◇「兵庫テロワールlab.」テロワール研究員レポート
食や文化を味わい楽しみ、それらが生まれたルーツや背景を探り、受け継いできた人の想いや技術に触れる。大地の恵みを堪能する“兵庫テロワール旅”の情報を、現地で体感した「テロワール研究員」の視点でお届けします。

三田市の里山で１年以上かけて「原木栽培」で育てられる希少な原木しいたけ
採りたてを三田産黒毛和牛や丹波若鶏とBBQで！
６月は２万株のあじさい園も見頃

今回レポートするのは、50年以上も「原木栽培」という方法で、しいたけ栽培を続けている三田市の「しい茸ランド かさや」。
実は、全国で生産されるしいたけの内、わずか7％と超希少な「原木しいたけ」の収穫体験ができて、もぎたてをBBQで食べることができるんです！

「しい茸ランド かさや」は、JR宝塚線・相野駅から徒歩10分ほど、山間にあります。
車の場合は、舞鶴若狭自動車道・三田西ICから約4km。
大きなピンクのパンダが目印です。

「しい茸ランド かさや」では、しいたけの他にも、いちご狩りや黒豆枝豆狩りなどの収穫体験ができる他、「相野あじさい園」もあるので、一年中色んなレジャーが楽しめます。

園内を案内してくださったのは、代表の中西孝之さん。「しい茸ランド かさや」はオープンしてから50年以上にもなるそうです。

《中西さん談》『しいたけの栽培を始める前は、松茸狩りの施設だったんです。松茸は秋だけなので、それ以外の時期は番傘を製造していました。屋号の「かさや」は、しいたけのカサではなく、傘から来てるんですよ』。

林業の衰退と共に松茸の数が減り、50年ほど前にしいたけ栽培へ転業されたのだとか。
そして、当時と全く同じ原木栽培を続けておられます。

《中西さん談》『しいたけの栽培方法には、菌床（きんしょう）栽培と原木（げんぼく）栽培があります。菌床栽培は20年程前から始まった方法で、おが屑に米ぬかなどの栄養素を加えた培地に種菌を植えて栽培。原木栽培は、ナラやクヌギなどの木に種菌を植え付けて栽培する昔ながらの方法です。
今ではほとんどが菌床栽培で生産されているので、原木栽培の原木しいたけは一般的なスーパーにはあまり並んでないと思います』。

全国のしいたけ生産量の内、実に93％が菌床栽培だそうです。
※林野庁2021年度特用林産物生産統計調査より

なぜ原木栽培は急減したんですか？

《中西さん談》『時間と手間がかかりすぎるからでしょうね。原木栽培の場合、収穫までに1年以上かかりますが、菌床栽培なら5～20週で収穫できます。
さらに、原木の場合は木の自然な栄養分に頼るしかありませんが、菌床栽培なら培地の栄養分は調整できるので、収穫量も増えますから』。

原木しいたけの栽培方法を教えてもらいました。

《中西さん談》『1月～3月頃にまず菌打ちをします。ウチではミズナラとクヌギの木を約２万本使います。一本に何十か所もドリルで穴を開け、しいたけの種菌を打ち込んでいきます。
菌打ちした原木は、菌が定着するまで横向きで組み上げ、ハウスや山中に１年間以上、置きます』。

乾かないように定期的に散水し、菌が全体に広がるにように向きを変えたり、日差しを防ぐために場所を移動するなど、１年以上をかけ、ゆっくり大切に菌を育てるのだそうです。

《中西さん談》『しいたけは自然に発生してこないんですよ。菌打ちから１年以上経過した原木に、何らかの“刺激”を与えてはじめて、木から出てくるんです』。

“刺激”を与える？

《中西さん談》『菌は眠っているので、“刺激”を与えて起こしてやるんです。木槌で木を叩くなど色々方法はありますが、ウチでは、原木を一晩、冷たい井戸水に浸けます。すると、夏場なら10日前後、冬場なら1か月前後で、収穫できる大きさのしいたけが育ちます。
ただ、雷や豪雨などが刺激になって発生してしまう場合もあって、自然相手なのでなかなか計画通りにはいきません』。

1年以上かけ、三田の山で大切に育まれた原木しいたけ。
いよいよ収穫体験！
しいたけ狩りの場所には、しいたけがたくさん飛び出した原木が並べられています。
どれも立派な大きさ！ポキッと簡単にもぎ取れます。

“刺激”を与えた後、原木は収穫体験当日までハウス内で無農薬栽培。だから虫などの心配もなく、洗わずそのまま食べられるそうですよ。
カゴにいっぱいに収穫したら、バーベキューエリアへ！

樹々の緑があふれるバーベキューエリアには、屋外に約500席。屋内席も約1000席あります。

まずは、もぎたてのしいたけを中西さんおすすめの塩焼きで調理！
白いひだの部分を下にして30秒ほど焼き、裏返して軽く塩を振ります。
内側が白くてキレイなのが、新鮮な証だそうですよ。

ひだの間から旨味の水滴が浮かんで来たら食べごろのサイン。焼き過ぎると固くなるので注意！

かぶりつくと、口いっぱいにジュワーッと旨味と香りが溢れます。
肉厚たっぷり、歯ごたえも十分で、すっごく美味しい～♡　
メイン料理級の美味しさです。
新鮮な原木しいたけはえぐみや臭みがないので、しいたけ嫌いな子どもたちも美味しいと言ってくれるのだそうです。

「しい茸ランド かさや」のしいたけ狩りはバーベキューとのセットのみ。しいたけ狩りだけはできません。
料金はバーベキューの料理内容によって変わり、1人前4,000円（税込）～。
今回頂いたのは、しいたけ狩り＋「黒毛和牛・若鶏コース」1人前4,600円（写真は2人前）。

原木しいたけがたっぷり入ったしいたけご飯に、三田産黒毛和牛や丹波若鶏などが並び、収穫したしいたけも加わるので、かなりのボリューム感です。

心地いい風に吹かれながら頂く、地元産の美味しいお肉としいたけ。
ゆっくりした時間が流れる最高に贅沢な時間です。

お腹に余裕があれば挑戦して欲しいのが、売店で売っている「椎茸アイスもなか」350円。
なんと、バニラアイスの中にしいたけの粉末が練り込まれています！
恐る恐る食べてみたのですが、意外にミルクとしいたけが合っててびっくり（笑）
ただ、後味がめちゃめちゃしいたけなので、食べた後しばらく口の中がしいたけ味です（笑）

敷地内に「相野あじさい園」もあります。
100種類・約2万株ものあじさいが植えられていて、あじさいの名所としても人気なんです。
2023年は6/10～7月上旬にオープン予定。例年の見ごろは6月中旬～下旬ですが、今年は開花が早いそうなので、ホームページの開花状況を要チェック。　※「相野あじさい園」入園料：大人400円、小人200円。

今年はまもなく終了ですが、12月～6月上旬までは、「いちご狩り」も一緒に楽しめます。約2万5000株のいちごが栽培されていて、いちご狩りは30分食べ放題！
高設栽培なので、ベビーカーや車いすでもいちご狩りができます。

秋は黒豆枝豆狩りやさつまいも掘りもできます。
お隣、丹波篠山市の特産である立杭焼の陶芸体験などもあるので、一日中遊べますよ！

DATA：
◇ しい茸ランド かさや
兵庫県三田市上相野373
電話番号：079-568-1301(代)
営業時間：9:00～17:00(最終受付15:30)　
定休日：年末年始
http://www.kasaya.net/

※記事中の価格はすべて税込みです。

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掲載日：令和5年6月9日  　　　　　グルメ