◇現役ANA CAがおすすめする、兵庫の観光スポット特集シリーズ◇
ANAより兵庫県庁に出向中の現役CAが、兵庫五国の魅力を探りながら、おすすめ観光情報をご紹介します。食と文化のルーツを知る、食べる、体験する“兵庫テロワール旅”に出かけてみませんか?
第5弾は、“発酵のチカラ!『井戸糀製造所』の生糀で味噌づくり&腸活発酵ランチinたつの~”をレポート。
発酵文化と共に栄えた「たつの市」
今回は私の出身地「たつの市」のイチオシ情報をご紹介します。
兵庫県南西部に位置し、淡口醤油発祥の地として発酵文化とともに栄えてきた「たつの市」。
龍野の淡口醤油は、醤油もろみに甘酒を加えてつくる製法が特徴です。まろやかで上品な甘みと軽やかな芳香を持つ淡口醤油が生み出される秘訣のひとつが「甘酒」です。
醤油や甘酒などの発酵食品を作る上で欠かせないのは「糀」。
そんな糀を作りつづけて約100年、大正15年創業の「井戸糀製造所」をご紹介します。
重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、「播磨の小京都」と呼ばれている龍野城下町。小規模な町家が軒を連ね、風情あふれる町の一角に店を構える「井戸糀製造所」。
四代目店主の井戸正文さんと奥様の真由美さんにお話を伺いました。
『糀菌というのは国菌なんです。日本ならではのもの。糀からできるものと言えば、醤油、味噌、みりん、日本酒などがありますが、和食を支えているのは糀といっても過言ではないです。』
『発酵食品は身体に良いと言われますが、発酵食品に含まれる食物酵素は消化を助け、体内の消化酵素の無駄使いを防ぐ役割をします。消化酵素が節約されると、代謝酵素に余裕ができるので新陳代謝が良くなり、病気の予防や解毒作用が高まるなど免疫力アップにも繋がります。なので、1日1杯、味噌汁を飲むことが家族の健康のためにもお勧めですよ。』と話す井戸さん。
発酵食品の効果について学んだところで、次は糀作りについて伺います。
老舗糀店の生糀づくり
井戸糀製造所では、昔ながらの製法で、全て手作業で4日をかけて糀が作られています。
まず1日目は洗米し浸水させます。
2日目に甑(こしき)とよばれる大きな蒸し器で米を蒸します。その後、蒸した米を広げて冷ましてから糀菌をなすりつけ、室(むろ)に入れ発酵させます。
3日目は室仕事。井戸糀製造所には創業時から使われている煉瓦造りの室(むろ)があり、そこで糀を発酵させています。
発酵すると熱を放出するため、室の中は、糀が発酵した熱で35度に。まるでサウナのような暑さ!
糀をかき混ぜ、糀の温度を均一に保ちます。発酵中の糀を触ってみるとほろ温かく、発酵のパワーを感じます。
温かい空気は上にあがっていく為、室の中で積み上げられた糀蓋の上下を何回も入れ替え、糀の温度が一定になるよう保ちます。室は煉瓦造りですが、煉瓦と天井や壁の間には、もみ殻が30センチほど入っていて熱を逃がさない工夫がなされています。真冬は外気温が低い為、ドアに目張りをして温かい空気が逃げないようにするなど、温度管理にはかなり気を遣われているそう。
4日目になると、びっしりとコウジカビが繁殖し糀が出来上がります。
素材が生きた味噌や甘酒
井戸糀製造所では、糀・大豆・塩のみで手作りされる100%無添加の味噌や、糀のみで作られる甘酒なども製造されています。
原材料にもこだわっており、米や大豆はたつの市の上田農園のもの、塩は赤穂の塩を使っています。
大豆のうまみが凝縮した風味豊かな味噌はもちろんのこと、甘酒もオススメ!砂糖は使用していないのに糀の自然な甘みを感じることができます。
商品の販売は主に店舗での対面販売です。
自宅用にも龍野土産としてもオススメです。
味噌づくりにチャレンジ!
毎年、11月の「オータムフェスティバルin龍野」では味噌作り教室を開催されています。
その他の時期でも15名以上であれば味噌作り教室は開催可能だそうです。(要問合せ)
実際に味噌作り教室に参加してきました。
井戸糀製造所の作業場は、糀の匂いが漂い、目には見えませんが糀の菌が飛んでおり、その空間にいるだけで身体に良さそうな気分になります。
そんな作業場でさっそく味噌作りを体験します。
まず、茹でたての大豆をビール瓶で叩いて潰していきます。
この時にどれだけ細かく大豆を潰せるかによって、味噌の粒の大きさ(なめらかさ)が変わってきます。単純作業ながら、結構な重労働です。きっと私の作った味噌は粒が大きいでしょう、、、。笑
次に、糀を手で揉んでパラパラになるようほぐし、塩を混ぜます。
潰した大豆に塩を混ぜた糀を入れ、手で揉みながら混ぜます。
混ざったところで大豆の煮汁を加え、うまみを足します。
もう一度揉みながら混ぜ、ひとかたまりにまとめます。
空気が入らないよう器に詰めて完成です。
今は薄いクリーム色をしている味噌が、約10ヶ月間じっくり発酵させることで茶褐色になります。
生きた糀で作る味噌の美味しさを想像するだけで、出来上りが楽しみで待ち遠しくなりますね。
是非、皆さんも井戸糀製造所の生糀で味噌作りにチャレンジしてみてください!
食べるほど、きれいに、健やかに「腸活発酵ランチ」
井戸糀製造所から徒歩3分ほど、レトロな外観が目をひく「クラテラスたつの」。
大正時代から使われていた醤油蔵を改修して建てられた、地産地消カフェとアンテナショップの複合施設です。「醤油の郷 大正ロマン館」にも隣接しており、龍野のいちおしスポットです。
ランチメニューはメインおかずが定期的に変わる「地産地消たつの発酵ランチ」。(税込み1300円)
この日のメインはこちら!
たこ焼きのように見えますが、、、たこ焼きではございません!
レンコンのしゃきしゃきした食感がアクセントの「豆腐団子の甘酢あん掛け」です。
クラテラスたつのでは、あえて肉や魚は使わず、高野豆腐や車麩、大豆製品などと季節の野菜を使用したヘルシーなメニューが提供されています。
地産地消に取り組まれており、野菜はたつの市の右田農園の完全無農薬、無化学肥料で栽培したこだわり野菜。旬の野菜を使うため、その日採れた野菜によって付け合わせのお惣菜のメニューを考えられているのだとか。
お豆腐も手作りされており、大豆の味をしっかり感じつつも、クリーミーで滑らかなプリンのような食感の手作りおぼろ豆腐です。
カフェもショップも醤油の産地ならではの豊富な品揃え!
カフェ店内には合計7種類ほどの醤油が置いてあり、お好みの醤油をかけて、おぼろ豆腐や卵かけご飯をいただくことができます。
ショップには、カフェに置いてある醤油を含め、バラエティ豊かな醤油が取り揃えられているので、お気に入りを見つけてお土産にいかがでしょうか?
ランチメニューは、自家製甘酒ドレッシングや本醸造醤油など、調味料に発酵食品を使用されており、「食べるほど、きれいに、健やかに」をコンセプトに作られた身体に優しいメニューになっています。
ご飯はたつの産の紫黒米入り玄米ご飯。圧力鍋でじっくりと炊き上げることで、もちもちの食感に。夢美人卵とお好みの醤油をかけ、卵かけご飯でいただきます。
バチ汁とは?
汁物は、鰹と昆布の一番出汁で引いたお吸い物にそうめんバチを入れた「揖保乃糸バチ汁」。
たつのは、そうめん「揖保乃糸」の産地であることから、「バチ」は地元ではおなじみの人気食材なのですが、世間では意外と知られていない珍味です。
そうめんは棒2本に生地を渡し掛けて段階的に引っ張って伸ばしていくのですが、最終的に棒にかかる端の部分が平たくなるので切り落とされます。
この部分が三味線の「バチ」に見えることから「そうめんバチ」と呼ばれるようになったそう。
汁物にそのまま入れて使えるので便利!味噌汁やお吸い物との相性は抜群です。
カフェの隣のアンテナショップで販売しているので、お土産にオススメです。
たつの市で発酵食の素晴らしさを「学び、味わい、楽しむ」。地産地消の美食旅はいかがでしょうか?
◇井戸糀製造所◇
住所:たつの市龍野町下川原39-1
営業時間:10:00~18:00
定休日:不定休
◇クラテラスたつの◇
住所:たつの市龍野町上霞城126 醤油の郷
大正ロマン館内
営業時間:
Shop / 10:00 - 17:00
Lunch / 11:30 - 14:00 (※無くなり次第終了)
Cafe / 10:00 - 16:30L.O
定休日: 月曜日(月祝日は営業、翌火曜休み)