日本六古窯「丹波焼の里」今田町立杭エリア散策

日本六古窯「丹波焼の里」今田町立杭エリア散策

兵庫県に、約800年の歴史を持つ陶芸の里があるのをご存じですか?

丹波焼は日本遺産*にも選ばれている日本を代表する焼き物の産地です。わずか4キロほどの街道沿いに丹波焼の窯元が約50軒も集まった今田町立杭エリアは、ユニークな見どころが満載です!

この記事では、丹波焼の里の散策と窯元訪問の楽しみ方を紹介します。

 

800年以上の歴史を持つ丹波焼とは?

 

日本は全国各地に陶芸の産地があり、人々の暮らしと深く結びついてきました。約800年前に丹波篠山で生まれ、水や穀物を保存するための壺*や甕*(かめ)などを作ることから始まった丹波焼も例外ではありません。

 

中世から現在まで生産が続く日本の代表的な6つの産地を「日本六古窯」*と呼びますが、丹波焼もそのひとつに数えられています。

 

 

▲陶勝窯の市野勝磯(いちのかつき)さんによる器

 

丹波焼の特徴は、時代やつくり手によってスタイルがまったく違うところです。丹波焼には、見た目でわかる「丹波焼らしい色や形」はありません。同じ窯元でも職人が違えばスタイルが変わるのが当たり前で、師匠と弟子でもまったく印象の違う器をつくるのも珍しいことではありません。

 

 

▲丹窓窯8代目の市野茂子(いちのしげこ)さんの手仕事。模様は民藝運動をけん引したイギリスの陶芸家、バーナード・リーチ直伝のスリップウェア

 

これは丹波焼がつねにその時代の人々の暮らしに寄り添って、ものづくりをしてきたからにほかなりません。

 

柳宗悦*(やなぎ むねよし)やバーナード・リーチなど、生活の道具としてつくられた陶芸や工芸品に新たな価値を見出した民藝運動の作家たちも 、丹波焼を愛し価値を見出した人々です。

 

もっと丹波焼の歴史について詳しく知りたい!数百年前の丹波焼を実際に見てみたい!という人は、今田町立杭エリアにある兵庫陶芸美術館を訪ねるのがおすすめです。

 

こちらの記事「兵庫陶芸美術館で丹波焼を知る、見る、楽しむ」で詳しく紹介しています。

 

 

*日本六古窯……越前焼・瀬戸焼・常滑焼・信楽焼・丹波焼・備前焼の総称。日本遺産に選ばれています。

(リンク先:https://www.japan.travel/japan-heritage/popular/a4966b88-09bc-4beb-9d38-d055c65761ec)

 

*日本遺産....文化庁が認定した、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーである。各地域の魅力溢れる有形・無形の文化財群を、地域が主体となって整備活用し、国内外へ発信することで地域活性化を図ることを目的とした、日本の文化遺産保護制度の一つ。

 

*柳宗悦....日本の思想家であり、美術評論家、民藝運動(日本の伝統工芸品の美しさや価値を再評価し、日常生活で使われる手作りの工芸品を推奨する運動)の創始者として知られています。

 

*壺....日本の伝統的な陶器の容器です。丸い形をしており、口が狭く、底が広いのが特徴です。花を生けたり、お茶や酒を保存するのに使われることが多いです。装飾的な用途が主です。

 

*甕....日本の伝統的な陶器の大きな容器です。口が広く、全体的に丸みを帯びた形をしています。主に食べ物や飲み物を大量に保存するために使われ、味噌や漬物を仕込むのによく利用されます。実用的な保存容器です。

 

 

50軒の窯元の作品が集まる「丹波伝統工芸公園 陶の郷」

 

「丹波焼の里」と呼ばれる今田町立杭エリアには、現在約50軒の窯元があります。代々、何百年も受け継がれてきた窯元もあれば、ほかの地域から移り住み新たに窯を開いた職人もいて、若い職人たちが大勢活躍しています。

 

もし、どの窯元を訪れたらよいか迷っているなら「丹波伝統工芸公園 陶の郷(すえのさと)」を訪れると良いでしょう。

 

ここでは伝統的な丹波焼からアーティスティックなデザインの作品まで、約50軒の窯元の様々な作品が展示販売されています。

 

 

なかには、可愛らしいお香立てを作っている窯元もあります。姫路産のミニチュアの畳とセットで購入すれば、手のひらサイズの小さな和の空間をつくることができます。ちなみにお香も兵庫県淡路島の特産品なので、兵庫県のクラフトをセットでお土産にできるというわけです。

 

その場で購入することもできますが、気になる作品が見つかったら、実際に窯元を訪ねてみてはいかがでしょう?

 

 

車や徒歩で窯元巡りをするのもいいですが、陶の郷のレンタサイクルサービスを利用して、小回りの利く自転車に乗り散策するのもアイデアのひとつです。

 

陶の郷にはほかに、丹波焼をはじめ絵画や彫刻など様々なアート作品を展示する「アートギャラリー丹波」や、地元の食材を使った和食が楽しめるレストラン「獅子銀」などの施設があります。

 

 

とくに旅の思い出になるのは、粘土細工や絵付けを楽しめる陶芸教室です。予約なしでも参加することができ、専門家のアドバイスのもと自由に器をつくることができます。粘土を触ったり、ろくろを回す体験は貴重な思い出になるでしょう。

 

焼き物は焼き上がりまでに約二か月半かかります。海外発送もできますが、送料や破損のリスクがあるため、粘土細工のみ楽しむ旅行者も多いようです。

 

窯元で出会う職人の暮らしと火の神様

 

丹波焼のほとんどの窯元は、住居の近くや同じ建物内に工房とギャラリーを構えています。焼き物を作ることから販売するまでを、すべて自分たちで行うめずらしい地域なのです。

 

ほかの多くの陶芸の産地では、職人から作品を預かり商店や客に販売する仲買業者がいますが、丹波焼の里では職人が自ら販売を担ってきました。これは丹波篠山が大阪や京都などの大都市にも出やすく、職人と客の交流が密だったからだと言われています。

そのため丹波焼の里には古くから、客人をもてなす文化が根付いているのだそうです。

 

 

七代続く陶勝窯には、客人のための特別な空間があります。豊かな緑と水辺を望む広々としたウッドデッキで、珈琲やお茶をいただくことができるのです。

すぐ隣には煉瓦と赤土で作った大きな登り窯と穴窯もあり、その迫力に圧倒されるに違いありません。

 

 

陶勝窯の市野勝磯(いちのかつき)さんは、数々の公募展に出品し個展も開催するアーティストでもあります。かつて住居だった古民家をギャラリーに改装し、作品の展示をしています。

 

 

現在4代目となる清水俊彦(しみずとしひこ)さんと息子の剛(たけし)さんが作陶している俊彦窯は、風情ある日本家屋の一室をおもてなしの部屋にしています。高台にあるため、窓からは一帯の風景を望むことができる気持ちのいい場所。

所狭しと作品が飾られた和室の真ん中には囲炉裏があり、冬は火をおこして温まったり、料理を作ったりするのだそうです。ここではつくりものではない、本物の伝統的な日本の暮らしを体験することができるのです。

 

こうしたおもてなしを通じ、旅行者は丹波焼の魅力や、そこで暮らす人々の文化を深く知ることになります。まるで日本人の友人の家を訪ねるような、特別な体験になることでしょう。

 

 

俊彦窯の登り窯には、火の神様がまつられていました。

剛さんは、薪の種類によって炎が暴れる窯や、どんな薪をくべても安定して燃える窯など、「窯には性格がある」といいます。1000度を超える高温の炎を操る場所だからこそ、火の神様の存在を信じ、敬意を示す文化が大切にされているのかもしれません。

 

その長さは圧巻!丹波焼「最古の登窯」

 

 

集落の細い路地を散策していると、丹波焼の現存する最古の窯「立杭の登窯」を見つけることができます。1895年(明治28年)に造られた、全長約47メートルにもなる巨大な窯ですが民家のすぐ近くにあるというのも、陶芸の街らしい光景です。

 

この登窯は年に一度、5月に開催されるお祭り「丹波焼の里 春ものがたり」の行事のひとつとして火が入れられ、3昼夜かけて燃え続けます。

 

 

▲地元の食材をたっぷり使ったパスタが人気です

 

散策の最後は、兵庫陶芸美術館のダイニングカフェ「虚空蔵」でひと休み。デッキテラスからは正面に窯元の集落が見渡せる、素晴らしい眺望が人気です。

 

 

丹波焼の里で暮らす人々は、自然の恵みを大切にして生きています。丁寧に紡がれる暮らしの中で生まれる丹波焼の器は、実際に見て、触れることでその本当の魅力がわかることでしょう。

 

兵庫陶芸美術館(英語サイトURL:https://www.mcart.jp/global/en/)

住所:〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭4

(※Google mapの埋め込みができるならリンクも/https://www.google.com/maps/place/%E5%85%B5%E5%BA%AB%E9%99%B6%E8%8A%B8%E7%BE%8E%E8%A1%93%E9%A4%A8/@34.983783,135.13116,15z/data=!4m6!3m5!1s0x60007217d0b60be9:0x283fc0a041daba6c!8m2!3d34.9837829!4d135.1311601!16s%2Fg%2F121lsz60?hl=ja&entry=ttu

営業時間:10:00~17:00 (入館は16:30まで)

休館日:毎週月曜日(年末年始、メンテナンス期間)

駐車場の有無:あり(無料)

 

丹波伝統工芸公園 陶の郷(英語サイトなし/日本語はこちら:https://tanbayaki.com/)

住所:〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭3

(※Google mapの埋め込みができるならリンクもhttps://www.google.com/maps?ll=34.981093,135.131626&z=14&t=m&hl=ja&gl=JP&mapclient=embed&cid=13789117666887701576)

営業時間:10:00~17:00

休館日:毎週火曜日(年末年始)

駐車場:あり

 

陶勝窯(英語での表記もHPにありhttps://www.eonet.ne.jp/~toukatsu/index.html)

住所:〒669-2135 兵庫県篠山市今田町上立杭2

(※Google mapの埋め込みができるならリンクもhttps://www.google.com/maps?ll=34.99221,135.1276&z=13&t=m&hl=ja&gl=US&mapclient=embed&q=%E3%80%92669-2135+%E5%85%B5%E5%BA%AB%E7%9C%8C%E4%B8%B9%E6%B3%A2%E7%AF%A0%E5%B1%B1%E5%B8%82%E4%BB%8A%E7%94%B0%E7%94%BA%E4%B8%8A%E7%AB%8B%E6%9D%AD%EF%BC%92)

 

丹窓窯(英語サイトなし)

住所:〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭327

(※Google mapの埋め込みができるならリンクもhttps://www.google.com/maps/place/%E4%B8%B9%E7%AA%93%E7%AA%AF/@34.9846088,135.1271655,15z/data=!4m6!3m5!1s0x6000723c1f49cdb1:0x68b1d047448abfcc!8m2!3d34.9846088!4d135.1271655!16s%2Fg%2F11c6zxc_f0?entry=ttu)

 

俊彦窯(英語サイトなし)

住所:〒669-2135 兵庫県篠山市今田町上立杭396

(※Google mapの埋め込みができるならリンクもhttps://www.google.com/maps/place/%E4%BF%8A%E5%BD%A6%E7%AA%AF/@34.9821902,135.1244052,17z/data=!3m1!4b1!4m6!3m5!1s0x6000723c8c28f081:0x16238fddf26ea73a!8m2!3d34.9821858!4d135.1269801!16s%2Fg%2F11b6v3m_vv?entry=ttu)

立杭の登窯(英語サイトなし)

住所:〒669-2135 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭3−5

(※Google mapの埋め込みができるならリンクもhttps://www.google.com/maps/place/%E4%B8%B9%E6%B3%A2%E7%84%BC%E7%AB%8B%E6%9D%AD%E7%99%BB%E7%AA%AF%EF%BC%88%E6%9C%80%E5%8F%A4%E3%81%AE%E7%99%BB%E7%AA%AF%EF%BC%89/@34.9805286,135.1252171,17z/data=!3m1!4b1!4m6!3m5!1s0x60007223320d1cf5:0x398d4b74ddf55a06!8m2!3d34.9805242!4d135.127792!16s%2Fg%2F11c6mkcncd?entry=ttu)