ローカルグルメで兵庫の歴史と風土をめぐる

ローカルグルメで兵庫の歴史と風土をめぐる

暮らしに根付いたものだったり、自然が育んだものだったり。ローカルグルメの背景を紐解いていくと、その土地が見えてくる。兵庫県の明石市、姫路市、たつの市、出石町(いずしちょう)、丹波篠山市で、ローカルグルメを味わいながら、それぞれの街の歴史と風土をのぞいてみよう。

 

コーヒーと「アーモンドトースト」で始まる姫路の朝



茶房 大陸本店の「アーモンドバタートースト

 


姫路から明石まで。、ローカルグルメめぐりのスタート!

 

新大阪から新幹線で約30分の兵庫県姫路市は「モーニング文化」が有名な地域で、昔ながらの喫茶店が朝からオープンしている。工業が盛んだったこの土地で早朝から働く人たち向けにはじまったといいわれているが、「茶房 大陸」の社長・岡本一(はじめ)さんは「昔の人はみんな早起きだったからね」という。

 


 

姫路のモーニングの定番といえば、「アーモンドトースト」。バターとマーガリン、アーモンドダイスとアーモンドプードルをまぜてつくった「アーモンドバター」を厚切りトーストに塗って焼いたもので、コーヒーに合う逸品。ローカルフードだが、姫路の人が「全国で食べられると思っていた!」と口をそろえて言うほど、姫路の暮らしに浸透している文化だ。茶房 大陸のアーモンドバターは空気を含ませてホイップした軽い口当たりが好評。


 

茶房 大陸は、1947年創業の姫路最古の喫茶店。創業当時から使われているテーブルに着くと、タイムスリップしたような心地を味わえる。店内ではアーモンドバターの販売もしている。

 

 

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デミグラスソースで食欲増進。街の元気の源「加古川かつめし」

 

本家かつめし亭の「加古川かつめし

 

お昼ごはんは、隣の加古川へ。ここには、「加古川かつめし」がある。日本にフォークとナイフで食事することが浸透していなかった頃、町の食堂が考案した箸で気軽に食べられる洋食だ。

 

以来、多くの市民に愛され続け、学校給食にも登場するほどだ。ごはんの上にのせた平たいビーフカツにデミグラスソースをかけ、ゆでキャベツを添えたものが一般的。現在はビーフカツのほかトンカツやチキンカツ、エビフライなど具のバリエーションが増え、ソースも店によってさまざま。それぞれの味わいを楽しむことができる。


本家かつめし亭

 

そんななか、発祥当時の具であるビーフカツにこだわり、前身の店主から引き継いだデミグラスソースの味を50年近く守り続けているのが「本家かつめし亭」だ。使う牛肉は、最高ランクの兵庫県産、黒毛和牛。デミグラスソースは、豚骨と鶏ガラ、数種類の野菜をじっくり煮込み、5日ほどかけてつくっているという。旨味と甘みが詰まったビーフカツに濃厚で甘酸っぱいソースがよく合い、ごはんがすすむ。

 

 

 

一口大にカットされたビーフカツ。今はスプーンで食べる。味とたべやすさにこだわるおおてなしの気持ちはそのままに、加古川かつめしは時代に寄り添いながら、進化している。

 

 

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明石の産業と名産品から派生した「明石焼」


あかし多幸の明石焼

 

続いては明石。ここのローカルフード「明石焼」は、小麦粉とじん粉に卵とだし汁をたっぷり含ませた生地の中に明石の名産品であるタコを入れて焼いたもの。大阪のたこ焼きとの違いは、ソースではなく「つけ汁」に浸して食べること。口に入れてほおばると、一気に旨味と甘味が広がる。ふんわりかつジューシーな食感にタコのコリっとした歯応えはやみつきに。おやつにぴったりのローカルグルメだ。

 



いまから140年ほど前、兵庫県明石市では、模造サンゴ「明石玉」の製造がさかんだった。明石玉には卵の白身を使うのだが、そこで余った黄身を小麦粉と混ぜて焼き、中にタコを入れたのが明石焼のはじまりといわれている。

 

魚の棚(うおんたな)商店街

 

あかし多幸

 

JR明石駅から徒歩約3分のところにある「魚の棚(うおんたな)商店街」には、明石焼の店舗が約20店舗ある。商店街の中央あたりに位置する「あかし多幸」は、素材にとことんこだわった明石焼を提供。つけ汁は、後味のいい昆布だしと口に入れた瞬間にうまみが広がるかつおだしをブレンドしたもの。抹茶塩などで“味変”しながら、好みの食べ方を見つけるのも楽しい。

明石までは、加古川からは電車で約20分。神戸からは約12分。神戸を拠点にした旅でも、すぐ行ける距離がうれしい。大阪からも約40分で訪れることができる。

 

 

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夜は生姜と醤油で食べる「姫路おでん」であたたまる

 

酒饌(しゅせん)亭 灘菊かっぱ亭

 

姫路には、「姫路おでん」もある。おでんは、鰹節と昆布でとっただしにしょうゆなどで味をつけ、大根、こんにゃく、卵、練り物などの具材を長時間煮込んだ鍋料理の一種。東京風や静岡風、名古屋風など地域色が豊かで、それぞれの土地に根付いたおでんが食べられている。

 

辛子をつけて食べられることが多いおでんだが、姫路おでんは、生姜醤油で食べる。兵庫県姫路市で生姜がつくられていたこと、隣のたつの市が醤油の生産地であることから誕生したと考えられ、姫路とその周辺では昔から食べられていた味。冬になると地元の一部コンビニで購入することもでき、手軽に楽しめる。


 

姫路おでんもお店によってバライティ豊か。JR姫路駅から徒歩約3分の酒饌亭 灘菊かっぱ亭の人気は、牛すじ、卵、厚揚げ、こんにゃく、ごぼう巻きの5種の具材を串に刺した「大串黒おでん」。だしが染みた具材に生姜醤油をかけて食べるスタイルで、生姜のアクセントが効いた甘辛い味は日本酒とも相性がいい。

 

 

酒蔵である灘菊酒造直営の酒饌亭 灘菊かっぱ亭では、酒粕味の「大串白おでん」も。ピリッとした黒とまろやかな白の食べ比べも楽しんで。

朝、昼、夜。姫路でローカルグルメを味わったあとは、塩田温泉でのんびりするのがおすすめ。

 

 

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地の利をいかした縁起物そうめん「揖保乃糸」

 

揖保乃糸 資料館 そうめんの里


素材も食べ方もいろいろ。兵庫には麺のローカルグルメも豊富。

 

糸のように細く美しく、なめらかでのどごしが良い麺、「そうめん」。兵庫県西部の播磨地方は、良質な小麦と豊かな水源、赤穂の塩を得られる地の利をいかした播州そうめんの産地だ。播州そうめんの代表的なブランドである手延べそうめん「揖保乃糸」は、日本におけるそうめんの4割のシェアを誇る。


 

兵庫県たつの市にある揖保乃糸 資料館 そうめんの里は、手延べそうめんの歴史と製造工程を学び、伝統の技と味わいを体験できる施設。職人の熟練技を見学したあとに、館内レストラン「庵(いおり)」で食べるそうめんは一層おいしく感じられる。

 


そうめんは、冷たくてもあたたかくてもおいしく、レシピは無限大。 庵では、なめらかで歯切れがいい「冷やしそうめん」のほか、合わせ出汁が効いた温かい「にゅうめん」などメニューも豊富。売店では、そうめんの販売も。細く、長く、切れないことから、長寿や長い付き合いへの願いも込められた縁起物でもあるそうめん。大切な人へのお土産にいかが?

 

 

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小皿に盛られた「出石(いずし)皿そば」


さらそば 甚兵衛

 

京都から電車で約2時間40分の城崎温泉からバスでアクセスでき、気軽に観光できる出石町。出石のローカルグルメといえば「出石(いずし)皿そば」が有名で、町内には約40軒のそば屋が軒を連ねる。出石皿そばは小皿に盛られて提供されるのが特徴で、一般的なそばよりも細くもちもちとした食感で、風味も格別だ。

 

 

ミシュランガイドのビブグルマンに選ばれた「さらそば 甚兵衛」では、“挽きたて・打ちたて・ゆがきたて”の皿そばが堪能できる。通常、1人前は5皿1組で、成人男性は10~15皿、成人女性は7~8皿が平均的。お好みで生玉子やとろろ、ネギ、大根おろしなどを合わせて食べるのが出石スタイルだ。


 

さらそば 甚兵衛は、出石でも数少ない出石皿そば専門店で、純和風造りの店内でゆっくり食事ができる。


出石町のシンボルである時計塔「辰鼓楼」

 

出石町を訪れたなら、“但馬の小京都”と呼ばれる風情ある町並みもぜひ散策したい。

 

 

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秋から春だけに食べられるごちそう「坊勢鯖」

 

姫路まえどれ市場

 


海と山。その地の自然ならではのローカルグルメは、ちょっと贅沢

 

坊勢漁協漁業協同組合が直営する「姫路まえどれ市場」は、水揚げされたばかりの魚介を生きたまま販売する大型フィッシュモール。選んだ魚を刺身にして持ち帰ることも、BBQコーナーで焼いて食べることもできる、新鮮な魚介を味わうための施設だ。館内にある「まえどれ食堂」には、旬の魚をつかった海鮮料理がそろう。

 


 

11月から春にかけては、「坊勢(ぼうぜ)鯖」が旬を迎える。坊勢鯖とは、播磨灘に回遊してきた天然の真鯖を巻き網で漁獲し、さらにおいしくなるように約半年海上のいけすで養殖したブランド魚。まえどれ食堂では、時期を迎えると坊勢鯖の刺身なども味わえる。鯖は足がはやいため生では食べないが、新鮮だからこその貴重な体験。弾力のある身、甘い脂を満喫しよう。

 

 

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ジューシーな猪(いのしし)肉の旨みを存分に堪能できる、篠山のぼたん鍋


 

兵庫県の中東部に位置する丹波篠山市には「ぼたん鍋」という、猪肉の鍋を食べる文化がある。今も郷土の味として愛され親しまれている篠山が誇るソウルフードだ。

 

猪肉はサクッとした食感の脂に重たさはなく、赤身は風味豊かなのが特徴だ。肉を薄く切り牡丹の花のように盛り付けたことから、ぼたん鍋と呼ばれるようになったのだそう。

 

 

丹波篠山囲炉裏料理いわや

 

丹波篠山市内では数多くの料理店でぼたん鍋を提供する。「丹波篠山囲炉裏料理いわや」は茅葺き屋根と囲炉裏という、昔ながらの日本家屋が出迎えてくれる。

2代目店主、岩本和也(いわもとかずや)さんは米や料理に使う野菜を自分で生産。篠山は稲作も有名なエリアだが、彼の作る自家製コシヒカリはその風味も食感も別格。数多くのコンクールで賞を獲得している。

 

 

猪肉も全て自身の目で選び抜き、素材にも味にもこだわりぬいたぼたん鍋を提供する。年中行事の一つとしてこの店を訪れるというファンも多い。「山と共に生きる」という店主の想いが詰まったぼたん鍋をぜひ、味わってほしい。

 

 

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茶房 大陸
http://www.tairiku-cake.jp 

姫路まえどれ市場
https://boze.or.jp/shop 

本家かつめし亭
https://katumesitei.com 

明石 魚の棚商店街
https://www.uonotana.or.jp 

あかし多幸
http://www.akashiyaki.ne.jp 

酒饌亭 灘菊かっぱ亭
https://www.nadagiku.co.jp/?mode=f23 

揖保乃糸 資料館 そうめんの里
https://www.ibonoito.or.jp 

さらそば 甚兵衛
http://www.jinbe.com/en/
https://visitkinosaki.com/tour-packages/soba-making-activity/ 
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丹波篠山囲炉裏料理いわや
https://www.iwaya-yosaku.com