日本酒のルーツを求めて~灘・日本酒三昧の旅

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日本酒のルーツを求めて~灘・日本酒三昧の旅

日本酒の製造量トップを誇る兵庫

 

和食ブームとともに、世界的に人気が高まっている「日本酒」。その華やかな香りと芳醇な味わいは、和食はもちろんのこと、さまざまな料理の味を引き立てる飲み物として注目されている。日本酒は味や香りが商品ごとに異なるのはもちろんだが、1つの日本酒を冷たくしたり温かくしたりと、温度を変化させることでも味の違いを楽しめる。これほど幅広い楽しみ方のある酒は、世界的に見てもめずらしいだろう。

 

日本酒は日本各地で製造されているが、製造量1位を誇るのが兵庫である。兵庫には灘、播磨、丹波、但馬などの生産地があり、特に灘には日本の有名な酒蔵が集まっている。日本酒好きの方なら一度は耳にしたことがあるかもしれない「白鹿」「白鷹」「日本盛」「大関」など、すべて灘にある酒蔵で造られた日本酒だ。

 

では、なぜこれほど灘に酒蔵が集まっているのか? その理由は灘を訪れてみるとわかるはずだ。

 

155年前に建てられた酒蔵。現在は博物館になっている(酒ミュージアム:白鹿記念酒造博物館)

 

 

日本酒の原料として欠かせないのは米、水、そして日本酒のうまみの元となる米こうじ。日本酒に適した最高の米と最高の水が組み合わさってこそ、最高の日本酒が生まれると言えるだろう。

 

日本酒で使われる米は日本人が主食として普段口にしている米とは違い、日本酒づくりに向くように品種改良された酒米が使われる。この酒米の王様ともいわれるのが、兵庫で生まれた「山田錦」だ。毎年行われている新酒鑑評会の最高賞である金賞を受賞する日本酒の約9割が「山田錦」を使っていることからも、その良質ぶりがうかがえる。現在も「山田錦」の生産量の6割は兵庫だ。

 

銘酒と評される酒の多くに使われている「山田錦」

 

さらに「水」。日本酒造りに適した名水の一つに「宮水(みやみず)」とよばれる水がある。本来は「西宮の水(にしのみやのみず)」という意味で、西宮市にある西宮神社にほど近い一角だけから湧き出ている。

 

この水は1840年ころ、酒造業を営む主人によって発見された。この主人は西宮と神戸市魚崎で酒を造っていたが、いつも西宮の酒の方がよいお酒だった。そこで西宮の水を魚崎に運んで造ったところ、同じお酒ができたことから、水のよさに気づいたのだという。

 

現在も、宮水を発見したとされる場所には「宮水発祥の地」の石碑が残されている。さらにその近くでは大関、白鹿、白鷹の酒蔵3社の宮水井戸が「宮水庭園」として整備され、外からその庭園を見ることが可能だ。

 

「宮水発祥の地」と宮水の井戸を整備した「宮水庭園」

 

日本酒を飲んで、学んで、グラスを作る

 

この宮水庭園に井戸がある「白鹿」を造る酒蔵が、宮水庭園から10分ほど歩いたところにある辰馬本家酒造。1662年に創業、360年以上の歴史を誇る老舗だ。酒ミュージアム(白鹿記念酒造博物館)は同社の創業320年の記念事業として1982年に開館し、、実際に酒造りに使われていた道具や酒樽などを展示。灘の伝統的な日本酒造りの工程を学ぶことができ、当時の映像も楽しめる。英語の解説・パンフもあるため、スムーズに理解できるだろう。

 

 

酒ミュージアムで日本酒造りを学ぶ

 

酒づくりについて学んだあとは、日本酒とランチを楽しもう。
酒ミュージアムの道をはさんだ向かいに、酒蔵直営のレストラン「白鹿クラシックス」がある。ゆったりとした空間で、日本の伝統的な食べ物であるそばや、花がそえられた小鉢など、見た目も美しい料理の数々を堪能できる。もちろん、「白鹿」などの日本酒も一緒に。

 

 

レストランには個室も。ショップではここでしか味わえない原酒も販売

 

食後は、酒蔵を経営する蔵元の暮らしをのぞいてみてはどうだろう。
同じく宮水庭園に井戸がある「白鷹」が「白鷹禄水苑」という施設を構えている。ここでは伝統的な日本家屋である白鷹の蔵元の住居を再現している。1800年代後半に実際に使われていた、現代の日本ではなかなか目にすることができない家具などもあり興味深い。また、ショップではワンショット200円で日本酒の試飲も可能だ。

 

第二次世界大戦の戦災を免れた道具を展示

 

白鷹禄水苑から酒蔵通りを7分ほど歩くと「日本盛」が運営する「酒蔵通り煉瓦館」が見えてくる。ここでは日本酒を飲むグラスを作ってみよう。ガラス工房を併設しており、約1000度に溶けたガラスを吹いてタンブラーなどを作ることができる。スタッフがサポートしてくれるので、初めての人でも安心だ。世界に一つだけのオリジナルグラスで、乾杯しよう。(要予約)

 

 

吹きガラスで造ったものは3~4日後にホテルに送ってもらうことができる。

 

酒蔵通り煉瓦館から酒蔵通りをさらに10分ほど歩くと、「大関」のアンテナショップである「甘辛の関寿庵」へ着く。大関は海外でも人気のカップ酒の元祖で、日本酒を使ったまんじゅうやカステラも販売している。100円で日本酒の試飲もできるので、味わってから買えるのもうれしいところ。ちなみに会社名の「大関」とは相撲道に由来し、大相撲の優勝力士には銀製の大杯「大関杯」を送っている。

 

さまざまな種類の日本酒が並ぶ

 

締めくくりは温泉で疲れをいやして

 

日本酒の旅の1日をしめくくるなら、少し足をのばして、有馬温泉へ。褐色の「金泉」と、無色透明な「銀泉」の2つのお湯が楽しめる歴史ある温泉だ。疲れた体をお湯でいやした後は、日本酒とこだわりの料理を。
四季折々の表情をみせる豊かな自然に囲まれた温泉街を散歩するのもおすすめだ。

 

 

無料で楽しめる足湯もある ©KOBE TOURISM BUREAU

 

●宮水発祥の地
https://www.hyogo-tourism.jp/feature/jheritage/09/

 

●白鹿記念酒造博物館(酒ミュージアム)
https://www.hyogo-tourism.jp/spot/0207

 

●白鹿クラシックス
https://classics.hakushika.co.jp/

 

●白鷹禄水苑
https://www.hyogo-tourism.jp/spot/0208

 

●酒蔵通り煉瓦館
https://www.hyogo-tourism.jp/spot/0206

 

●甘辛の関寿庵
https://sekijuan.ozeki.co.jp/

 

●有馬温泉
https://www.hyogo-tourism.jp/spot/0110

 

●ひょうごフィールドパビリオン:「灘五郷」でSDGs を体験~世界で最も有名な日本酒の銘醸地を味わい尽くす~
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/program/19

 

●ひょうごフィールドパビリオン:「西宮郷・今津郷」SAKEツーリズム ~灘の酒造産業を支える奇跡の「宮水」と受け継がれる日本酒文化×SDGsを体感~
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/program/12

 

●ひょうごフィールドパビリオン:日本一の酒米「山田錦」発祥のまちゴールデンプロジェクト
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/program/107

 

●ひょうごフィールドパビリオン:目いっぱい楽しむ山田錦
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/program/64

 

●ひょうごフィールドパビリオン:酒米の王者山田錦テロワールツーリズム
https://expo2025-hyogo-fieldpavilion.jp/program/92