あずきのイメージが変わる!?あずきで“おいしい発見”ができる姫路の「あずきミュージアム」へ行ってきました!
皆さん、こんにちは!兵庫県立大学環境人間学部の3年生です。突然ですが──「あずき」って、皆さんはどんなイメージがありますか?
「和菓子の定番だ」「甘すぎる」「おばあちゃんの味」…なんて思う方もいるかもしれません。でも、ちょっとだけ思い出してみてください。子どもの頃、お家で食べたあんこ入りの今川焼。お祝い事のお赤飯。寒い冬にホクホクしながら食べたぜんざい。あずきって、ひっそり私たちの暮らしのそばにいたんですよね。
実は私自身、昔はちょっぴり苦手だったんです。「和菓子ってなんだか大人っぽいな~」と、ぜんざいやおはぎをなんとなく避けてきた子供時代。でも大人なってからふと食べた今川焼きのあずきに、
「あれっ、こんなに優しい甘さだっけ?」
と驚いて。そこから一気に、あずきのとりこに!
こんなふうに、それぞれのあずきストーリーってきっとありますよね。ちなみに私たち取材チームでは“あずき3姉妹”なんて呼び合っています!
・長女は、素朴で安心感のある「おはぎ」派。
・私(二女)は、甘じょっぱさがクセになる「いとこ煮」派。
・三女は、蒸気までごちそうな「お赤飯」派。
そんな“あずき愛”を胸に、今回は兵庫県姫路市の「あずきミュージアム」へ行ってきました。ここはただ展示を見るだけじゃなく、実際にあずきを使った調理体験もできるので、子ども連れのご家族にもおすすめのスポットです。また、あずき好きにはたまらないのはもちろん、「あずきってちょっと苦手かも…」という方でも楽しめる工夫がたくさん詰まっていました!
あずき世界への入り口へ
実はこの「あずきミュージアム」は、姫路発祥の回転焼き「御座候(ござそうろう)」で知られる会社が運営している施設なんです!2009年に開館し、縄文時代から続くあずきの歴史や文化を子どもから大人まで楽しく学べる場所となっています。
その「あずきミュージアム」を運営する御座候は、1953年(昭和28年)創業。70周年を迎えた今も、職人が一つひとつ丁寧に焼上げる味は変わらず、昔から変わらぬ庶民の味として親しまれています。懐かしさと安心感を与える姿は、「姫路といえば御座候」と言われるほど地元に愛されています。
私たちにとって身近な食材であるあずき。でも、意外と知らないことも多いはず。そんなあずきを深く知り、文化として伝えていくことを目指した、世界的にも珍しいあずきをテーマにした博物館です。御座候の製餡工場の見学や、あずきを使った調理体験など、楽しみながら学べる工夫が盛りだくさん!
あずきさん、豆太郎、豆次郎がお出迎え
館内に入ると、マスコットキャラクターの三姉弟「あずきさん」「豆太郎」「豆次郎」がにこにこ笑顔でお出迎えしてくれます。姫路駅から徒歩約15分とアクセスも良く、観光の途中にふらっと立ち寄るのにもぴったりなスポット。今回は、そんな「あずきミュージアム」で実際に体験した、調理体験の様子をご紹介します!
あずきミュージアムに足を踏み入れる前から、私の五感はフル稼働。というのも、建物の外までふわっと漂ってきた、あずきの香ばしい匂いに思わずにやけてしまったからです。お腹も「ぐぅ~っ」と鳴って、調理体験前から期待は高まるばかり!

今回つくるのは「あんマフィン」。2か月ごとに変わる体験メニューの一つで、和と洋が出会ったちょっぴり珍しいおやつです。
「和風のマフィン・・・!どんな味になるんだろう」
食べたことのない組み合わせのお菓子に、心がふわっとして、体も思わずリズムを刻みそうに。体の内側からじわじわとワクワクが込み上げてきました。
並べられた材料たち
エプロンを巻き、手を綺麗に洗ったら準備OK!さっそく調理体験開始です。調理台には、あんこ、牛乳、小麦粉、蜜豆、卵・・・あんマフィンに必要な材料がすでに測り置きされてスタンバイ。今にも香ってきそうな甘い予感に、私たちのやる気もぐんと盛り上がります!
まぜまぜ中!おいしくな~れ
指導して下さったのは、優しい雰囲気の名城さん。丁寧な説明を聞きながら、ボウルに材料を入れてまぜまぜ。
「小さな子どもでも安心して作れるように、工程がとってもシンプルなんですよ。」と名城さん。
でもここで、油断が一つ。
舞い散った粉
「材料混ぜるだけなら簡単!」と高をくくっていたら、小麦粉とベーキングパウダーをふるいにかけるときに、粉がボールを飛び出し、台の上に雪のように舞いました…。慣れほど怖いものはないと、1人反省会。初心、大事です。
つやつやの赤あん!
そして、いよいよ主役の“赤あん”が登場。このあんこ、なんと御座候の工場で作られたばかりのものだそう。まさかのできたて御座候あんこに、テンション爆上がり!
あとは焼くだけ!
生地が完成したら、マフィンカップに注ぎ、好みで密豆をトッピング。あとは、170℃のオーブンで約25分、焼き上がりを待つだけです。
調理にかかったのはたったの30分ほど。思った以上の手軽さに驚きながら、「おうちでも作ってみようかな」などと、名城さんとの会話も自然と弾みます。
「おいしそうな香り、してきましたね」と笑顔で声をかけてくれて、こちらまでつい笑顔に。ほどよい距離感と優しい気配りが、体験全体をふんわり包み込んでくれるようでした。
オーブンから広がる出来立ての匂いにはしゃぐあずき三姉妹
おしゃべりをしているうちに、部屋いっぱいに広がる甘く香ばしい匂い。オーブンの「チン」というできましたの合図が鳴った瞬間、全員の視線が一斉にオーブンへ。扉を開けると、湯気とともにふっくらと膨らんだあんマフィンたちが登場!
ふっくら焼き上がったあんマフィン
「わあ...!」と自然にこぼれる声。焼き立ての姿に、気づけばフォークを手に取っていました。
さあ、いざ実食。まず一口。外はサクッ、中はしっとり。あずきの優しい甘さが口いっぱいに広がって、思わずにんまり。時間が経つとさらにしっとり感が増すそうで、帰ってからも楽しめるのが嬉しいポイント。ただし、生ものなので、なるべく早めに食べるのがおすすめです。
いただきます!
「あずきって、こんなにも洋風にもなれるんだ___!」
そんな新しい発見とともに、私のあずきの世界が広がった気がしました!
あんマフィン作りであずきの新たな一面を知った私たち。もっとその魅力を知りたくて、あずきミュージアムのスタッフ・下坂さんにお話を伺いました。
『あずきって、どうしても“食べるもの”というイメージが強いですよね。でも、実際に触れて、自分の手で調理することで、もっと身近に感じてもらえるはずなんです。』
そう語ってくれた下坂さんの言葉からは、調理体験を通してあずきをもっと身近に感じてほしいという願いが伝わってきました。
実施メニューは2か月ごとに変わり、2年間でローテーションするそう。春は桜餅、夏は葛まんじゅうと季節感満載。しかも、小さな子どもでも作れるように、殆ど混ぜるだけで完成する工夫も施されています。「子ども連れのご家族にも安心して楽しんでもらえるように、スタッフで何度も試作を重ねているんです。」と教えてくれました。
さらに、あずきを“育てる”体験まであるんです。
「夏には、“あずきの祖先に会いに行こう”という企画として、あずきの野生種ヤブツルアズキの植え付け体験を実施しています。自分で育てたからこそ『苦手だったけど食べられた』という子どもの声もあって…そういう話を聞くと、本当に嬉しいですね。」
ぐんぐん成長するヤブツルアズキ
外に出ると、その体験で育てられたあずきがそっと置かれていました。子どもたちが、あずきの成長を見守っていく――それが、収穫の喜びをより強く感じさせているのではないでしょうか。
あずきミュージアムの館内をぐるりと見学してきた私が、「ここは見逃せない!」と思った見どころを3つご紹介します。
展示ブースの中でもまず注目したいのが、北海道・十勝で収穫された“エリモショウズ”のあずきを再現した巨大模型。なんと実際の10倍サイズで、約6mのあずきがどーんと展示されています。部屋に入った瞬間、その迫力に思わず「うわっ」と声が出てしまうほど!
10倍サイズでこんにちは!
2階からは真上からも眺められるようになっていて、どの角度から見ても迫力満点。しかも、子どもたちも楽しめるように“ある仕掛け”が…!なんと、どこかの葉っぱにナナホシテントウムシが隠れているんです!私たちも夢中になって探しましたが、これがなかなか見つからない…。ぜひ挑戦してみてください!
ナナホシさん探しに全集中する長女と二女。
次におすすめしたいのは、ミュージアム併設の工場ショップ。ここでは、御座候が焼き上がる様子を目の前で見られるだけでなく、出来立てをその場で味わうことができます。
鉄板上で繰り広げられる職人技に感動!
アツアツの御座候を一口かじると、中にはあんこがぎっしり!甘すぎず、ほどよくしっとりしたあんこは、まさに“あんこの玉手箱”といえる満足感です。あまりのおいしさに、気づけばぺろりと完食していました。
他にも、肉まんやジャンボ餃子、わらび餅といった思わず手に取りたくなる商品がずらり。なかでも夏季限定の「御座候アイスバー」は、赤あん・白あん・瀬戸内レモンピール入りのレモン×白あんなど、どれも御座候の味をひんやり楽しめる贅沢な一品でした。
そして何よりも衝撃を受けたのが、ここでしか食べられない「あずきソフトクリーム」!御座候のあんこをミキサーですり潰し、そのままソフトクリームに練り込んでいるとのこと。
ひんやりあずきソフトで一休み
口に入れた瞬間、ふわっと広がるあんこの風味。そして、ザラっとした独特の食感がクセになる美味しさです。甘さは控えめで、あずき本来の味が直接伝わってきます。これは、あずき好きにはたまらない一品です!
最後におすすめしたいのは、ミュージアム入館者限定のレストラン。ここではあずきをふんだんに使ったメニューを味わうことができます。赤飯がメインの「お赤飯」や「あずき粥」などの珍しいメニューもあり、大いに悩みましたが、小豆をお手軽に味わえるという言葉に惹かれ「あずき定食」に決定。ご飯の種類を赤飯か雑穀米で選ぶことができ、サイドにはかぼちゃと小豆のいとこ煮、小豆の風味香るごま豆腐、お吸い物がついてきます。またデザートにはあずきソフトも楽しめると聞き、ひそかにガッツポーズ。
ご飯はもちろん大好きな赤飯を選択し、どきどきで待ちます。しばらくして「お待たせしました~」というスタッフさんの朗らかな声とともに定食が登場!
あずき定食
せいろの蓋を開けると、ほかほかの赤飯が顔を出します。もち米と小豆の一粒一粒がつやつやに輝いていて、完璧な炊き上がりです。赤飯に欠かせないごま塩を振っていざ、「いただきます!」
赤飯は食べたときにふわっと小豆の香りが口いっぱいに広がって、ごま塩の塩味とベストマッチ!!そしてかぼちゃと小豆のいとこ煮は、優しい味付けで煮物があまり得意ではない私でも美味しくいただくことができました。
特に感動したのは小豆の風味香るごま豆腐です。小豆とごま豆腐の組み合わせがあまり想像できなかったのですが、口に入れた瞬間ごまの香ばしい香りと小豆の甘い風味が鼻に抜けるようで、思わず舌鼓を打ちました。
デザートのあずきソフト
食後のデザートは待望のあずきソフト。ショップのものとは異なりコーンはついておらず、その代わり蜜豆がトッピングされていました。あんこのまろやかな甘さと濃厚なミルクの風味が抜群に美味しくて、これを目当てに来るお客さんの気持ちが分かりました。
またあずきソフトと同時にあずき茶のサービスもあり、まさにあずきを味わい尽くすことができました。
取材の中で、施設の方は「あずきを難しく考えず、まずは体感して身近に感じてほしい」と話していました。さらに、「たくさんの展示の中から、自分が面白いと思うものを一生懸命見てほしい」とも。
その言葉から、あずきの魅力を一方的に教えるのではなく、訪れた人が自分で感じ取ることを大切にしているのだと気づきました。私自身も、あずきを通して「発見する喜び」や「自分の感性で味わう面白さ」に触れたような気がします。ここで過ごす時間が、あずきをより身近に、そしてちょっと特別に感じさせてくれました。
今回、あずきを使った調理体験を通して、今まで知らなかったあずきの美味しい食べ方に出会うことができました。中でも心に残っているのは、あずきとマフィンという意外な組み合わせに出会えたことです。これまでのイメージを覆すような新しい美味しさに触れ、私が持つあずきへの可能性がぐっと広がったように感じました。小さな発見があるだけで、食べ物への見方が少し変わる。そんな体験を、たくさんの人に味わってほしいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次は、あなたがあずきの奥深さに触れる番かもしれません。