1300年以上の歴史ある温泉を楽しむ

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1300年以上の歴史ある温泉を楽しむ

日本は世界で最も多く温泉地がある国

 

日本には「裸のつきあい」という言葉がある。
人間関係において、隠し事がなく本音で話し合えるような関係のときに比喩的に使われる言葉だ。ただしその文字どおり、友人や家族と一緒に裸になって風呂につかって心の距離を縮める、ということでも使われる。風呂文化のある、いかにも日本らしい言葉だといえるだろう。そんな「裸のつきあい」をする場として使われてきた所の一つが、温泉だ。

 

日本は世界一の温泉大国で、現在日本には約3000もの温泉地があるとされている。その歴史も古く、文献に記録されているものだけでも、1300年以上前にさかのぼる。その頃は皇族らが温泉地に長期間滞在し、温泉の効能で病気を治したり、体調を整える「湯治」を行っていたという。その後、湯治は皇族以外の階級の人々にも広がり、戦乱の時代にはけがをした侍の傷を癒やすためにも使われていた。
今でこそ、リラックスやストレス解消が目的になっていることが多いが、医療が十分に発達していない時代には、医療の中心的役割として温泉が使われていたのだ。

 

温泉が湧き出る泉源には、湯けむりがたつ。これは有馬温泉にある天神泉源。©KOBE TOURISM BUREAU

 

そうした温泉の健康効果は、現代では科学的に解析されている。
お湯につかることで、水圧や浮力が体にかかり、マッサージ効果があるのが一つ。さらに温泉にはさまざまな化学成分が含まれていて、この成分が体に作用することが期待できる。旅行で歩き回った体を癒やすには、温泉がベストだといえるだろう。
見知らぬ他人と「裸のつきあい」をすることに抵抗を感じるかもしれないが、最近は宿泊する部屋に専用の露天風呂がついていたり、貸し切り風呂をもつ宿も増えている。

 

1300年以上の歴史をもつ「有馬温泉」

 

歴史ある温泉の多い日本だが、特に長い歴史をもつ3つの温泉は「日本三古湯」と呼ばれている。その一つが兵庫にある「有馬温泉」だ。事実、日本で最初の正式な歴史書には、631年に天皇が有馬温泉の湯を楽しんだという記述がある。

 

温泉街の風情を感じさせるねね橋。「ねね」は16世紀に生きた有馬温泉とゆかりの深い女性の名前 ©KOBE TOURISM BUREAU

 

1300年以上の歴史を持つ有馬温泉だからこそ、数々の伝説、逸話も多く残されている。
たとえば有馬温泉のはじまりの伝説。2人の神様が、傷ついた3羽のカラスが水浴びをしているところを見ていた。そのカラスの傷が数日で治ったため、その泉が高い効能をもつ有馬温泉であったと伝えられている。

 

さらにもう一つ。1097年、有馬で大洪水が起こり、町は壊滅状態になった。その後、神様のお告げを聞いた僧侶がやってきて、有馬温泉や寺を復興。お寺にお参りに来る人たちや治療のために温泉に来ている人たちのために、12の宿坊(しゅくぼう:僧侶やお参りに来る人たちのための宿泊施設のこと)を作った。現在、有馬温泉には約30軒ほどの宿泊施設があるが、宿の名前に「御所坊(ごしょぼう)」「中の坊(なかのぼう)」など「坊(ぼう)」がつく宿が多いのは、その名残だとも言われている。

 

724年に創建、1097年に復興した温泉寺。©KOBE TOURISM BUREAU

 

世界的にも珍しい有馬温泉

 

そんな有馬温泉の泉質は、世界的にも珍しい。
日本では治療に役立つとして9つの泉質が指定されているのだが、有馬温泉はこのうち7つもの泉質が混合した温泉なのだ。
さらに色と効能が違う2つのお湯も楽しめる。「金泉」と呼ばれる赤褐色のお湯と、「銀泉」と呼ばれる無色透明なお湯だ。金泉は塩分と鉄分を多く含み、塩分の高いお湯は肌に薄い皮膜をつくるため、保湿効果が続く。一方、銀泉は炭酸を含んだ温泉と、ラドン泉を含んだ温泉の2つがあり、炭酸泉は血流の増加、飲めば食欲増進が期待でき、ラドン泉は自然治癒力を高める効果が期待できる。

 

金泉。鉄分の含有量が多いため、空気に触れるとすぐに赤褐色に変化する。

 

気軽に有馬温泉を楽しむなら、足だけをお湯につける足湯を利用してみてはどうだろうか。
有馬温泉駅から歩いて6分ほどのところに、「金の湯」という温泉施設がある。ここは宿泊施設がなく、リーズナブルに温泉だけを楽しめるところ。外には無料で利用できる足湯があり、15分ほどつかるだけでも体がポカポカになり、体も軽く感じるだろう。
裸の付き合いをすることに抵抗がないなら、足湯だけでなくぜひ温泉にも。金の湯から歩いて3分ほどのところには「銀の湯」もあるので、有馬の2種のお湯の違いを感じることができる。

 

金の湯にある無料の足湯。

 

有馬温泉には温泉以外の楽しみも

 

有馬の楽しみは温泉だけではない。有馬では木造の日本的な家屋や、自然と調和した美しい街並みを見ることができるので、ぜひ街歩きも楽しもう。おまんじゅうやおせんべいといった日本の伝統的なお菓子を販売するお店に寄りながら、食べ歩きを楽しんでほしい。

 

甘い餡の入ったまんじゅう。アツアツが食べられる。©KOBE TOURISM BUREAU

 

散策していると、ゆかたを着て歩く人々の姿に気づくはず。ゆかたは日本の伝統的な服である着物の一つ。着物より薄い生地で、よりカジュアルに着ることができるものだ。
現代の日本人は特別なイベントのときにしか着物やゆかたを着なくなったが、温泉地では別。温泉宿ではゆかたが用意されており、体が温まった風呂あがりは、涼しいゆかたで過ごすことが多いのだ。宿によっては好きな柄のゆかたを選ぶことができるので、ぜひお気に入りのゆかたを着てゲタを履いて、有馬の町の雰囲気を堪能してほしい。

 

ゆかたを着た人に会えるのも温泉街ならではの光景だ。©KOBE TOURISM BUREAU

 

温泉宿では畳やふすまを使った、日本の伝統的な部屋で過ごすことができるだろう。温泉につかったり、周囲を散策したり思い思いにすごしてほしい。ちなみに温泉宿には「仲居さん」というホスピタリティスタッフがいる。宿や街の案内、食事の提供、寝床の準備など、宿泊客が心地よく過ごせるようさまざまなサービスを提供してくれるので、日本のおもてなし文化を感じられるはずだ。日本の季節の食材を取り入れた料理を味わって、宿での時間をゆったりと過ごしてほしい。

 

畳やふすまといった、日本らしい室内で過ごせるのも温泉宿の魅力の一つ。

 

兵庫にある2つの人気温泉

 

兵庫には有馬温泉以外にも、城崎温泉、湯村温泉という人気の温泉がある。
城崎温泉は泉質も雰囲気も異なる温泉があり、それらを歩いてめぐる「外湯めぐり」が人気の温泉。宿に入ったらゆかたを着て出かけよう。温泉街の中心を流れる川沿いには柳並木があり、春の桜、冬の雪景色も美しい。

 

湯村温泉は、98度という高温のお湯と豊富な湯量が特徴の温泉。この豊富なお湯を使ってゆでた温泉卵や、足湯も楽しむことができる。高温のお湯からでる湯けむりが、温泉街らしい雰囲気を感じさせる。

 

城崎温泉。川沿いには旅館や土産物屋などが立ち並ぶ。

 

湯村温泉。日本屈指の98度の高温泉が噴出

 

●有馬温泉
https://www.hyogo-tourism.jp/spot/0110

 

●金の湯
https://www.hyogo-tourism.jp/spot/result/113

 

●銀の湯
https://hyogo-tourism.jp/universal/spot/9?c-1=1

 

●城崎温泉
https://www.hyogo-tourism.jp/spot/0784

 

●ひょうごフィールドパビリオン:選べる新旧 城崎温泉町めぐり (音声ガイダンスでめぐる城崎温泉&古地図でめぐる城崎温泉)
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/program/53

 

●ひょうごフィールドパビリオン:コウノトリツーリズム
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/program/14

 

●湯村温泉
https://www.hyogo-tourism.jp/spot/0732