◇「兵庫テロワールlab.」テロワール研究員レポート
食や文化を味わい楽しみ、それらが生まれたルーツや背景を探り、受け継いできた人の想いや技術に触れる。大地の恵みを堪能する“兵庫テロワール旅”の情報を、現地で体感した「テロワール研究員」の視点でお届けします。
“日本で一番美しい青磁”といわれた「三田青磁」の作品が手軽に作れる!
型枠を使うから初心者でもキレイに仕上がる「型押し体験」3,300円(税込)
世界三大青磁の一つに称される「三田青磁」ってご存知でしょうか。
かつて兵庫県三田市の三輪町で焼かれていた磁器のことです。
日本で一番美しい青磁といわれながらも昭和初期に製造が途絶えたため、“幻の青磁”と呼ばれていたそうです。
そんな「三田青磁」の作陶に挑戦できるのが、「三田陶芸の森。」です。
「三田陶芸の森。」があるのはJR福知山線・相野駅から徒歩15分ほどの場所。
館長の伊藤瑞寶さんは陶芸家で、市と一緒に三田青磁の発掘調査を行うなど、長年「三田青磁」の復興を目指して活動をされています。
そんな伊藤さんの指導で、絵付けや型押し、手びねりなどの「三田青磁」の陶芸体験ができるんです。
作陶を始める前に、三田青磁について教えて頂きました。
《伊藤さん談》『青磁作りに必要な「青磁石」が三田で採掘できたことがきっかけで、江戸時代後期から青磁が製作されるようになりました。三田青磁を作っていたのは、三田市の三輪町あった「三田明神窯」という窯元だけなんですが、仕上がりのレベルがとても高かったことから、全国的に評判になったそうです』。
紫色がかった青磁石や、ずらり並べられた陶器の欠片は、伊藤さんが自ら発掘調査をして採掘したものだそう。中には200年以上前の三田青磁の型の欠片もあります。とても長い年月、土の中に埋まっていたとは思えないほど、キレイな色でびっくり。
《伊藤さん談》『青磁は、千年経っても色や艶が変わらない。今日作るお皿も、割らなければ千年先も残ってます。ロマンティックでしょ』。
青磁の一番の魅力である“青色”の発色源は、表面を覆う釉薬(ゆうやく)にあるのだそう。
《伊藤さん談》『酸欠の状態の窯で焼くと、釉薬に含まれた鉄が化学反応を起こして青味を帯び、それがガラス質の釉薬の中に閉じ込められるんです。
つまりガラスなので透明ですから、見る角度や光の反射によって色の見え方が変わります。
海をイメージするとわかりやすくて、遠くから見ると海は青いけど、近くで見ると透き通って見えるでしょ』。
青磁というと青のイメージですが、三田青磁は翡翠を思わせる透明感のある深い緑色が王道カラーなのだとか。
《伊藤さん談》『代表的な色といえば深い緑色ですが、淡い緑から渋い緑まで色は幅広いし、青味を帯びているものもあります。
釉薬の種類やかけ方、焼き方によって全く違う色に変わるのが青磁の面白いところ』。
いよいよ陶芸体験の製作スタート!
私が挑戦するのは「型押し体験」3,300円(税込)。
三田青磁の図柄が掘り込まれた型を使い、平皿や小鉢などを一つ作ることができます。
今回作るのは、「七宝紋福寿盤」という三田青磁の伝統的な図柄のお皿。
伊藤さんの見本を参考に、まず「七宝紋福寿盤」が掘り込まれた型枠に、青磁用の粘土を型押ししていきます。
図柄がキレイに出るように、均等に粘度を押し付けていくのがポイント。
型押しが出来たら、余分な粘土をカットします。
次は、細くひも状に伸ばした粘土を底に取り付けて高台を作ります。
粘土を均一な太さに伸ばすのも、外れないように取り付けるのも意外と難しい。。。でも土を触っていると何だか癒されます。
底にサインを入れたら、型から外します。
キレイに図柄が写ってて嬉しい♡
周囲をスポンジで丁寧に整えて仕上げます。
型を使うので、不器用な私でもプロみたいな作品が作れました!
ここで陶芸体験は終了。
乾燥 ⇒ 素焼き ⇒ 施釉 ⇒ 本焼の工程を経て、約2カ月後に完成品が受け取れます(郵送も可)。
写真手前のお皿のような感じに焼き上がるそうです。
この図柄とても可愛くて、すっごく楽しみ♪
「色も艶も、千年経っても変わらないし、丈夫で軽いから、食器としてどんどん使えばいいよ」とのことですが、やっぱり勿体ないので、アクセサリー置きとして部屋に飾ります(^^)
型押し体験では、干支の絵柄のイヤープレートも人気だそうです。我が家にも今年、母が作った兎柄のイヤープレートが飾ってあります。
陶芸体験では他に、絵付けや手ひねり、電動ロクロのコースもあります。
2階には、三田青磁のギャラリーがあって、入場無料なのでぜひ見学してみてください。壁面には「芸術は爆発だ!」の岡本太郎の巨大なリトグラフも飾られてます。
ショップコーナーも隣にあって、様々な“青”の色合いが素敵な食器がたくさん販売されています。
「三田陶芸の森。」には、陶芸体験に加えて、本格的な作陶に挑戦したい人のためのスクールもあります。三田青磁の作家を目指す人も大歓迎だそうですよ!
《伊藤さん談》『戦争の影響などがあって昭和19年に三田明神窯が閉窯になり、三田青磁は一度、製作されなくなりました。だから長い間、“幻の青磁”と呼ばれてたんです。
でも、世界に誇れる芸術文化で、三田青磁の素晴らしい型が今もたくさん残っているのに、無くなってしまうのは勿体ない。作り手をもっと増やして、知名度を上げて、世界三大青磁の一つが日本にあるということを、海外にも発信していきたいと思ってるんです』。
DATA:
◇ 三田陶芸の森。
兵庫県三田市四ッ辻720-2
TEL:079-568-4340
月曜定休
http://www.sandatouji.art
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掲載日:令和5年12月1日 グルメ