高砂への日帰り旅行:江戸の街並み、地元のカフェ、そして日本最古の帆布

高砂への日帰り旅行:江戸の街並み、地元のカフェ、そして日本最古の帆布
クリスティーナ

Contributor : クリスティーナ

東京在住(2018年まで大阪在住)の外国人インフルエンサー。外国人視点で日本の魅力や日本国内旅行について主に欧米圏に対して発信。日本人さえ知らないような国内観光地を外国人に紹介している。日々フォロワーの伸びが顕著に拡大しており、現在のフォロワー数は25万人にものぼる。(もしアカウントがメンション出来ればする)

姫路や神戸の賑やかな街から静かで意義のある逃避行を求めているなら、高砂町は時間をかけて行く価値がある場所です。到着したとき、実はあまり期待せずにいました—よくある歴史的なエリアだと思っていました。しかし、そこで見つけたのは、歴史、職人技、日常生活が自然に融合した、日本の中で他にない、穏やかな一角で、まるでどの世紀にいるのか忘れてしまう感覚になるような経験をしました。 高砂は観光客用にデザインされた場所ではありません。だからこそ、私はそれをとても気に入っているのです。

 

 

アクセス

 

高砂は兵庫や大阪の主要都市からアクセスが簡単で、リラックスする日帰り旅行にぴったりです。

 

●姫路から:姫路駅から山陽電鉄に乗り、高砂駅まで約20分です。
●神戸から:神戸三宮駅から山陽電鉄に乗り、高砂駅まで約50分です。
●大阪から:大阪梅田駅から山陽電鉄直通、山陽姫路行きに乗り、乗り換えなしで高砂駅まで、合計約1時間20分です。

 

高砂駅に到着すると、歴史的な地区までは歩いてすぐです。複雑な乗り継ぎもバスもなく、電車を降りてすぐに探検を始めることができます。

 

 

愛の物語と伝説が始まる場所:高砂神社

 

この小さな港町は、1601年に池田輝政によって正式に設立され、今でも400年以上前と同じ街の区画を保っています。当時、高砂は北前船*の貨物船の中継地点として栄え、現在でも狭い路地を歩くと、過去が決して去っていないように感じられます。しかし、高砂はその日本の海運の歴史だけでなく、日本の最も有名な愛の物語の一つとも深く結びついています。

 

*北前船....江戸時代中期の18世紀中ごろ~1890年代までの間、大阪と北海道を日本海回りで商品を売り買いしながら結んでいた商船の総称。

 

高砂神社は縁結びと良縁にご利益があると言われています

 

私の一日を始めるために、高砂神社に向かいました。ここは、縁結びや良縁に恵まれると言われている静かな場所です。この町の名前は、単なる地名以上のものになり、それ自体が象徴となります。

 

高砂神社の入口

 

日本において「高砂」という言葉は、この歴史的な町の名前としてだけでなく、結婚式で使用される象徴的な席の配置のインスピレーションとしても知られています。そこでは、高砂神社で敬われている老夫婦の形象である尉と姥が並んで座り、永遠の調和と持続する絆を表しています。

 

伝説によれば、尉と姥の神々はこの松の木に宿っているとされています。

 

この神社は、全国の結婚式でよく演奏される有名な能の謡「高砂や~この浦舟に帆をあげて~」の発祥地とも考えられています。そして、高砂を訪れると、このような美しい伝統がここから生まれたことが何とも納得できる気がします。

 

相生の松、または「愛の連なる松(Twin Pines of Love)」

 

神社の敷地の奥深くにある相生の松、または「愛の連なる松(Twin Pines of Love)」は、ひとつの根から2本の幹が成長している姿で、完璧な結びつきを象徴しているとされています。伝説によれば、調和と長寿の象徴である尉と姥の神々は、この木に宿っていると言われています。たとえ一人旅をしていても(私がそうだったように)、この神社は、人々や場所、伝統との意味のあるつながりは常に大切にする価値があることを静かに思い出させてくれます。

 

 

江戸時代の街並みを散策

 

神社を後にして、高砂の歴史的地区を歩き、古民家や昔の商家が何世紀も前と同じように今も立ち並んでいるのを見ました。

 

江戸時代の街並みを散策しながら見つけた相生の松が描かれたマンホールアート

 

ここは、手入れが行き届いた過度に保存された場所ではありません。むしろ、生き生きとした雰囲気があります。庭の手入れをしている地元の方が、私に挨拶をしてくれました。子供たちは狭い道を自転車で走り抜けていきました。どれだけの人が、自分の足元にどれだけの長い歴史があることに気づかずにこの道を歩いているのだろうと考えました。実際、舗装に使われている石の中には、300年以上も前のものがあるのです!

 

宝瓶山 十輪寺

 

歩いていると、町の狭い路地に静かに佇む宝瓶山十輪寺(Hōheizan Jurin-ji Temple)に出会いました。815年に創建されたこの小さく静かな寺院は、約1,200年もの間、高砂を見守ってきました。派手でも混雑した場所でもなく、日常生活に囲まれた落ち着いた寺院です。私はしばらくそこで過ごし、庭の静けさを楽しみながら、木々の間を通り抜ける風の音に耳を傾け、何世紀にもわたりここに訪れた人々が同じ静かな瞬間を求めてきたことを想像しました。

 

高砂で出会った人々はとても親切で、副住職の方が寺院内を案内してくれました!

 

これが高砂の魅力です—地図や旅程は必要ありません。ただ歩き始めるだけで、こうした静かで意義のある場所が自然に見つかります。街の道はシンプルな格子状のパターンで設計されていて、まっすぐな道が定期的に交差しています。何の計画もなく歩き始められるような場所であり、なんとなく行きたい場所に行きついている不思議なところです。その日は一度も地図を見ることすらしませんでした。必要ありませんでした。

 

レトロな商店街(地元のショッピングストリート)

 

歩いていると、レトロな公衆浴場(梅ヶ枝湯)、静かな商店街、手入れの行き届いた庭が並ぶ裏道、そしてカフェに改装された古民家に出会い、ゆっくりと休憩をするように誘われました。

 

 

高砂の味わい:雨の日のコーヒーから完璧な穴子まで

 

歩き回って少し疲れてきたところで、休憩するのにぴったりな場所を見つけました。町の古い木造家屋の中にひっそりと佇む小さな古民家カフェ、上田珈琲焙煎所です。

 

上田珈琲焙煎所にて

 

 

彼らは約6種類の厳選されたコーヒー豆を提供しており、それぞれは風味に配慮して自家焙煎されています。メニューの名前も魅力的で、「雨の日の珈琲」という名前は、この場所の穏やかで自らを振り返ることができるような雰囲気にぴったりでした。

 

そして、すでに完璧な雰囲気の中、カフェの公式ではないですが、マスコットと言える可愛らしい猫が私を出迎えてくれました。ふわふわとした柔らかい毛並みのこの店猫は、とても愛らしかったです!

 

 

到着する前に、高砂は穴子で有名だと聞いていたので、当然試さずには帰れませんでした。コーヒーを楽しんだ後、1920年創業の小さな老舗の「そらまめ」に向かい、彼らの名物である穴子せいろ(焼き穴子とご飯に甘辛いたれをかけて蒸しあげた料理)を注文しました。

 

創業1920年の老舗「そらまめ」

 

穴子は信じられないほど柔らかく、甘すぎず、強すぎない絶妙なバランスのタレがかかっていました。シンプルで伝統的ながら、静かに忘れられない味わいでした!

 

 

帆布「松右衛門帆」を使ったワークショップ体験

 

高砂での時間のハイライトの一つは、御影屋で開催されるワークショップに参加し、町自体と同じくらい豊かなストーリーを持つ松右衛門帆の布地を使って小さなアイテムを作ったことです。

 

 

帆布「松右衛門帆」を使ったアイテムを求めて御影屋での買い物

 

この旅行まで、高砂が日本最古の帆布の産地であることを知りませんでした。この帆布は1782年に工楽松右衛門によって発明されました。彼の革新の前、日本の船は簡単に裂けてしまう帆で苦労しており、海の過酷な条件に耐えられなかったのです。しかし、松右衛門は厚手の播州綿から非常に強い布地を織り上げることで、帆布「松右衛門帆」として知られるものを生み出しました。彼の創造は航海を改善しただけでなく、日本の海運貿易や高砂のような港町の成長を促しました。

 

そして、何世紀も後に、私は同じ町の小さな作業台に座り、色とりどりの生地の中から生地を選び、その歴史の一片を自分で作る方法を学んでいることに気が付きます。

 

カラフルな生地の中から自分のカードホルダーを作るために生地を選びます

 

そのプロセスは驚くほどシンプルでしたが、非常に満足感がありました。お気に入りの色を選び、金属製のパーツを並べて、慎重にハンマーで打ち込んでいきました。約10分で、手作りの帆布生地を使ったポーチが完成しました。私はこれをカードホルダーとして使用することに決め、高砂の小さな思い出を日常生活に持ち歩くことにしました。

 

そのプロセスは驚くほどシンプルでしたが、非常に満足感がありました!

 

日常生活に持ち歩く高砂の思い出

 

ワークショップを終えた後、1階にある小さな工場の見学をさせてもらいました。そこで、生地がまだ織られ、スタイリッシュなバッグや耐久性のあるアクセサリー、日常品に変わっていく様子を見学しました。

 

ショップの1階にある小さな工房

 

機械の動く様子を見て、作っている時の音を聞き、過去が現在に織り込まれている様子を見ることで、私がtamaki niimeで経験したことを思い出させられました(気になる方は私の他の記事もチェックしてみてください)。

 

 

なぜ行くべきか

 

高砂は、目立ってあなたの注意を引こうとする場所ではありません。しかし、だからこそ、離れた後もしばらく高砂のことを考えている自分に気づきました。

 

もしあなたが私と同じようなタイプなら、観光スポットをチェックするためではなく、時間、職人技、そしてコミュニティが美しく織り合わさっているこの町にしばらく滞在するために、必ず戻ってくると自分自身に約束することになるでしょう。