木と暮らす里・丹波篠山へ。林業から生まれたクラフトと出会う旅

木と暮らす里・丹波篠山へ。林業から生まれたクラフトと出会う旅

丹波篠山には、丹波焼や丹波布、丹波木綿など、自然の素材を活かした様々なクラフトがあります。今、そんな丹波篠山でクラフトを取り入れた新しい林業に取り組んでいる人たちがいます。

この記事では、丹波篠山市大山宮エリアの林業と暮らしを体験できるスポットを紹介します。

 

森林とともに暮らす丹波篠山の人々

 

▲「木のある暮らし」をテーマにオープンしたmocca

 

山が多く平地の少ない日本は、国土の3分の2が森林に覆われています。丹波篠山市も緑豊かな街で、約75%が森林です。自然は訪れる人に非日常の癒しを与えてくれるものですが、そこに暮らす人々にとっては決してポジティブなことばかりではありません。

 

実は丹波篠山の森林の多くは、人の手によって材木用のスギやヒノキが植林された人工林です。手入れされることなく放置されてしまうと、土砂崩れや地滑りが起きる危険があるため、人の手で管理する必要があります。

 

しかも人々が暮らすエリアと森林が近いため、農地は常に獣害の危険にもさらされています。そしてそれは丹波篠山だけでなく、日本全体の問題でもあるのです。

 

今回は木と暮らす人々にスポットを当てて、丹波篠山の人々の暮らしに一歩踏み込んだ滞在を紹介します。

 

森林と人々の接点を作る。moccaが取り組む新しい林業のかたち

 

 

 

今回紹介する大山宮エリアは、丹波篠山観光の中心地である篠山城のある城下町エリアから車で約15分の場所です。古い武家屋敷や商家が立ち並ぶ城下町エリアに対して、大山宮エリアは田畑が多く山や森がもっと身近に感じられます。

 

最初に紹介する「mocca」は2020年にオープンしました。約30年空き家として放置されていた日本家屋を改修し、「木のある暮らし」をテーマにカフェ・宿泊施設・コワーキングスペース・クラフト工房・製材の5つの機能をもつ施設に生まれ変わりました。

 

企画と運営に携わる辻徳人(つじなると)さんは、地域の林業に従事する林業家です。市役所で農業支援に携わる中で、農地の周りで起こる獣害など、林業の抱える課題に目を向けるようになったといいます。

 

▲カフェスペース

 

moccaを訪れてまず驚くのが、およそ160年前に建てられたというその建物です。もともと一帯の大地主の邸宅として建てられたというだけあって、映画に出てくるような大豪邸です。長年放置され朽ち果てた部分は現代の工法で修繕されていますが、巨大な梁が天井を支えているのが見られるなど、木を巧みに利用した日本建築の美しさを堪能できます。

 

 

カフェのキッチンはオープンになっており、地元で「おくどさん」と呼ばれる昔ながらの薪を使ったかまど*が印象的です。こちらのおくどさん、驚くことに現役です。

 

木をテーマにした施設だけあって、ガスコンロはひとつだけ。基本的に薪を使うそうで、調理が始まると木の燃える音や煙のにおいがあたりに広がります。メニューには、近くの山でとれる鹿肉のサンドイッチなどもあります。どれも普通のホテルや観光地では味わえないディープな体験で、「木のある生活っていいな!」と思わせてくれる魅力にあふれています。

 

 

 

施設の一角には、木を使ったクラフトが飾られています。薄く削った木材で作る花やどんぐり型のコマなど、職人技が光る可愛いものばかり。

 

 

工房では実際に木材を使った本格的なクラフトができるようになっていますが、現在のところ利用できるのはコミュニティメンバーに登録している人に限定されています。

 

 

 

広い庭を望む宿泊スペースは大人数でも泊まれる大空間。キッチンがあるロッジスタイルで、街に暮らすように長期滞在できるのが魅力的です。ベッドルームは蔵をリフォームした一室です。

 

 

 

▲ベッドルームへの入口

 

現在、サウナを制作中とのことで、これからさらに素敵な場所へと進化していくに違いありません。

 

*かまど....日本の伝統的な土製の調理用炉で、炊飯や煮炊きを行うために使われます。燃料として木や炭を使い、炎で直接鍋を加熱します。

 

暮らしに喜びを運ぶ野澤裕樹の木器

 

moccaから徒歩約10分の場所にある「居七十七(いなとな)」は、大阪から移住してきた木工職人の野澤裕樹(のざわゆうじ)さんのアトリエ兼ギャラリー兼カフェです。手触りがよくあたたかみのある木器やカトラリー、お盆などを中心に、すべて野澤さんが手作業で作った品々が販売されています。

 

 

 

実は現代の日本人にとって普段使う器といえば陶器や磁器が主流で、木器はあまり馴染みがありません。手入れが難しいのかと思いきや、こちらの木器はほぼすべて漆が塗られているため丈夫で、耐水性も高く、陶器や磁器と同じようにお手入れすることができるといいます。触れてみるとしっとりとした木肌が手にすぐに馴染みます。

 

日本の木器の産地で有名な輪島塗では、朱や黒に色付けされた漆で塗るのが主流です。強度が高まりますが、木目の美しさが見えなくなってしまうため、野澤さんはあえて無色の漆で仕上げるのだそうです。

 

 

 

 

木器の原料となる木材は地域の林業家からわけてもらうほか、野澤さん自身が山に入って木を切るところから行うこともあるのだそうです。玄関や庭には、巨大な丸太がいくつも積みあげられています。

 

木は水分を多く含んでいるため、木器として販売するまでに1年~2年かけて水分を乾燥させる必要があるのだといいます。長い時間をかけて木が育つように、木の器も時間をかけて、手間暇を惜しまず作られているのだと知ると、愛着も増していくようです。

 

木器は軽く、割れにくいので旅行者にとっても持ち帰りやすいお土産にといえるでしょう。

 

「居七十七」という名前には、「暮らしに喜びを加える」という意味があるのだそうです。月に何度かは地域の方と協力し、地元の食材をたっぷり使ったランチメニューも提供しているので、木のある暮らしを体験しに立ち寄ってみてはいかがでしょうか?(予約制)

 

mocca

住所:〒669-2802 兵庫県丹波篠山市大山宮510番地

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居七十七

住所: 〒669-2803 兵庫県丹波篠山市大山上517

(Google map:https://www.google.com/maps/place/%E5%B1%85%E4%B8%83%E5%8D%81%E4%B8%83%EF%BC%88%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%A8%E3%81%AA%EF%BC%89/@35.0971997,135.1373672,15z/data=!4m2!3m1!1s0x0:0xa9838e17857c6217?sa=X&ved=1t:2428&ictx=111)

営業時間:12:00‐17:00

※冬12月-3月>日・月のみ

※春から秋>日・月・火・水