終戦から75年、時空を超える旅をしてきました。
今年の8月15日は、終戦75年の記念日です。
皆さんは、戦時中、「特攻」の訓練をして、63名の特攻隊員が飛び立っていった飛行場が兵庫県にあったことをご存じですか?
1200mの滑走路が当時のまま残っているのは全国でも唯一という、加西市にある鶉野飛行場跡を訪ねてみました。
※「特攻」は、戦闘機に片道の燃料だけを積んで、機体もろとも敵艦に体当りする決死の攻撃のことです。
神戸からJR神戸線で加古川駅へ、そこからJR加古川線に乗り換えて粟生駅に到着。そこでさらに北条鉄道に乗り換えて、法華口(ほっけぐち)駅に到着しました。神戸からの所要時間は1時間余り。カラフルなディーゼルカーに揺られ、車窓からの風景を楽しみながら意外に早く到着しました。
法華口駅の駅舎は、大正4年(1915年)に建てられたもので、もうすでに100年以上経過しています。その趣のある木造の駅舎は、平成26年に「国登録有形文化財」に登録されていて、駅舎の中には、パン工房「モン・ファボリ」があります。ここの米粉で作られたもっちもちのパンは、絶品ですよ。
駅ホームに隣接して、遊歩道が設置されています。路面に「鶉野飛行場跡1.7km」の表示がありますので、表示に沿って進んでください。鶉野飛行場まで徒歩約30分。歩くのが苦手な人は、法華口駅で電動自転車をレンタルすることもできますし、第1・第3日曜日には、無料シャトルバスも運行されています。
所々に残る戦争遺産を見ながら飛行場跡へ向かいます。
鶉野飛行場跡までの所々で、弾薬庫や防空壕などの戦争遺産を見ることができます。爆弾庫跡は、爆弾や機銃弾を保管していた倉庫で、頑丈なコンクリートで作られており、建物の前には飛行機からの攻撃を防ぐ土塁(土の山)が残っています。詳しく知りたい方は、スマホで「加西市歴史遺産散策ナビ」をダウンロードすると、情報を得ることができますよ。
法華口駅から10分ぐらい歩くと、「姫路海軍航空隊」の看板のかかった門柱と衛兵詰所にたどり着きました。これは、平成30年8月に復元されたものだそうです。当時、訪問者との面会所があった場所は、今はトイレが整備されています。戦時中にパイロットを目指した若者たちは、どんな思いでこの門を抜け、面会の方たちとどんな話をしたのでしょう。ふっとそんなことが頭をよぎりました。
攻撃してくる飛行機を迎え撃つための機銃座跡も残っています。飛行場周辺には5カ所あったそうで、今も4カ所が残っているそうです。機銃そのものは、現在は失われていますが、当時は1分間に230発の弾を発射でき、5,000mの高さまで届いたそうです。この機銃座跡には、地下室も完全な形で残っています。
地下室に降りてみると、内部はこんな感じです。
鶉野飛行場跡の滑走路の中ほどに隣接して「平和祈念の碑」があります。この碑は、平成11年に特攻隊で生き残った人たちや地元の人たち等によって建てられたもので、毎年10月の第1日曜日には、特攻隊で亡くなった63名の方と練習中に亡くなった7名の方をしのび、式典が行われているそうです。
戦闘機の実物大模型とともに語られる当時の状況に耳を傾ける
滑走路跡の北の端に格納庫を模した備蓄倉庫が建てられています。この中には、戦闘機「紫電改(しでんかい)」の実物大模型が展示されています。毎月第1・第3日曜日(10:00~15:00)に公開されています。この日も多くの方でにぎわっていました。
鶉野飛行場や紫電改の説明を、「一般社団法人 鶉野平和祈念の碑苑保存会」の上谷さんから聞くことができました。上谷さんは、鶉野飛行場跡に隣接した事業所に勤務していたことから、戦後、飛行場跡を訪ねてくる多くの人から飛行場のことについて質問を受けたそうです。そのことがきっかけで、25年ほど前から、周辺の住民への聞き取りや資料の収集を始められたそうです。集まった人たちは、とても熱心に上谷さんの話に耳を傾けておられました。
鶉野飛行場には、川西航空機の組立工場があり、昭和19年(1944年)12月から終戦までに、510機の戦闘機が組み立てられました。戦局が悪化した昭和20年2月には、鶉野の姫路海軍航空隊にも特攻隊「白鷺隊(はくろたい)」がつくられることになり、3月に第1陣が大分県の宇佐飛行場に向け飛び立ちました。そして白鷺隊は、4月から5月にかけて、鹿児島県鹿屋市の串良(くしら)基地から5回出撃し、21機の戦闘機とともに63名の若者が沖縄の空に散っていったそうです。
のどかな田園風景に似合わないこの機銃座跡には、実物大模型の機銃が設置されています。この模型は、平成17年に東映株式会社が制作した映画『男たちの大和』の撮影のために作成されたものだそうです。この模型は3連装ですが、実際にここに設置されていた機銃は、2連装だったそうです。
発電機が置かれていた巨大防空壕の内部が改造され、シアターとして活用されています。特攻隊員が出撃する前に、両親や家族に向けて最期の思いを綴った手紙を紹介する映像が上映されています。終戦75年の時空を超えて、その覚悟の思いを知り、平和であることが普通と考えている私に、平和であることの意味を改めて考えさせてくれる一日となりました。
【問い合わせ】
◇駅舎工房 モン・ファボリ
営業時間:10:00~16:00
定休日 :月曜日、金曜日(祝日の場合は翌平日が休業日)
お問合せ:TEL 0790-20-7368
※新型コロナウイルスの感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がありますので、来店時は事前に店舗にご確認ください。
WEBサイトはこちら
◇法華口駅レンタサイクル
営業時間:10:00~16:00
定休日 :月曜日、金曜日(祝日の場合は翌平日が休業日)
利用料 :電動折り畳み自転車7台設置 1台500円
お問合せ:TEL 0790-20-7368
◇無料シャトルバスの時刻表等
ホームページはこちら
◇加西市歴史遺産散策ナビ
ホームページはこちら
◇巨大防空壕(シアター)
上映日 :毎月第1・第3日曜日
上映時間:①10:30~ ②11:30~ ③13:30~ ④14:30~
(各回20分程度)
入場料金:無料
申込方法:事前予約制(各回先着20名)※3カ月先上映分まで予約可能
問い合わせ・申込先:加西市観光案内所 TEL 0790-42-8823
(受付時間:平日9:00~17:00)
RE-DISCOVER HYOGO
2020年11月02日 21:32 PM
「特攻」の真意とは
特攻隊の誕生
何故「特攻」が考えられ、多数の若者に死を命じなければならなかったのか
最後の特攻機と言われる「紫電改」
この「鶉野飛行場跡」に立っていると、特攻で散った隊員の心の葛藤に思いを馳せるとともに、特攻に起死回生をかけた青春に涙をこらえながら見学をさせていただいた。
2021年09月12日 20:06 PM
春頃に行きました。圧倒される広さであまりにも寂しさ感じられ痛恨さ覚えました、滑走路から飛び立ち20代までの若人がと思うと胸が痛いです。シネマ見たら無性に悲しくなり又次回は電車で1日ゆっくり回るつもりです。きれいにされた戦闘機があり実感ありますが帰りの燃料ない特攻隊の方思えば申し訳なく虚しさ積もり彼らのお陰で今日がある、とつくづく思います。精一杯生きねば。50年後も残して貰いたいです
2021年11月11日 16:16 PM
こんなに近くに特攻の基地があったとは 私は加古川市に住んでいます 悪徳と言われた特攻も 青年達は純粋だったのでしょうね 片道の燃料しかないのに…戦死の方達の冥福を祈るしか出来ません