兵庫の豊かな自然や多彩な文化に親しむ、サステナブルに触れる旅

兵庫の豊かな自然や多彩な文化に親しむ、サステナブルに触れる旅

多様な風土に恵まれ、「日本の縮図」と称される兵庫県。世界的にも稀少なコウノトリの生息地をはじめ、淡路島の豊かな自然を五感で楽しめる禅施設や農家レストランなど、その土地ならではの文化や食、生態系に触れながら、心身を癒す旅が叶う。西脇市の伝統産業「播州織」から生まれた着心地のいいウエアなど、おみやげにしたいメイドイン兵庫の品も紹介。

 

 

人とコウノトリが共生するサステナブルな町・兵庫県豊岡市

 

人工巣塔に舞い降りたコウノトリ

 

化学肥料や殺虫剤の使用により、コウノトリの餌になるカエルなど、田んぼに棲む生物がいなくなった結果、一度は日本から姿を消したコウノトリ。最後の生息地であった兵庫県豊岡市では、世界でも例を見ない「野生復帰推進計画」を2003年にスタートし、肉食で大食漢のコウノトリが生きていけるよう、河川や農地、里山など自然全体を再生するプロジェクトに取り組み、2005年にコウノトリの野生復帰を成功させた。

 

多くのコウノトリが暮らす「兵庫県立コウノトリの郷公園」

2024年8月時点で、国内の野外で生息しているコウノトリは400羽に達し、豊岡市内の田んぼや円山川流域、「豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地」でも頻繁に見かけることができる。野外のコウノトリは見られない時期もあるが、「豊岡市立コウノトリ文化館」(https://kounotoribunkakan.com/)では、一年を通じて公開飼育中のコウノトリが見学できる。

 

コウノトリ育む米を使った「玄武洞かご手まりむすび膳」

 

コウノトリの野生復帰を支える「コウノトリ育む農法」により、農薬に頼らず栽培されている「コウノトリ育むお米」もぜひ味わいたいサステナブルフードだ。
英語ガイド付きの「コウノトリ野生復帰を知るツアー」では、コウノトリに出合えるスポットを巡り、「コウノトリ育むお米」を使ったランチが味わえる。
豊岡や城崎温泉に泊まれば、コウノトリに出合えるチャンスが増えそうだ。

 

 

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自然循環のなかで育った淡路産のブランド野菜が主役の農家レストラン

 

農家レストラン「陽・燦燦(はるさんさん)」

 

瀬戸内海東部に位置する淡路島は、食料自給率が100%を超えるほど食が豊かな島でもあり、タマネギ、レタスなどの野菜や、牛肉、牛乳、鯛、鱧など、全国的に有名な農畜産物の宝庫。そんな淡路島で、「本当の豊かさは食にある」という考え方のもと、2021年にオープンしたのが「Awaji Nature Lab&Resort」。淡路島北部の約3万8,000㎡の広大な土地を活かした自然循環型ガーデンだ。

 

「陽・燦燦」の店内。

 

敷地内には、循環型農業で野菜を育てる畑のエリアがあり、そこで育てた野菜を食べる農家レストラン「陽・燦燦(はるさんさん)」がある。

 

究極のファームトゥテーブル(農場から食卓へ)を目指しているという農家レストラン「陽・燦燦」は、畑のなかを歩くとたどり着く。店舗は、プリツカー賞を受賞した坂茂(ばん・しげる)氏が設計。紙管を使った災害時の復興住宅で知られる坂氏が、伝統的な茅葺き技法を生かしつつ、これまで開発してきた再生紙を使った紙管構造と最小限の木を用いたハイブリッド構造を採用。しっかりした構造でありながら、環境に配慮した軽快なクラフト空間となっている。

 

 

 「陽・燦燦セット」

 

一番人気は「陽・燦燦セット」。「野菜が主役」がお店のコンセプトだけあって、一皿に約16種類の旬の野菜が盛られた前菜サラダは、色鮮やかで盛りだくさん。野菜の特徴に合わせて一つひとつ調理を変えているので、食感の変化が楽しめる。野菜本来のうまみを引き出す仕上げには、淡路島産の塩を振って。スープは、野菜の残さをペーストにしてとろみをつけたガスパチョ。規格外品のトマトとニンジンが効いた濃厚な味わいだ。淡路牛をふんだんに使った生パスタボロネーゼも美味。

 

今後は、レストランの前に「農のある暮らし」を体験できる11棟の宿泊施設もオープンする。それぞれ違うデザイナーが設計したユニークなコテージには畑が併設されていて、宿泊しながら健康や環境に配慮した次世代型農業体験ができる。

 

 

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大自然の中で心身を解き放つマインドフルネス体験

 

寺社仏閣のような神聖な雰囲気が漂う木造の建物

 

淡路島の豊かな自然の中に誕生した禅リトリート施設「禅坊靖寧(ぜんぼう せいねい)」。設計を手がけたのは、こちらも建築家・坂 茂(ばん しげる)だ。彼はパリの「ポンピドゥー・センター・メス」や「静岡県富士山世界遺産センター」など、木材を現代建築に組み込むことにおいて世界的に注目されている。

 

 

日本の標準時子午線である東経135度線上に横たわる斬新な建物は、日本杉を組み合わせて作られた全長100mのウッドデッキが圧巻。1階はラウンジと全18室の宿坊、共有スペースのサロンで構成され、2階のウッドデッキは禅や瞑想、ヨガなどが体験でき、体だけでなく心も整うサステナブルな時を過ごせる。

 

発酵醸造料理人が監修した「禅坊料理」

 

食事付きのプランでは、日本の食文化「発酵」を大切に、動物性食材や小麦粉、油、砂糖を使用せず、体への負担が少ない優しい「禅坊料理」を提供。
360度に広がる淡路島の景色を眺めながら、日常を忘れて心と体をリセットしよう。

 

 

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未来につなげたい、SDGs型の農業を知る収穫体験・散策ツアー

 

収穫直前のたまねぎ畑

 

2025年大阪・関西万博の開催に向けて、兵庫県では県全体をパビリオンに見立て、地元の人たちが地域の魅力を発信する「ひょうごフィールドパビリオン」を展開している。そのなかで淡路島のフィールドパビリオンは19あり、そのうちのひとつに淡路島玉ねぎのふるさと!南あわじ市日本農業遺産ツアー」がある。

 

 一つの集落に、大きな牧場を囲むように農地がある。

 

日本農業遺産に認定されたこの農業の特徴は、100年以上前から続いている稲作とたまねぎ栽培の二毛作、そして畜産との連携による生産循環型システムだ。水稲作で生産された稲わらを飼料として乳牛に与え、その牛糞を堆肥化して農地の土壌改良を行っている。

それにより、独特の景色が形成されている南あわじエリア。特徴は、水不足解消のために1700年前から作られている「ため池」、収穫したたまねぎを太陽と乾いた風とで乾燥させて貯蔵する「たまねぎ小屋」、家の門の中に牛小屋を設けた「長屋門のある屋敷」など。おいしい自然の空気を吸いながら、伝統的な生産循環システムが残る集落ならではの景色を歩いて堪能するのも、このツアーの醍醐味だ。

 

 

日本三大瓦の一つ、淡路瓦が使われている「たまねぎ小屋」もある。

 

収穫時期のツアーでは、実際にたまねぎ畑に入って農家さんと一緒に収穫し、採れたての甘いたまねぎを生で食べることができる。集落を散策した後はたまねぎジャムを作り、シフォンケーキと近所の牧場の搾りたて牛乳で作ったジェラートに、そのジャムをかけて食べる。

 

ツアーは約2時間、一日1組5名まで。

 

苦味がなく甘い淡路島たまねぎをほおばりながら、そのおいしさを作る南あわじ独特の風景を思い浮かべると、より一層味わい深い。極上のスイーツタイムだ。

 

 

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地球にやさしい天然素材。18世紀から続く色鮮やかな播州織(ばんしゅうおり)

 

 

播州織(ばんしゅうおり)は、主に兵庫県西部、西脇市や加東市などがある播州地方で生産されている伝統的な綿織物で、その歴史は18世紀後半までさかのぼる。

 

播州織の糸

 

糸を先染め(さきぞめ)をするのが播州織(ばんしゅうおり)の特徴。これにより鮮やかで深い色を表現できる。

 

 

 

染色のアーティストが一つひとつ染め上げるオリジナルの色糸

 

糸だけでなく、染料にも天然の原料が使われることもあり、地球にやさしい素材で作られている。肌触りもよい素材は、衣類や日用品など幅広く活用されてきた。

 

「tamaki niime」店舗

 

現在、この技術を引き継ぎあらゆる播州織の技術を活用した作品を製作・販売しているのが西脇市にある「tamaki niime」だ。ショールやワンピース、ロングシャツなど豊富なアパレルを展開しているので、ぜひ足を運んでほしい。どの作品も「世界に一つ」だけの一点もの。デザイン、生産、加工、販売まで一貫して社内で行うこの会社には、伝統工芸の歴史を次世代に紡ごうという若い社員も多い。

  

「tamaki niime」で飼われている羊

 

「tamaki niime」では、綿を育てたり、素材の原料となる毛を取るために羊やアルパカを飼ったり、全ての素材、資材も自分たちで賄うサステナブルなプロジェクトも行っている。

 

 

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コウノトリの郷公園
https://satokouen.jp/en/
https://visitkinosaki.com/tour-packages/oriental-white-stork-observation-tour-with-private-english-guide/

 

コウノトリ野生復帰を知るツアー
https://visitkinosaki.com/

 

農家レストラン「陽・燦燦」
https://www.awaji-nlr.com/

 

禅坊靖寧
https://zenbo-seinei.com/en/

 

サザンバード「淡路島玉ねぎのふるさと!南あわじ市日本農業遺産ツアー」
https://www.instagram.com/southernbirdsawaji/

 

tamaki niime
https://www.niime.jp/