翼を広げると2メートルにも及ぶ優雅な見た目とは裏腹に、トノサマガエルも丸のみしてしまう肉食性の鳥。
そう、それは幸運を運ぶ「コウノトリ」です!
江戸時代、コウノトリは日本全国で見られる鳥でした。
しかし明治期の銃による乱獲、第二次世界大戦後の農地の整備、河川改修による湿地の消滅や農薬により、1971年に野生最後の一羽が死に、日本の空からコウノトリは姿を消しました。その最後の生息地が、兵庫県 豊岡市です。
兵庫県の北部、日本海沿いに位置し、人口8万人弱のこの地域は、南北に日本海へ注ぐ円山川が流れ、温泉地として有名な城崎温泉があり、生きものにあふれる豊かな自然環境と、共生を受け入れるおおらかな文化環境が息づいています。
「生物多様性と地域活性化の統合的発展」に早い時期から取り組み、コウノトリの野生復帰に挑戦してきたこのまちで、実際にコウノトリを見て、環境を五感で学ぶ「豊岡コウノトリウォッチングツアー」をご紹介します!
かつて、「あたりまえ」に見られたコウノトリのいる風景を取り戻すため、コウノトリの絶滅から保護、そして野生復帰までの長い道のりの物語に触れるVisit Kinosakiのコウノトリウォッチングツアーへ行ってみましょう!
こちらは、ランチつきの半日ツアーです。
◆コウノトリの生息地である湿地にて散策
◆豊岡市立コウノトリ文化館(動画鑑賞、解説員の解説)
◆『コウノトリ育むお米』と地元の食材を味わうランチ
集合場所は、JR城崎温泉駅か、温泉街のお泊りの宿泊施設へのピックアップも可能!
行ってみましょう!
◆戸島湿地
戸島湿地は豊岡市のコウノトリを語るうえで、欠かせない重要な場所です。
正式名所を『豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地』といい、豊岡市の北部 一級河川の円山川河口近くに位置しています。3km先は日本海、川の対岸には城崎温泉があり、美しい日本の原風景が広がっています。
ハチゴロウの戸島湿地は、コウノトリが餌を獲るのに良好な、明るい湿地。
ここの湿地の山際に建っているのが、コウノトリの人工巣塔です。
施設の中から、望遠鏡で写したものを見たり、パネルによる職員の説明を受けることができます。
話を聞いていると、人間味のあるコウノトリに、どんどん愛着がわいてきます!
その後、屋外施設へ移動します。
コウノトリに心理的な負担を与えず、近くからウォッチングすることができます。コウノトリの他にも、様々な水鳥や、餌となる生物まで、多様な生物が生きる環境を見ることができます。
野生のため、見られるかどうかはコウノトリ次第ですが、この日は見計らったようにベストなタイミングで現れてくれました!
コウノトリは、子育てに向いている場所を確保すると、ずっと同じ夫婦が繰り返し子育てを行うそう。現在では、2008年から同じコウノトリのカップルが毎年ここに戻ってくるそう。
「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地」に関する国際条約『ラムサール条約』に認定されている湿地です。同条約は、世界的に重要な湿地を評価し、保全することを目的としています。
戸島湿地では、この環境を守るために雑草を刈るなどの手入れを行っており、ボランティアの方を広く募集しています!個人の方でも、学校の学習イベントでも!
ボランティアに参加された方は、コウノトリにより愛着をもち、さらに環境を考えるようになって帰られるそう。
ご興味がある方は、ぜひ気軽にお問い合わせください!
豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地(http://www.hachigorou.com/now)
◆兵庫県立コウノトリの郷公園・豊岡市立コウノトリ文化館
コウノトリの日本最後の生息地で、野生に復帰させる試みと、保護や増殖に取り組んでいます。2005年9月より放鳥を開始。園内には観察施設もあり、間近でコウノトリを観察することができる施設です。
こちらの書は、なんと読むか分かりますか?
正解は、「鸛」(コウノトリ)。
こんな字を書くなんて知りませんでした!このツアーに参加すれば、灌漑の水場を餌場とするコウノトリならではの漢字だとしっくりきますよ。
まずは、豊岡市でのコウノトリ野生復帰に関するお話や、現在の取り組みなどを紹介してくれる紹介ビデオを15分間ほど鑑賞。言語も英語、中国語、フランス語、など多言語の字幕に対応しています。
豊岡市は、コウノトリの野生復帰に成功を収めてきた街として知られていますが、ただ人工飼育をし、放鳥をしただけではありません。野生復帰のための環境整備として、コウノトリの餌となる多様な生物(ドジョウ、ヤゴ、カエル等)を育む、化学肥料や農薬を使わない農業『コウノトリ育む農法』に取り組んできました。
動画でこのストーリーを見ると、この農法でできたお米が食べたくなってきます!
豊岡市では、2005 年 3 月に「豊岡市環境経済戦略」を策定し『コウノトリ育むお米』をブランド化など、コウノトリをシンボルとして、経済だけでなく、環境だけでもなく、環境と経済が両立する地域を目指した取組が進められています。
◆豊岡市(2005)「豊岡市環境経済戦略」より(*一部抜粋)
【豊岡市環境経済戦略による地域の目標像】
・環境への取組を持続可能にする ・環境という資源を活かして経済的に自立する
・豊岡での暮らしを誇りあるものにする 【豊岡型環境創造型農業の推進】
①学習会や技術指導会の開催により、慣行農法からの転換を促す
②「コウノトリ育む農法*」などの栽培技術のさらなる改良に努める
③「コウノトリ育む農法」や「コウノトリの舞*」ブランドの意味を理解する人を増やし、販売 拡大を図る
④豊岡の食が安全・安心であることを生きもの調査により実感してもらい、その活動を観光資源 とする
農薬や化学肥料に頼らず、田んぼなどの様子を見抜き、農業をしながら多様な生き物を育む 「考える農業」と、その取り組みを内外に広めることで、街の発展を推進しているのですね。
コウノトリがいかに大切な存在か実感したところで、時間になると、人工飼育されているコウノトリを間近で見学しながら、解説員の方による解説を聞きます。
この日は少し寒くなってきた2022年11月下旬ごろ。
クチバシをお腹の羽根部分に埋もれさせている様子が何とも面白い!
解説員の村田さんによると、クチバシは水の中に入れて餌を探せるように、神経が通っているので、クチバシが寒いと羽根で温めるそう!
その証拠に、お腹付近の羽根はフワフワしています。
翼の方は飛行機のように大きく飛べるように、しっかりしているのですが、この部分の羽根は骨から直接生えているそう!!!!
館内に剥製があるので、実際に触ってみてください!
コウノトリは縄張り意識が強いため、ケージは夫婦ごとに分けられています。
それでも、ケージの中から他のケージに向かって威嚇することも!!!
なぜ、そんなにも縄張り意識が強いのか。
コウノトリは、親鳥は一日0.5kg、成長期は一日1kgの餌が必要だそう。
子育て中の親鳥は、毎年2〜3羽の雛を育てるため、自分の餌場にほかのファミリーが入ってくると生きていけない、そんな自然界の厳しさからくるのです。
巣立ちを見守る親のコウノトリのお話や、自然界ならではの厳しいストーリーを聞くと、その環境を守っていきたい気持ちがわいてきます!
コウノトリの生活に関わる生物の飼育展示や、地域の動物の剥製も展示されています!
この日、1日取材に対応いただいた豊岡観光イノベーションの谷垣さんは、豊岡市内ご出身。幼少期から豊岡市立コウノトリ文化館が好きで良く通っていたとか。豊岡市内には剥製屋さんもあるそう!
豊岡市では、地元で有名なハンターによる、山歩きイベントも!木を引っ掻いた動物の痕跡などを見ながら、どんな動物か解説してくれるそうで、かなり気になります!
「豊岡は何でもありますねぇ〜!」とお話をしながら豊岡市立コウノトリ文化館を堪能しました。
敷地内には、幸せを発信するコウノトリポストも!
『コウノトリ育むお米』が使われたランチを食べに行きましょう!このツアーでは、フレンチか和食のランチか、その日によって違います。
◆さんぽう西村屋
今回は、城崎温泉の老舗、江戸時代から160年つづく温泉旅館 西村屋が2019年春に開業した「さんぽう西村屋 本店」でのランチです。
場所は西村屋本館のとなり(旧御所の湯跡地)。この辺りは、城崎温泉の発祥の地とされている、外湯の1つである「鴻の湯(こうのゆ)」など、歴史的な情緒の漂う場所です。
店内は炭場を中心としたダイニングが入れ子状に配置され、通りからも内部の様相を垣間見ることができます。階吹き抜けの建築が暖かく、とても素敵。
2階部分は、ゆっくりお酒などを楽しめる「さんぽうサロン」といい、定額でお酒が楽しめ、1日何回出入りしても良いそう!外湯めぐりの途中に寄りたい場所です!
ランチコースは、地元のこだわりの食材ばかりを使っています!!
食前酒の「但馬の在来種 赤米甘酒」
但馬の在来種の赤米が美しい!ぴったりの器に、目の前で注いでくださいます。
優しく深みのあるお味でした!
一品一品、地元の食材にこだわっていて、目でも楽しめる美しい料理が続きます。
京都の綾部で作った醤油麹や、地元の鶏は今まで食べたことのない美味しさ!パリパリの皮に、ふわふわの身は味わってみないと感動が分かりませんね。豊岡の蜂蜜で作ったハニーマスタードにつけると一層深い味に。
色あざやかな自然農法野菜はそれだけでも主役になる味で、特に人参に感動しました!
その他にも、日本海で採れた新鮮な刺身に添えられたワサビは、冬はスキーで有名な、神鍋高原産のワサビ。
通常はスーパーなどには出回らず、料亭に卸しているそう。
ここでしか味わえない、地元食材のマリアージュは別格のお味です。
スタッフの方は、一品一品丁寧に説明くださり、ソムリエの資格を持っていたり、英語での説明ができたりと、フレンドリーで堅苦しくないのに、知識が豊富。
最高のおもてなしで、素晴らしい時間が過ごせるでしょう。
最後に「コウノトリ育む農法」のお米と、地元農家のおじいちゃんから習ったというお味噌汁でほっこり。
食後のデザートは、城崎ジェラート。
この日は冬ならではの「柚子」フレーバー!
温泉街にお店も構える城崎ジェラートは、外湯めぐりの合間にぴったりのスイーツです。
ディナータイムも選りすぐりの料理が提供されています。但馬の地酒と、こだわりの逸品と共に、ここでしか味わえない、ゆったりとした時間をお過ごしください。
同施設には西村屋がプロデュースするギフトストア「さんぽうギフト」でお土産をご覧ください。
営業時間:10:00 ~ 22:15(水曜定休)
旅の思い出や大切な方へのお土産に、ここでしか手に入らない上質なお土産が見つかりますよ。ぜひ城崎温泉で一度は立ち寄って頂きたい場所です。
ツアーでは、豊岡市内のコウノトリの巣塔の見学に行けます。
見られるかどうかはコウノトリ次第です!
コウノトリは市外や県外、海外まで移動して生息範囲を年々広げています。
豊岡市内で増えたコウノトリが他地域にも飛来することから、地域への活動の伝搬と連携を行うため、全ての個体は番号によって識別され、その行動を研究しています。
市民参加によるコウノトリのモニタリング「コウノトリ市民科学」では、一般の方から日々情報が提供され、それぞれのコウノトリの行動を追うことができます。
お近くでコウノトリを発見したら、ぜひ写真をとって、このサイトに情報提供してください!
ツアーの最後には、ガイドの方のセンスで選ぶお土産が貰えます!!
この日は、コウノトリのキーホルダー!可愛すぎる!!!!
豊岡市のシンボル「コウノトリ」。コウノトリを中心に自然と人に優しい環境づくりに取り組み、観光や経済活動を進める豊岡市は、これからのSDGsな社会を牽引しています。
城崎温泉を訪れる際は、ぜひコウノトリウォッチングツアーに参加して、コウノトリを五感で学び、美味しい「コウノトリ育む米」を食べてみませんか?
申込は2名から!海外のお客様向けのツアーですので、英語のガイドが付いています。
申込はこちらから!
Oriental White Stork Observation Tour (with English-speaking guide) - Visit Kinosaki
◆DATA
・兵庫県立コウノトリの郷公園・豊岡市立コウノトリ文化館
〒668-0814豊岡市祥雲寺127
営業時間:9:00~17:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
入館料:無料(コウノトリ募金あり)
公式サイト: http://www.stork.u-hyogo.ac.jp/
・豊岡市立ハチゴロウの戸島湿地
〒669-6103兵庫県豊岡市城崎町今津1362
TEL 0796-20-8560FAX 0796-20-6302 toshima8560@iris.eonet.ne.jp
開場時間 9:00~17:00
休場日 火曜日(祝日と重なった場合は翌日)・年末年始(12月28日~1月3日)
入場料 無料(ワンコインの環境協力金にご協力をお願いします)
・さんぽう西村屋
〒669-6101 兵庫県豊岡市城崎町湯島463-2
城崎温泉駅から徒歩11分