ぬくもりを感じる丹波焼の郷 〜土のぬくもりや人との出会いで心を満たす旅〜①

ぬくもりを感じる丹波焼の郷 〜土のぬくもりや人との出会いで心を満たす旅〜①
アムサ ンパティン アブデル ジャリル

Contributor : アムサ ンパティン アブデル ジャリル

アムサ ンパティン アブデル ジャリル/べナン共和国出身。子供の頃に体験したアニメやゲームがきっかけで日本に興味を持ち続け、2017年に一念発起し日本の大学に進学。

兵庫で働き2年半、日本の色々なところを旅しています。私の母国、西アフリカのべナンは温暖な熱帯気候で日本のような四季がないので、旅の計画をする時は、いつも日本の四季の美しさを感じられる自然豊かな場所を意識しています。旅の魅力は、常に新しい発見と出会えること。今回は、まだ訪れたことのない丹波焼の郷へ。スイーツ、工芸品、伝統など、様々な出会いを通して、心豊かにリフレッシュしてきました!

 

 

約850年受け継がれる伝統的な焼き物、丹波焼。

 

丹波焼の里である「立杭地区」

 

今回の旅では、丹波焼の中心地である丹波篠山市の立杭(たちくい)地区に位置する「丹波伝統工芸公園 立杭 陶の郷」(Tamba Traditional Crafts Park Tachikui Ceramic Village)を訪ねました。ここは、丹波焼の歴史や文化を深く学べる総合施設です。事前に予約が必要な「さとびとガイド」(案内人)というサービスがあり、あらかじめ作りたい器や好みを伝えると、案内人の人が約50軒の窯元の中から好みが合いそうな窯元をマッチングしてくれます(英語のみ対応可能)。私は「花や植物が好きで実用的な器に興味がある」と伝えました。

 

丹波篠山市の立杭地区では、「陶の郷」(Tamba Traditional Crafts Park Tachikui Ceramic Village) を中心に、周辺に陶芸職人たちの工房や丹波焼を使ったカフェなどが点在する

 

丹波焼は、日本の伝統的な陶磁器の産地、兵庫県丹波篠山市で生産される陶器で日本六古窯の一つ。日本六古窯とは、日本の陶磁器の産地のうち、900年頃~1200年代後半に成立し、現在も伝統を引き継ぎながら生産が続いている6つの窯(やきものの産地)を指します。2017年には、日本六古窯が日本遺産に認定され、その価値と文化的意義が広く知られるようになりました。陶磁器の表面に付着させるガラス質のコーティング剤のことを「釉薬」と言いますが、丹波焼の特徴は、人工的に釉薬を塗らず、窯の中で薪や灰が作品に降りかかり、それが高温で溶けることで自然に生まれる「自然釉」と呼ばれる独特の釉薬を使うことです。窯の中で薪の灰が高温で溶け、器の表面に自然に釉薬が形成されることで、偶然性が生む美しい模様が生まれます。また、用途が幅広いのも特徴で、格式高い茶道の道具や花器から日常使いできる皿や鉢など、暮らしで使えるさまざまな器が作られています。

 

 

伝統と革新の技術の融合に取り組む、若き陶工との出会い。

 

「丹山窯」は自然の素材と伝統的な技法を守りながら、現代のライフスタイルに合う作品を作り続けている

 

「丹波伝統工芸公園 立杭 陶の郷」へは、JR福知山線「相野駅」からバスで向かいました。最寄りのバス停からは徒歩でおよそ3〜5分ほど。ドキドキしながら向かうと、私を迎えてくれたのは「丹山窯」の若き陶工、森本祐介さんでした。

 

森本さんは、まず約150年前に造られた登り窯に案内してくれました。登り窯は陶器や焼き物を焼くための伝統的な窯。これは丹波焼の現存する最古の窯で、長さ47メートルもありました。

 

1895年に造られた「登り窯」

 

続いて、丹山窯のギャラリー、会議室、工房の一部も見せてくれました。どの場所もとても興味深かったのですが、中でも私にとっては丹山窯の工房が一番魅力的でした。

 

工房では、ギャラリーには並ぶことのない素焼き段階の作品を特別に見ることができる

 

森本家の猫ちゃん

 

ふっくらした猫が工房をウロウロしていて、とても可愛くて癒されました。最初は緊張していたのですが、森本さんもフレンドリーに迎えてくれて居心地の良い工房でした。

 

3Dモデリングを説明する森本さん

 

森本さんは、作品を作るまでの陶芸の工程を熱心に説明してくれました。驚いたことに、森本さんは陶芸作品のいくつかを作るのに3D技術を使う取り組みをされているそうです。伝統的な技法と現代のテクノロジーとを融合させる手法を見せてくれて、とても感銘を受けました。職人が常にチャレンジしていることを知り、日本の伝統工芸が、世界市場で競争力と魅力を保ち続けている理由がわかった気がします。 さあ、いよいよ、器作りに挑戦です……!

 

 

「たたら成形」の技法で器作りにチャレンジ!

 

まずは粘土を均等な厚さの板に

 

森本さんに教わって、器作りにチャレンジ。伝統的な「たたら成形」の手法で始まりました。粘土を練って伸ばし、形を作り整えて……。

 

森本さんが3Dの技術で作成した石膏型に、粘土を乗せる

 

次に、型に粘土を乗せて成形していきました。伝統的な陶芸技法を現代のデジタル技術で進化させることによって、複雑な形状や精密なデザインの作品を制作することが可能となることを実感。

 

器の成形が完成!

 

形が整いました!この後、乾燥させ、素焼き、釉薬掛け、本焼きを行うと完成です。

 

 

自然との共生を感じる立杭地区のカフェを巡る。

 

ヤギの名前はハルくん。カフェの庭を自由に歩き回っていた!

 

「Touya cafe」のロイヤルミルクティと期間限定メニューの抹茶のチーズケーキ。セットで1,190円(時期によって変動)

 

「立杭 陶の郷」の周辺には、丹波焼の里の風情を楽しみながらくつろげるカフェが点在しています。「さとびとガイド」のスタッフ甲斐田さんにピックアップしてもらったお店の中から、今回は「Touya cafe」を選択。季節によって旬の食材で提供されるメニューに日本の四季を感じました。また、料理を一人ひとり異なる丹波焼の器で提供してくれるので、誰かの家に招かれたような、特別なおもてなしを受けた気分に。器を愛でながら、甲斐田さんと一緒にミルクティーを飲んでゆっくり語らいました。

 

 漆喰の赤い壁が個性的な「retes」は、花屋・植物屋・コーヒースタンドがひとつになったこだわりのお店

 

店内に足を踏み入れると、植物がスタイリッシュに並んでいた

 

「Touya café」から徒歩1分の場所に、目をひく漆喰の赤い壁のお店「retes」がありました。漆喰は、日本の伝統的な建築材料であり、長い歴史を持つ自然素材の一つです。店内には植物だけでなく、おしゃれな鉢や花瓶もたくさん揃っていました。もちろん丹波焼も。花器を見ていると、モダンなデザインのものから実用性のあるものまであって、この後待っている次の陶芸体験のアイデアを得ることができました。

 

 

窯元に教わりながら、世界で一つだけの花瓶作り。

 

粘土をろくろの中央に固定し、両手を使って粘土を上下に伸ばす

 

続いて案内されたのは、「壺市」の市野元祥(いちのげんしょう)さんの工房。ろくろ場や棚などは市野さんがご自身でDIYされたそうで、使いやすく整っていました。この工房で生まれる市野さんの作品は、自然の素材を活かした温かみのあるデザインで、実用性を重視する人にもアート性を求める人にも支持されているそうです。

 

市野さんに教わりながら、最初はろくろ回しに苦戦。成形する時、内側と周りに手を置くのが難しかったです。どうやら私の手はかなり大きいようでした(笑)。成形した土が自分の手により花瓶の形になっていく様子はワクワクしました。この花瓶は窓際か部屋の戸棚に置きたいな、どんな花を生けようかな……と、どんどんイメージが広がっていきました。

 

成形した花瓶。この後、乾燥、素焼きは窯元が行ってくれるそう

 

後日、出来上がった作品が発送されて来ました!大切な思い出の品となりました。

 

壺市での陶芸体験で制作した作品。左から順に、カトラリーレスト、電動ろくろの花器、手びねりの鉢

 

 

お土産は「陶の郷」の中心スポット「窯元横丁」で。

 

51軒の窯元の作品が集結

 

丹波焼体験の締めくくりは、「窯元横丁」でお土産探し。ここは、丹波焼窯元51軒の共同販売所。窯元ごとに展示ブースを設けていて、さまざまなデザインや技法の器が並び、見て歩くだけでも楽しめます。展示している作品はその場で購入することができるので、私はたくさんの素敵なアイテムの中から、友人へのお土産を探しました。見つけたのが、こちらの花瓶です!

 

 小さな可愛い花瓶を見つけました。友人にプレゼントとして渡す予定です!

 

鴨すき鍋と温泉、山間の静寂に癒される夜。

 兵庫県丹波篠山市の北部、草山盆地に位置する歴史ある温泉地

 

宿泊の宿は、陶の郷から電車とバスを乗り継いで約1時間10分のところにある、篠山市の草山温泉。草山温泉は、「金泉」と呼ばれる鉄分を多く含む茶褐色のお湯が特徴的。豊かな自然に囲まれたこのエリアは、猪肉料理(ぼたん鍋)や鹿肉料理といったジビエ料理が楽しめる場所としても知られています。

 

 丹波篠山の豊かな自然に囲まれた、温泉のある宿泊施設。BBQスペースやグランピング設備も完備

 

バス停から約8分くらい歩くと、「西紀荘」が見えてきました。ひと目見て、まるで森の中にある山小屋のような雰囲気が気に入りました。

 

 鴨すき鍋をオーダー

 

  白ネギと鴨を一緒に、出汁にくぐらせて食べる

 

「西紀荘」では、地元産の新鮮な食材を活かした料理が人気。今回食べたのは「鴨すき鍋」。鴨肉はほどよい歯ごたえで、コクのある脂身と甘みのある赤身とのバランスが絶品でした。たっぷりの白ネギは、鴨のつみれの旨味が出た出汁に浸して、鴨肉と一緒に“しゃぶしゃぶ”して楽しみました。白ネギのシャキシャキ感と鴨の歯ごたえが絡んで、最高の組み合わせでした。

 

 広々とした空間の共用スペースで、お風呂上がりにリラックス

 

客室は洋室ツインルームが全35室。ウォシュレット付きトイレも完備

 

何度来ても楽しめるように、客室デザインは5パターンあり、部屋によって壁紙のデザインが異なるそうです。今回宿泊した部屋は、オレンジの壁紙でした。明るいカット柄が可愛いですね。明日も丹波篠山。憧れの甲冑体験と大好きなスイーツの人気店へ行って来ます!おやすみなさい……。

 

■2日目の体験はこちら 

 https://www.hyogo-tourism.jp/world/ja/reviews/36 

 

スポット

 

丹波伝統工芸公園 立杭 陶の郷

https://tanbayaki.com/

住所/兵庫県丹波篠山市今田町上立杭3

TEL/079-597-2034

開園時間/AM10:00〜PM5:00

休園日/年末年始(12月29日〜1月1日)・毎週火曜日(祝日は営業)

さとびとガイド(問い合わせ)

https://tamba-tohaku.com/

 

Touya cafe

https://www.instagram.com/touyacafe

住所/兵庫県丹波篠山市今田町休場

TEL/ 079-506-6930

定休日/木金

営業時間/月火水 11:30-16:30 (L.O.16:00)

     土日祝 11:00-16:30(L.O.16:00)

 

Retes

https://retes.jp/ https://www.instagram.com/retes.jp

住所/兵庫県丹波篠山市今田町上立杭 5-1

TEL/079-506-3101

定休日/火・水・木(祝日の場合は営業、冬季休業あり)

営業時間/11:00 - 18:00

 

西紀荘

https://kusayamaonsen-nishikisou.com/

住所/兵庫県丹波篠山市遠方122-1

TEL/079-592-0045