《旅のポイント》
✔ 荒湯を中心とした町の広がり
✔ 湯がき文化を体験
✔ 昔の風情残す町並みを楽しむ
誰もが過ごしやすい”人にやさしいまち”へ
新温泉町ユニバーサル社会づくり推進地区協議会 角田 和寿 会長
兵庫県の北西端に位置する新温泉町にある湯村温泉。
平安時代から湯治場として栄えてきた歴史ある温泉地で、良質の湯処として古くから人々に親しまれてきた。「およそ1200年に渡って湧き続ける温泉は98度と高温で湯量も豊富。旅館や温泉施設だけでなく、各家庭にも配湯するなど、この町の人たちは温泉に寄り添って暮らしてきました」と、角田和寿会長は話す。
「ひょうごユニバーサルな観光地」としてユニバーサルツーリズムを推進する湯村温泉地区だが、取り組みが始まる前から“ユニバーサルデザインのまちづくり”に着目していたという。
「湯村温泉地区は源泉・荒湯を中心に、半径約400mの範囲に1,000人ほどが暮らす小さな町。高齢者や幼い子どもたちも暮らすこの町をもっと快適に過ごせる町にしようと、地域住民が中心となって“人にやさしいまちづくり”を計画立てていました。ところがコロナ禍でその計画が頓挫していたところにユニバーサルツーリズムの話が浮上。そこで、改めて地域住民をはじめ、旅館組合や商工業者なども加わり、町ぐるみで取り組んでいこうとなったんです」。
年齢や障害の有無に関わらず、誰もが過ごしやすい町を目指し、今後は荒湯周辺などのバリアフリー化を進めるとともに、温泉街各所の段差解消やトイレの改修などを進めていく予定だ。「町の動線の整備にも力を入れ、2025年には北駐車場から荒湯まで続くバリアフリーの遊歩道の整備に向け調整が進んでいます。川沿いの遊歩道なので、川を泳ぐ魚や周囲ののどかな景色を楽しんでもらえるスポットになればと期待しています。また、荒湯では高温の湯つぼで卵や野菜などを茹でる“湯がき体験”が有名なので、新たに車椅子の方も安全に湯がき体験ができる湯つぼや車椅子対応のユニバーサル足湯の設置なども計画しています」。
そんなハード面だけでなく、旅館や観光施設での接客サービスといったソフト面でもユニバーサルの取り組みに注力しているのも湯村温泉の魅力だ。「高齢者や障害のある方たちが訪れたい町は、そこに住む人々にとっても素晴らしい町になるはず。そんな思いで “人にやさしいまちづくり”を目指していきたいと思っています」。
湯煙たなびく温泉街のシンボル
荒湯・足湯
湯村温泉のシンボル「荒湯」は、嘉祥元年(848)に慈覚大師によって開湯された源泉。
地元では卵や野菜を高温の湯つぼで茹でる「湯がき文化」が受け継がれ、それを体験できるのも楽しみの一つ。また、荒湯のそばを流れる春来川沿いには足湯もある。ベンチに腰を掛け、湯煙が沸き立つ景観を眺めながら温泉風情を味わいたい。
98度の熱湯が毎分約470ℓも湧出する荒湯。
近隣店舗でネットに入った卵や野菜を購入すれば湯がき体験が楽しめる。湯がき上がるまでは足湯でのんびりとくつろぎのひとときを。
新温泉町湯1248 Z0796-92-2000(湯村温泉観光協会)
利用自由(足湯は7:00~21:00)
「湯村温泉」バス停から徒歩約3分
源泉100%の公衆浴場
薬師湯
地元の人々にも愛される公衆浴場。源泉100%の無色透明な温泉は美肌の湯としても名高く、入浴後もしっとりとした肌触りの良さが自慢だ。
館内はバリアフリーになっており、浴室は露天風呂やサウナも完備するほか、極力段差をなくしたフラットな仕様に。また、誰もが自由に使え、貸し切りで利用できる介助風呂も二つある。
浴室は洗い場まで車椅子で入ることができ、浴槽も比較的浅めになっている。
介助風呂は浴室も脱衣所も十分な広さが確保され、ゆったり過ごすことができる。また、施設の外には車椅子の方も利用できる足湯もある。
新温泉町湯1604 0796-92-1081
8:30~21:30(受付は21:00まで) 毎月15日休(定休日が木・土・日・祝の場合営業、翌日以降〈土・日・祝を除く〉休)
入浴料=大人700円、小人500円
「湯村温泉」バス停から徒歩約6分
散策途中の小休止はここで
湯村温泉ポケットパーク
荒湯のすぐそばにあり、温泉街散策の休憩にも最適な癒やしの広場。
慈覚大師のブロンズ像が立ち、その横には湯村温泉の泉源の一つ「株湯」からもくもくと湯煙が立ち込めるなど、温泉情緒もたっぷりだ。園内には屋根付きの休憩ベンチや車椅子の方も安心して利用できる多目的トイレもあり、便利に使える。
カラフルなロゴモニュメントは湯村観光の記念に最適なSNS映えスポット。散策で疲れた時にほっとひと息つける屋根付きの休憩所もある。
公共の多目的トイレは、ポケットパークのほか、東駐車場近くの「夢千代トイレ」も。
新温泉町町湯 散策自由
「湯村温泉」バス停から徒歩約3分
町歩きが楽しい湯村温泉
湯村温泉は昭和の面影を残す、懐かしさを感じるレトロな町並みも魅力。
観光スポットやグルメも満喫しながら散策を楽しみたい。
夢千代館・アオギリの湯
湯村温泉を舞台にしたNHKドラマ『夢千代日記』。
この博物館ではドラマで描かれた昭和20~30年代の温泉街が再現され、小物や衣装といったドラマゆかりの品々を展示する。懐かしい昭和の時代へとタイムスリップ気分を味わおう。
併設の「アオギリの湯」では、ベンチに腰掛けて足湯が楽しめる。
今後は誰もが楽しめるよう、ベンチの高さを変更する予定。
新温泉町湯80 0796-99-2300
9:00~18:00(アオギリの湯は9:00~18:30) 無休
入館料=大人300円、小中学生150円
「湯村温泉」バス停から徒歩約5分
杜氏館・商店案内所(湯村温泉観光協会)
新温泉町には多くの杜氏がいたことから、“但馬杜氏の郷”のアピールの場として、実際に酒造りに使われていた道具や資料などを展示する。また、湯村温泉街にある商店案内所も併設され、お店の案内はもちろん、観光の相談にも乗ってくれる。
但馬杜氏が醸した純米酒の利き酒体験も開催。猪口300円を購入で3銘柄を各1杯ずつ試飲できる。実施時間は15:30~17:00(期間限定)。
新温泉町湯98-1
0796-92-2000(湯村温泉観光協会) 9:00~18:00 1/1休
入館無料
「湯村温泉」バス停から約5分
湯村温泉のおすすめのユニバーサルなお宿
豊かな湯量を誇る湯村温泉は古くから湯治場として栄え、多くの旅人をもてなしてきた。
そのおもてなしの心が今に受け継がれた思いやりにあふれた宿で、滞在も快適に。
家族3世代で憩える宿
朝野家
城を模した豪壮な建物に一歩入れば、和の情緒あふれる空間が広がる湯村温泉屈指の人気旅館。
四つの自家源泉を保有することから豊富な湯量を誇り、大浴場をはじめ、全客室で掛け流しの温泉を贅沢に楽しめる。スタンダードな客室でも間取りは10畳以上と広々とし、ユニバーサルデザインを取り入れた客室も用意することから、家族3世代での利用も多い。
車椅子でも快適に移動できるゆとりのある館内。1階には誰もが使いやすい設備や広さを備えた「だれでもトイレ」も設置されている。
ユニバーサルデザインを随所に採用した露天風呂・ダイニングルーム付き客室も好評。
お宿のユニバーサルポイント
〇 露天風呂付きの客室あり
〇 館内用車椅子や杖の貸し出し
〇 1階の共用フロアにだれでもトイレを設置
〇 聴覚障害者への光チャイムのある部屋を5室完備
〇 ユニバーサルツーリズムコンシェルジュに
新温泉町湯1269
0796-92-1000
1泊2食付き(2名1室大人1名あたり)=19,950円~
「湯村温泉」バス停から徒歩約2分
心地よい眠りへ誘う
御宿コトブキ
医療グループが手がける睡眠にフォーカスをおいた温泉旅館。
専門セラピストによる快眠セラピー施術をはじめ、客室には心地よい眠りへと導いてくれる特注ベッドや枕を用意し、上質な眠りをサポート。また、荒湯を引いた大浴場は開放感があり、ジャグジーも完備。
全16室の小さな宿だからこそのきめ細やかなホスピタリティも万全で、癒やしのひとときを過ごせる。
「七宝」「市松」の2室はフラットな室内とゆとりのある空間も魅力。
大浴場には手すりを設置。
囲炉裏ダイニングはテーブルがゆったりと配され、車椅子でもスムーズに移動できる。
お宿のユニバーサルポイント
〇 エントランスにスロープを設置
〇 大浴場に手すりを設置
〇 大浴場で着衣での入浴介助が可能
〇 筆談対応あり
〇 お食事処は車椅子のまま利用可(テーブル席)
〇 車椅子のまま入れる広々とした客室あり
〇 車椅子用タイヤカバーの貸し出し
新温泉町湯1561-1 0796-85-8970
1泊2食付き(2名1室大人1名あたり)=27,000円~(令和7年3/20まで、3/21以降は要問い合わせ)
「湯村温泉」バス停から徒歩約1分
人にやさしい老舗旅館
佳泉郷 井づつや
創業300年の歴史と伝統を継承しながら、自家源泉による天然温泉と心温まるおもてなしに定評のある老舗宿。
ユニバーサルルームを3室完備するほか、バリアフリー対応の貸し切り風呂もあり。また、館内全体にも手すりや緩やかなスロープを設置し、食事処もテーブル席にするなど、客室以外も人にやさしい造りを目指し、積極的な施設改修が行われている。
ユニバーサルルームは入り口やお風呂、トイレも全てバリアフリー仕様に。ベッドも電動リクライニングで寝起きもラク。
手すり付きスロープのあるロビーをはじめ、館内全体で安心安全に配慮。
お宿のユニバーサルポイント
〇 ユニバーサルルームを3室完備
〇 館内用車椅子や杖、ベビーカーの貸し出し
〇 フロントからロビーへの手すり付きスロープを設置
〇 シャンプーなどのボトル判別に対応
〇 車椅子対応エレベーターあり
新温泉町湯1535 0796-92-1111
1泊2食付き(2名1室大人1名あたり)=22,000円~
江原駅から無料送迎バス(3日前までに要予約)。または、「湯村温泉」バス停から徒歩約2分
~湯村温泉で味わいたい恵み~
但馬牛
湯村温泉のグルメといえば、日本海で水揚げされる新鮮な魚介だけでなく、見逃せないのが地元但馬が誇るブランド牛の但馬牛。
温泉街には但馬牛を手軽に味わえる人気店も数多くあるので、ぜひそのおいしさを味わおう。
湯村温泉のユニバーサルツーリズムについて詳しくは0796-92-2000(湯村温泉観光協会)
「湯村温泉」バス停へは、JR浜坂駅から全但バス約25分。または、JR八鹿駅から全但バス約75分。