◇「兵庫テロワールlab.」テロワール研究員レポート
食や文化を味わい楽しみ、それらが生まれたルーツや背景を探り、受け継いできた人の想いや技術に触れる。大地の恵みを堪能する“兵庫テロワール旅”の情報を、現地で体感した「テロワール研究員」の視点でお届けします。

六甲山からの柔らかな光が育んだ、世界が認める神戸の真珠加工技術
「北野工房のまち」では、2,750円で真珠のアクセサリー作りが体験できます

神戸が“世界一の真珠の街”ってご存知ですか？
神戸の加工技術を求め、世界で流通する真珠の約7割が、神戸に集まってくるそうです。

神戸と真珠の関わりや歴史について、「株式会社コウベ・プレシアス・パール」代表取締役・松田泰英さんに教えて頂きました。
松田さんは、伯父が小浜に真珠養殖場を所有し、父親は真珠加工業の「松田真珠」を営むという真珠一家に誕生。大学卒業後にNYの真珠輸入会社で働き、世界で最も権威ある宝石学研究機関「GIA」の宝石鑑定士資格を取得。加工に加え、輸出や販売も手掛ける株式会社コウベ・プレシアス・パールを創業されました。

《松田さん談》『私が子どもの頃には、神戸の北野界隈は真珠関連の会社だらけでした。加工業者だけでも100社以上あったそうで、「パールストリート」と呼ばれる通りもあるんです』。

真珠の養殖場がない神戸に、なぜ真珠関連の業者が集まったんですか？

《松田さん談》『地理的な要因が大きいです。
まず、真珠の生産地である三重、四国、長崎の中間地点であること。
さらに、神戸港が国際貿易拠点だったため海外貿易商が大勢いたこと。
真珠は昔、ほとんどが海外へ輸出されていたんです』。

また、神戸の北野界隈に加工業者が集結したことにも理由があったのだそう。

《松田さん談》『街の北側にそびえる六甲山が重要な要素なんです。
真珠は光の当たり方で色合いが変わり、加工は緻密な作業ですので、直射日光ではなく、安定した北からの自然光が不可欠。
南からの自然光が六甲山の山肌に反射し、北側から柔らかい光が降り注ぐ北野界隈は、条件にぴったりだったんです』。

戦後、クリスチャン・ディオールなどパリモードが牽引し、世界で空前の真珠ブームが到来。めぼしい輸出品がない戦後日本で、真珠は輸出産業の花形に発展。

職人や業者が集結した神戸の技術水準はどんどん向上し、神戸発の「日本品質」は、世界において別格扱いになったのだとか。

《松田さん談》『真珠の加工には、選別、穴あけ、染み抜き、連組みといった工程があります。どの工程も非常に細かな作業なんです。
例えば、選別作業は真珠屋の基本で、サイズ、色、巻き、照りなどを見極めて一粒ずつ選り分けていきます。同じ等級の粒の中から、さらに輝きや色合いなどを緻密に合わせて並べ、ネックレスにするのが連組み。
自然のもので全く同じものはありませんから、選び方次第でネックレスの出来が大きく変わってしまうんですよ』。

形や色を見て、一番美しく見える場所を瞬時に判断する穴あけもまた、経験と精密さが欠かせない作業。さらに、真珠の黒っぽさを取り除く染み抜き方法など、企業秘密の技術も多いのだとか。
浜揚げされたままの真珠「原珠（下の写真）」を見せて頂くと、商品の真珠とは明らかに違うので、美しいジュエリーにするには処理や加工が必須なことがわかります。

《松田さん談》『真珠にはダイヤモンドのような世界共通の品質基準がないんです。そのため、品質をキチンと見極められて、信頼できる加工業者の存在が非常に重要。
オーストラリアやインドネシア、フィリピン、タヒチなど海外でも真珠は生産されていますが、高度な加工技術を求め、今でも世界で流通する真珠の約7割が神戸に集まります。
良い真珠が集まってくるので当然、世界各国のバイヤーが神戸に集まる。神戸で選別・加工されたものが、世界中に輸出されていくという流れは今も昔も同じです』。

最後に真珠選びのポイントを教えてもらいました。

《松田さん談》『私が真珠で一番大切だと思うのは、輝きです。基本的に真珠層の厚いものほど輝きが強く、劣化も少ない。並べて見比べるのが一番分かりやすいです。あとは、信頼できるお店で購入することですね』。

“世界一の真珠の街・神戸”には、真珠のジュエリーを扱うショールームやショップがたくさんあります。
今回お話を伺った株式会社コウベ・プレシアス・パールは、オンライン販売の他、三宮駅から徒歩10分ほどにあるオフィス内で、オリジナル商品の展示販売もされています。

ピアスやブレスレットなど色々選べる
真珠のアクセサリー作り体験

神戸には、本物の真珠を使い、自分でアクセサリー作りができる工房もあります。
様々なモノづくり工房が揃うトアロード沿いの「北野工房のまち」内の「ぱーるA&S」では、2,750円という手軽な値段で真珠のアクセサリー作りができます。
三宮駅から徒歩10分ほどなので、アクセスも便利。

「ぱーるA&S」は、“日常遣いで楽しめる真珠”をテーマにしたパールアクセサリーの工房。
店内の商品のほとんどが工房で手作りされたもので、ユニークなデザインと手ごろな価格が魅力です。2,000円台から多彩なデザインが揃う真珠のピアスは、観光客にも大人気だそう。

私もアクセサリー作りを体験しました！
体験費用は2,750円（税込）。ピアス、イアリング、ブレスレット、ストラップから作るジュエリーを選べます。※ネックレスの場合は体験費用5,500円（税込）。

私はブレスレットをチョイス。
見本を参考にデザインを決め、ズラリ並んだ中から、好みの真珠を選んでいきます。
真っ白だけでなく、ピンクっぽいパールや、黄色っぽいパールなど、色んな色合いがあって、カタチや大きさも様々。真珠のほかに、天然石やサンゴも選べます。

珠を選んで並べたら、ワイヤーを通していきます。
難しいデザインを選んでしまったかなと思ったのですが、丁寧に教えて頂けるので初めてでも難なく作業できました。

最後に留め具をつけて、1時間ほどで完成！
とっても可愛くて、プロが作ったみたいな仕上がりです(笑)

母と娘で一緒にアクセサリー作りをされる家族連れも多いのだとか。
神戸の旅の思い出はもちろんですが、彼女へのプレゼントにも素敵だと思います。

「ぱーるA&S」では、ジュエリーのリフォームや修理も手掛けておられます。
母や祖母の真珠の指輪やネックレスを、現代的なアクセサリーに作り替える人も多いそうですよ。

その街の美しさから“東洋の真珠”とも呼ばれる神戸で、本物の真珠の輝きに触れてみてください。

DATA：
◇ 株式会社コウベ・プレシアス・パール
神戸市中央区江戸町98-1 東町・江戸町ビル6F
Tel：078-333-8071
ショールーム 営業時間：10:00～17:00（土日祝休み）
https://www.pkobe.jp/

◇ ぱーるA&S
神戸市中央区中山手通3丁目17番地1　北野工房のまち２F
Tel：078-265-5860
営業時間：10:00～18:00（体験受付10:00～15:00）
定休日：第2・4火曜日
https://kitanokoubou.jp/208pearl/

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掲載日：令和5年8月25日