日本最高峰の木造建築にして、世界でも類を見ない美的完成度を誇る姫路城。誰もが一度はその名前を聞いたことがあるのではないだろうか。
姫路城の一番の魅力は「本物感」。400 年以上前に建築され、それが昔の状態と大きく変わらず良好に保存されている。城の中にはトイレやエレベーターがなく、夏は涼しく冬は寒いが、これは本物であるが故。日本の城の中でも「本物感」が特別であるため、国宝、 さらには日本の城で唯一単独で世界文化遺産に選定されたのであろう。
姫路城が白いのは、①燃えにくいこと ②権威の象徴であること ③戦から平和の時代に移り変わることを表しているといわれている。青空に映えるその姿は、水面から飛び立つ白鷺に例えられて「白鷺城」とも呼ばれ、人々に親しまれている。
JR 姫路駅を出ると見えてくる、広い道路の先にそびえ立つ姫路城。そこから車で 5 分ほどで到着。大手門をくぐってすぐの場所にあるのが三の丸広場である。
芝生で広い空間になっており、子どもたちが遊んでいることもあるそうだ。そこで写真を撮っていた人が言うには、ここが一番の写真スポットとのこと。
改札口を通るとすぐに天守閣のほうに意識が向いてしまうところだが、現地の人曰く、いきなり天守閣のほうに行くのではなく、西の丸の方からぐるっと回って天守閣のほうに行く方が効率的にいろんな場所を見るにはおすすめらしい。
案内に従って西の丸のほうに行くと、緑豊かな通路の先に見えてきたのが百閒廊下(ひゃっけんろうか)。長局(ながつぼね)とも呼ばれる、長さ約240m の長廊下である。
長い廊下には、徳川家康の孫娘である千姫に仕えた侍女たちが住んでいた多数の部屋が並んでいる。 所々に櫓(やぐら)に狭間と言われる小さな開口部があり、単なる廊下ではなく、城壁としての戦略的意味もあったそうだ。窓は角が切られているものが多く、これは矢や鉄砲を放つ際に鉄砲や弓が角につっかえないようにするためだそう。なるほど、アイデアに光る。
廊下を進んでいくと化粧櫓(けしょうやぐら)という、千姫が休憩所としていた建物が見えてくる。
当時、部屋には彩色のある装飾が施されていたそう。
百閒廊下を出て、いざ天守閣へ。
天守や櫓、土塀の壁面には百間廊下同様、三角や四角の形で狭間が設けられている。
さらに敵が登ってこないように勾配が高く築かれており、開いた扇の曲線に似ていることから「扇の勾配」と呼ばれている石垣がある。軍事的設計が至る所に施されていてなんともリアル。
大天守は外から眺めると 5 階建てに見えるが、内部の造りは地上 6 階・地下 1 階の 7 階構成になっている。
階段は急なので動きやすい服装で来場する方がよさそう。
各階ごとに姫路城の説明やその時代の人たちの武器の紹介、設備の説明などがなされていた。
私がもっとも興味を持ったのは姫路城の軸組構造模型である。
この模型は、昭和の大修理の際に大天守の解体修理のために実物の 1/20 で制作されたもの。
今自分が立っている城は木造建築であり、その構造が昔と変わらず今も残っていると知り、当時の人の技術力に驚いた。
城内から見る景色は絶景。天気も良かったこともあり、姫路市内を見渡すことができ、芝生の緑と空の青、雲の白に囲まれて鯱鉾(しゃちほこ)も映えている。
また、姫路城は 「暴れん坊将軍」「引っ越し大名!」などテレビや映画の撮影地にもなっていることで有名。 入城してから攻める側の気持ちで、帰るときは守る側の視点で、昔の人になりきって見てみると面白い。ぜひ姫路城に足を運び、非日常空間を楽しんでほしい。
次は、姫路城のお隣にある好古園に行ってみた。
好古園は姫路城から西南に位置し、市制百周年を記念して建造された約1万坪の日本庭園である。
皆さんは、好古園の本当の魅力を知っているだろうか。
この肩書を見ただけだと、ただ大きな日本庭園がそこにあるように感じるかもしれない。しかし、好古園はその一言で説明できるような場所ではない。
ここ、好古園では 9 つの異なる庭園がその姿をそこに置き、庭園の計画は京都大学教授中村一氏の設計監修を受けている。つまりここに足を運ぶだけで、様々なタイプの日本庭園を目にすることができる。1つだけでなく、複数を同時に楽しめる。それがある種、好古園の一つの魅力だろう。
私が推したい、好古園の特徴は、通路の地割をそのまま使用した設計である。
地割をそのまま利用するとは、今の好古園の地図と、昔のこの場所の地図をピッタリ重ね合わせると、通路が一寸の狂いもなく一致するということだ。
侍たちがこの場所で生活していた時代と同じ道を、多くの人の人生という儚いストーリーが混じり合い、戦国時代から、平和と呼ばれるようになる今この時代までを横目に見てきたこの道。
その道を現代の私たちが踏みしめ、歩みを進めていると思うと感慨深い気持ちに包まれる。
私は実際にこの道を歩いている時、色々な情景を脳裏に浮かべ、想像を膨らませながら、当時を生きた侍になったつもりで歩いてみると、他の庭園にはない風情を身に染みて感じた。皆さんにもぜひ味わってほしい。
そんな好古園に存在するのは庭園だけではない。
食事処や裏千家第十五代家元千宗室氏の設計・監修による本格的数寄屋建築の茶室など、私たち観光客に嬉しい場所も配備されている。
今回のランチは、「活水軒」という食事処。
姫路名物である穴子を使用した穴子丼とざるそばでお腹を満たした。
穴子丼は、ついさっきまで、涼し気に流れる水の中を、意気揚々と泳いでいたのかと感じさせられるほどに身が引き締まる穴子と、少し甘めのたれと白飯とで相まって、まさに最高の味を体現していた。
高級感あふれる店内、巨大なスクリーンを思わせるような大きな窓からのぞく日本庭園、そして、その場に重く穏やかに流れる空気。めんつゆをくぐらせたそばと一緒に、口いっぱいになるまで吸い込み、ほのかに香るわさびの味を感じながら頂いた。まさに至福の時。
店内から見える風景は、絵に描き、そこにいつまでも静止しているような、美しい日本庭園。目線を少し落とせば、一面に広がる、瀬戸内海をイメージした大きな池の水面下に、色鮮やかな鯉たちがゆらゆらと揺れている。こんなに澄んだ気分になる食事処は、好古園ならではだと思う。
紅葉の時期、普段は夕方に閉園してしまう好古園だが、11月18日~12月4日まで、20時までの営業となる。普段とはまた違う表情をした、秋に彩られた庭園が、あなたを迎えてくれるだろう。
最後に訪れたのは、書寫山圓教寺。
姫路駅から車で約30分に位置しており、数々の国や県が指定する重要文化財を見ることができる場所。今回は、摩尼殿(まにでん)という建物に行ってみた。
とても迫力のある建物を目の前に、驚き。階段を上り、建物の中に入ると、お香の香りが漂っており、お守りを買うことができる。廊下から圓教寺からの景色を見渡すこともでき、とても穏やかな雰囲気を等身大で感じることができる。
さらに、書寫山圓教寺の魅力はこれだけではない。摩尼殿や他の場所に行くまでの道のりでも、たくさん楽しむことができる。
まずは、山上駅までのロープウェイ。ロープウェイから見える景色の絶景さ。天気が良いと、姫路市はもちろん、なんと淡路島まで見ることができる。
ロープウェイを降りると、展望デッキがあり、屋内の休憩スペースもあるので、景色を見ながら一休憩するのもあり。
そして、ここから摩尼殿までの道のりは、 歩いて15~20 分ほど。 木々に囲まれた、山の中にある道をどんどん進んでいく。
上ったり下ったり、澄んだ空気を名一杯吸い込みながら、黙々と歩く。近づくにつれて、なんだか神聖な場所に踏み込んだような、そんな感覚を覚える。
摩尼殿のふもとには、茶屋があり、おにぎりやまんじゅうなどの軽食やうどん、おでんなどを食べることができる。
私はうどんを選んだが、とても美味しく、歩いて疲れた体に出汁が染み渡り、疲れた体をホッと癒してくれた。書寫山圓教寺に来た際は是非立ち寄ってみてほしい。とてもお勧め。
いかかだっただろうか。
写真や文章だけでは感じることができない、素晴らしい光景の数々を、実際に足を運び、ぜひ経験してみてほしい。四季によって一層各所違った顔を見せてくれるだろう。
※取材日:2022年9月25日
◆DATE
・姫路城
〒670-0012 兵庫県姫路市本町68
開城時間:9時00分~16時00分(閉門は17時00分)
HP:https://www.city.himeji.lg.jp/castle/
・好古園
〒670-0012 兵庫県姫路市本町68
開園時間:9時00分~17時00分(入園は16時30分)
HP:https://www.himeji-machishin.jp/ryokka/kokoen/
・書写山圓教寺
〒671-2201 兵庫県姫路市書写2968
開園時間:9時00分~17時00分