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神戸の魅力を探る: 多様なテーマで楽しむミュージアムガイド
世界とつながる玄関口として日本の近代化を支えた国際港湾都市・神戸。神戸市は、中華街や異人館があり異国情緒が漂う街です。また、古くから盛んな酒造りや職人の高い技術、神戸ビーフをはじめとする美食など、多くの魅力が詰まった街でもあります。そんな神戸という街を深掘りできる、とっておきのミュージアムをご紹介します。
1743年創業、世界を見てきた神戸の酒蔵「白鶴酒造資料館」
日本での食の楽しみの一つが「日本酒」です。御影郷にある「白鶴酒造資料館」は、伝統的な酒造りの工程や歴史を学びつつ、試飲やショッピングも楽しめるスポットです。
エントランスには「白鶴」と描かれた酒樽と杉玉があり、杉玉には「おいしいお酒ができるように」という願いが込められています。この資料館は「本店一号蔵」として知られ、かつて酒蔵として使われていた建物を利用しています。
白鶴の蔵は「前蔵」と「大蔵」の2つで構成され、前蔵ではお米を洗ったり蒸したりし、職人たちの生活の場でもありました。北側に面した大蔵では、お酒の仕込みと約半年間の貯蔵 のためにあるもの。北側に窓を設けることで、神戸のすぐ北に位置する六甲山系から吹き下ろす冷たい風「六甲おろし」が、発酵を邪魔する菌を減らしてくれ、味の良い日本酒ができあがるのです。
白鶴がある御影郷を含む「灘五郷」は、日本を代表する酒どころとして知られています。酒米の「山田錦」、ミネラル豊富な六甲山系の伏流水、酒造りの技術を持った「丹波杜氏」の存在が、酒造りの発展を支えました。
政治や商業の中心地であった 江戸へ、船をつかった輸送ができた点も、発展の理由と言えそうですね。
また、明治時代(1868-1912)に西洋文明を取り入れた日本は、国際博覧会で自国の文化を紹介しました。その中で白鶴は1900年のパリ万博で新しいラベルを発表し、国内外で知名度を高めました。この国際的な認知度の向上により、白鶴は日本酒の品質と魅力を世界に広める先駆者となり、現在では日本酒の輸出量No.1ブランドとして国際的に評価されています。
展示を見終わったあとは、1階にある試飲コーナーで季節のお酒を楽しむことができます。同じく酒造りの街として知られる京都の伏見でできるお酒と比較して、「灘の男酒」といわれる神戸の日本酒。すっきりとした辛口の味わいが特徴でどれも美味しくいただけます。
この味わいはミネラルによるもので、海からのミネラルを含んだ雨が六甲山系に降り、地下水となったためと言われています。まさに、神戸という土地柄を反映した日本酒を言えますね!
アルコール飲料やグッズなど100種類ものお土産が並ぶショップも必見。甘酒でつくった酒蔵ソフトクリームも美味ですよ!
館内にはQRコード(6箇所)を読み込んで表示される英語の解説や、英語での酒造りの説明もあるので、ぜひ参考にしてください。
港町神戸で味わうチョコレートの歴史: 西洋文化と共に進化した洋菓子の街
ミュージアム内に足を踏み入れると、ふわりとチョコレートの良い香りが。見学しているだけで、幸せな気分になる(なんだかお腹も空いてくる)こちらは、新港町にある「felissimo chocolate museum」です。
「神戸から新しいチョコレート文化を発信する」というコンセプトで2021年10月にオープンした館内には、ショコラティエの想いや創造性が表現された世界中のチョコレートパッケージが展示されています。
宝箱のような上品で洗練されたデザインもあれば、思わず「かわいい!」と手に取りたくなるキュートなデザインまで様々なパッケージがあり、見ているだけでワクワクします。
途中には書籍コーナーもあり、椅子に座りながら、古今東西のチョコレートに関する書籍を読むこともできます。様々な蔵書を見ているだけで、チョコレートというものがどれだけ特別で多くの人に愛されて来たものかが分かりますね。
読書コーナーを抜けると、そこには1万5千点以上の世界中から集めたチョコレートのパッケージコレクションがズラリ。50ヶ国、500ブランドもの様々なパッケージ。自分の国のものやお気に入りを探してみるのも面白そうです!
余談ですが、日本のバレンタイン文化(日本では、一般的に2月14日に女性が好きな相手にチョコを渡し、3月14日に相手がお返しをするといった習慣がある)も神戸で生まれたと言われています。神戸に本社を置くモロゾフ社が、海外のバレンタイン習慣に感銘を受け、1932年に本物の美味しさにこだわったバレンタイン用のチョコレートを世に送り出したのがきっかけなんだとか。西洋文化が花開く、港町・神戸ならではのアイデアですね!
1868年の開港を契機に神戸には居留地が誕生し、西洋の文化が入ってきました。この影響で、洋菓子の街としての神戸のブランドが確立され、多様なチョコレート文化が根付くことにもなりました。その伝統が今も息づく神戸のチョコレートは、世界中の人々に愛されています。
展示を楽しんだあとは、ミュージアムショップでお気に入りのチョコレートやグッズを探してみるのはいかがでしょうか?ここでしか購入できない限定商品なども発売されているので、要チェックです!
「竹中大工道具館 」で職人の技に触れる
新神戸駅に近い「竹中大工道具館」は、日本で唯一の大工道具の専門博物館。緑に囲まれた館内に入ると、これまでの喧騒が嘘のような気持ちの良い空間が広がっていました。
受付のある1階ホールには、家具作家16人による様々な椅子がズラリ。座ってみると、肘掛けがジャストフィットする椅子や、座る面が体の形に合わせて丁寧に加工されているものなど「ここにずっと座っていたい!」と思えるような椅子ばかり。入館前から、職人の技術の高さに舌を巻きます。
1960年代から1970年代のはじめ、電動工具が急速に普及していったなかで手道具としての大工道具や、それを使った職人の技が途絶えてしまわないように」という考えの元に1984年に生まれたのが「竹中大工道具館」です。
3万点を超える収蔵品のなかで1000点程が常設展示されています。建物の設計・施工は竹中工務店によるもので、よく見ると、美しい曲線を描く天井の木組みや、手仕事の土壁、一枚板を贅沢に使用した階段など建物自体も見どころいっぱいです。
受付を終えて中に入ると、地下の展示空間に繋がる構造。階段を降りると迫力のある唐招提寺の金堂の柱の原寸大模型が現れます。
お寺にある実物は下から眺めるだけですが、こちらでは横から詳細な組み方を見ることができるのが大きなポイント。釘をいっさい使わず、147のパーツを組み合わせて造られているのは驚きですね。ビデオでの説明映像も合わせてチェックしましょう。
唐招提寺を始めとした、素晴らしい木造建築が数多くある日本。その背景には、職人の教育システムや、建築にかけるこだわりの凄さがあります。館内には、当時の建築作業の現場を描いた絵巻物や、見習い大工が読んだ教科書、バリエーション豊かな大工道具などが展示されています。
各所で最適な道具を求めていった結果、最盛期には1人の大工が100を超える道具を持つほどになり、途中からは道具を整備するための道具まで生まれ、道具の迷宮に迷い込みそう。
カンナへのこだわりもすごく、1000分の何ミリタイプのカンナ屑をみるだけで、その技の凄さが伝わってきます。
余談になりますが、日本と海外ではカンナを掛ける方向が異なります。お隣の中国や西洋諸国ではカンナを「押す」のに対して、日本では「引く」のが一般的。理由は、諸説ありますが、包丁や日本刀が引いて切ることがカンナでも同じという説や、「より綺麗に削りたい」という職人のこだわりがあったとも言われています。
館内には内部へ入ることもできるスケルトンの茶室や、10種類ほどの色合いの木を組み合わせた精緻な組子細工なども展示され、職人の仕事ぶりを見ることができます。
引きで見ると見事な山並みの風景が現れる組子細工を眺めていると、日本の職人の細やかさや、美を追い求める精神に感服せずにはいられません。
他にも、実際に手にとって匂いを嗅ぐことができる様々な木材のカンナ屑を展示したコーナーもあるので、ぜひ五感で日本の職人技や建築の歴史を感じましょう!
「神戸ビーフ館」で神戸ビーフの魅力に迫る!
神戸に来てぜひ食べたいものと言えば、神戸ビーフ。新神戸駅から徒歩2分ほどの場所にある「神戸ビーフ館」は、神戸ビーフの知識を深めつつ、おすすめのお店の検索や、シェフが目の前の鉄板で焼くステーキを味わえるスポットです。
館内には、お肉のサシの入り方を表した模型や、神戸ビーフの生産過程や認定基準について詳細に説明する展示があり、日本の和牛のなかでもトップクラスの知名度を誇る神戸ビーフの美味しさの秘密について知識を深めることができます。
神戸ビーフは神戸牛とも言われますが、実は生きている神戸牛は存在しません。兵庫県内だけで飼育される但馬牛(たじまうし)という黒毛和牛がお肉になったものを但馬牛(たじまぎゅう)と呼び、但馬牛のなかでも肉質や枝肉重量などを基準に選ばれたものが神戸ビーフや神戸牛として市場に販売されます。
神戸ビーフの美味しさは何と言っても肉の「甘み」と「香り」。きめ細やかなサシによる口のなかで溶けていくかのような食感と、香り高くほんのりと甘みを感じる味わいは世界中の食通を唸らす美味しさです。
館内には、焼き立ての神戸ビーフを味わえるレストランが設置されています。
レストランで人気なのが「ヘレとロースの食べ比べ」。脂肪の美味しさを楽しめるロースと、柔らかくお肉の味わいを堪能できるヘレを一緒に味わうことが出来る贅沢なメニューです。神戸に来たら、ぜひ美味しい神戸ビーフを楽しんでくださいね!
まとめ>
神戸のミュージアム巡りを通じて、この街の多彩な文化や歴史を深く理解することができました。それぞれの施設が提供するユニークな体験は、神戸の魅力を五感で感じる貴重な機会となります。これらのミュージアムは、単なる観光では得られない深い知識と感動を提供してくれます。神戸に訪れる際は、ぜひ時間をかけて各ミュージアムをじっくりと巡り、この街の奥深い文化を体感してみてください。
白鶴酒造資料館
住所:〒658-0041 兵庫県神戸市東灘区住吉南町4-5-5(Google map)
営業時間:9:30〜16:30
定休日:なし
サイト: https://www.hakutsuru.co.jp/english/culture/museum.html(英語)
フェリシモチョコレートミュージアム
住所:〒650-0041 兵庫県神戸市中央区新港町7-1, Stage Felissimo, 2F(Google map)
営業時間:11:00〜18:00
定休日:なし
サイト: https://www.felissimo.co.jp/chocolatemuseum/top_fcm.html(日本語のみ)
竹中大工道具館
住所:〒651-0056 兵庫県神戸市中央区熊内町7-5-1(Google map)
営業時間:9:30〜16:30
定休日:月曜
サイト: https://www.dougukan.jp/?lang=en(英語)
神戸ビーフ館
住所:〒650-0002 兵庫県神戸市中央区北野町1コトノハコ神戸 3F(Google map)
営業時間:11:30〜15:00(LO14:00)、17:00〜20:00(LO19:00)
定休日:月曜・火曜(祝日の場合は翌日)
Date : 2024.08.12