです。
本格的なそば打ちを体験して、5人前のそばが食べられて、2人で5,000円って、ものすごくお値打ちな体験です!4人ならそば10人前で8,000円。
家族みんなで楽しめる体験だと思います。
DATA:
◇ 永沢寺そば道場
兵庫県三田市永沢寺76
Tel:079-566-0053
【そば打ち体験】※3日前までに要予約
体験時間:午前10時・午後1時(1日2回)
所用時間:約2時間(そば打ち体験&打ったそばの食事)
料金:2名様まで5,000円(そば5人前)、4名様まで8,000円(そば10人前)
※打ったそばをそのまま持ち帰る場合(食事なし)は、2名様まで4,000円、4名様まで6,000円
定休日:水曜、年始(年末は営業)
【食事処 水無月亭】
営業時間:10時30分~15時(麺がなくなり次第終了)
※冬場は土曜・日曜・祝日のみの営業。営業日の詳細は下記HPで確認を。
定休日:水曜、年末年始
https://www.shobu.co.jp/
※記事中の価格はすべて税込みです。
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--- 兵庫県には他にもお蕎麦を楽しめるところがありますよ♪ ---
◇ 丹波のそば街道で出合う!じっくり噛みしめたい十割そばにSNS映えする可愛い蕎麦。
【HYOGO!ナビ WEBサイト 関連ページ】
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掲載日:令和4年12月23日 グルメ
2023年11月24日 14:14 PM
茹であがりでぷつぷつ(おそらく)折り返しで切れしまう。 なんとかクリアしたいです。