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家庭料理の“おいしい”を篠山産で、ハレの日でも。
丹波山地に囲まれた篠山盆地では、盆地特有の寒暖差や、秋から冬にかけて立ち込める深い霧、栄養を蓄えた粘土質の土壌などの恵まれた自然条件により、山や畑の逸品が数多くある。そんなポテンシャルの高い篠山産の食材をメインにしたコース料理を提供するのが、2020年4月にオープンした「山里料理まえ川」だ。
オーナーは前川友章(まえかわともあき)さん。京都で12年ほど、懐石料理の修行を積んだ後、生まれ育った丹波篠山に戻り、城下町にある築150年の町家をリノベーションして店を構えた。
料理の原点は、子どもの頃に食べたおばあちゃんのきんぴらだ。 「味付けはしっかりしているのにゴボウの風味がして、とてもおいしかったんです。料理人になって高級料理を食べたりしても、あの時のおばあちゃんの料理の感動が忘れられなくて。都会だからとか田舎だからとかそういう区別なく、丹波篠山を、ふるさとのように思い出してもらえる"丹波篠山料理"というお店があってもいいんじゃないかと思いました」 と、前川さんは語る。
「まえ川」が佇む立町は、老舗店や江戸末期の名建築が残る城下町。
前菜のトマトと鱧の子の玉子寄せ
メニューには「トマト」とのみ記載。「主役の目線を変えて、メインで楽しんでもらいたい素材を書いています。ほかにもいろいろ入っているんですが、ちょっとだけ想像して楽しんでいただけたら」と前川さん。
玉子豆腐とイノシシのお吸い物。
ジャガイモの白味噌和えとシカの自家製ハムに、畑で採れたハーブを添えたもの。
獣害による農作物の被害は、まちの深刻な課題だ。「まえ川」では、イノシシやシカも篠山産の食材として積極的に使う。「ジビエの獣臭が苦手な方もいらっしゃるので、味付けはひと工夫します」。
「今でも料理で迷うことがあると、おばあちゃんだったらどうするかな?と考えますね」。
蒸しナスと蒸し穴子で、生姜が入った白玉を巻いたもの。
ズッキーニとヤングコーンとウリの雷干し、それと鱧のゼリー寄せ。トマトと梅肉を赤ワインで煮詰めたソースをかけて。食感を楽しむ一品。
赤玉ねぎと赤紫蘇の酢漬けに父親の畑で間引きしたジャガイモ、それらと子どもの猪を大葉味噌と合わせて食す。
コースの締めくくりは、丹波焼の土鍋で炊いた天日干しの米と、黒豆のお味噌汁、漬物の3点セット。漬物は自家製で高菜、菊芋、たくあん、梅干し、誉め味噌。
誰もが持つ心の原風景が見える味を、篠山料理で表現したい
料理は四季折々のおまかせコース料理で、ランチは2つ、ディナーは3つから選べる。
一連のコース料理では、全てが丹波篠山産。前川さんの幼馴染が近くの山で狩猟した猪や鹿を、調理場の奥で血抜きをし低温調理した自家製ハムに、畑で採った朝どれハーブを添えたり、父親と作った天日干しのコシヒカリを土鍋で炊いて、自作の竹の器に自作の漬物を数種並べたり。素材や調理はアットホームでありながら、ハレの日にも合う色とりどりの美しい盛り付けは、まるで篠山のまち全体で歓迎の意を表しているかのよう。
「食事を終えたお客さまが“やさしい味だったね、おいしかった”と言ってくれると、うれしくなります」
篠山のまちに訪れたときは、ぜひ“山里の料理屋”に遊びに来て、篠山の大地の歓迎を受けながらホッとするひと時を過ごしてほしい。
中庭を臨む個室。個室は4つあり、全てテーブル席。
山里料理 まえ川
住所:兵庫県丹波篠山市立町93
電話:090-2065-4595
営業時間:11 : 30~15 : 00(LO13 : 30)、17 : 00~22 : 00(LO19 : 00)
定休日:月曜日(祝祭日の場合は翌日、ほか臨時休業あり)